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小さな白い花

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種を蒔き、クロードが井戸水で体を清めた後、わたくしは彼をたくさん撫でて差し上げました。メリッサが来る直前まで。
……結局、頭以外も撫でました。

だ、だって、仕方がないのです!

太ももにすりすりと顔をつけられながら『姉さまに撫でられるのが気持ちよくて、大きくしてしまいました』なんて熱っぽく言われましたらどうにかしなくてはいけないと思ってしまうでしょう?『姉さまのおっぱいに顔を埋めながら達したいです』と頬を染めて言われれば、胸を差し出すでしょう?

――わたくしの手の中に伝わってくるピクピクとした震えと、吐き出す際のクロードの切ない声が可愛らしくて、なんだか癖になってしまいそう……。あっ、いえ!そんなこと思っていませんわ!最近感情のだだ漏れ具合が酷いです。妊娠中のせいでしょうか。……違うような気がします。

と、とにかく、クロードが欲求不満のような苦しい顔をしていたのですから、姉としては助けてあげないといけないのです。……土に汚れた無邪気な顔と、色っぽい表情のギャップにやられて流されてしまった、というのも理由の一つではありますが。


そんな一波乱がありましたが、やがて、蒔いた種は数日で芽を出し、一月ほどで小さな白い花を無事咲かせました。
今まで見たことのないお花でした。伯爵家の庭は大きな花を咲かせるものでしたり、香りが強いお花がたくさん咲いていました。
この小さなお花は、生えてきたら庭師に根ごと引き抜かれてしまうような類いのものなのかもしれません。けれど、わたくしにはこのお花の方が好ましいのです。種を蒔き、花が咲くまでを見守ったからというのもありますが、土だらけになって頑張ってくれたクロードの一生懸命な姿が白い小さな花と重なるからです。
もちろん花自体も、可愛らしくて散歩の時にわたくしを楽しませてくれています。

その花を見ながら、クロードは瞳を輝かせて未来のことを語りました。

「今はこの花だけですが、もっと美しい庭にできるように頑張ります。子が生まれたら記念樹も植えましょう。ゆくゆくは伯爵家にも負けないような庭にしたいです。」

クロードが言ってくれていることを想像してみますと、とても幸せな気分になります。子と三人でそこを歩く姿まで想像できます。
ですが、クロードには土にまみれになって平民のように生活するのではなく、伯爵家に戻りシミの一つもない服を着て、肉体労働とは無縁の貴族の生活を送ってもらわねばいけないのです。
いくらわたくしが前者のクロードの方を好ましく思ってしまっても、関係のないことです。

わたくしは、心の中で自分に言い聞かせました。

それが弟の為なのだ、と。
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