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ユーリオン様の想い
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ユーリオン様と結婚…。
弟の子を身籠ったわたくしごと受け入れてくださるとユーリオン様は言っているのです。そんなこと、かなりの覚悟がないと言えないはずです。
それに、ユーリオン様ならきっと、クロードが伯爵家に戻る時もお父様をうまく取り成してくれるはずです。
ですから、ユーリオン様と結婚することがみんなが幸せになれる一番の方法なのかもしれません。
「……でも、わたくしは、死んだことになっているのではありませんか?」
口はやっと動いてくれました。
そもそも、わたくしという人間が存在しないのなら、結婚なんて無理なのではないでしょうか。
「遺体は無かったのだから、奇跡的に生きていたことにすればいいよ。……そうだね、事故で記憶を無くして他の町でしばらく生活していたことにでもしようか。それに、父にはこのお腹の子は俺の子だと言い張るから。」
侯爵家でそんなことが通用するのでしょうか。いくらユーリオン様が次男だとは言っても、少しでも怪しい点があれば認めてはもらえないと思います。
口に出さなかった疑問にユーリオン様は答えてくださいました。
「父は、俺が小さい頃から君を大好きなのを知っているんだ。だから初夜を待ちきれなかったと言ったら子のことは納得すると思う。それにね、うちの兄の出生日も少し計算が合わないんだよ。だから父は強くは言えないはずだよ。」
顔を強ばらせているわたくしに気を使って、ユーリオン様はおどけたようにウィンクをしてくれました。
ユーリオン様の用意してくれる筋書きは完璧なのでしょう。何よりわたくしを守ってくれるという意志がすごく感じられます。
それでも、わたくしは結婚できない理由を探してしまうのです。
「わたくしの父には何て言ったらいいのでしょうか。」
「僕に襲われて出来た子たと言えばいいよ。自分の娘を死んだように偽装したこともあって、あまり何も言って来ないと思うよ。」
「クロードのことは……。」
「伯爵は、彼のことは寄宿学校に入れたと周りに言っているらしいから、帰ってきたと言えばいいと思う。」
「でも……。」
「子も、君の子だったら誰が父親でも俺は愛せる。後に生まれた俺の子と愛情の差が生まれてしまうと危惧しているのなら、子は今君のお腹の中にいる子だけでもいい。僕は跡取りではないからね。だから、エルフィー、不安になることなど何もないんだよ。」
ユーリオン様がそう言ってくださるのなら、嘘を吐くような方ではないので、きっとそうしていただけるのでしょう。
けれど、わたくしは不安になっている訳ではないのです。ただ、なかなか気持ちの整理がつかないだけなのです。
「……どうして、そこまで言っていただけるのでしょうか。」
ユーリオン様にここまでしていただけるようなこと、わたくしはしていません。
「……エルフィーが、死んだと言われて遺体も見つからない時、俺は毎日祈っていた。君を生き返らせてくれと。その為なら何でもする、と。悪魔にだって心を売ろう、と。……だから今、君がここにいて、生きているだけで、俺にはどんなことだって、大した問題じゃなく思えてしまうんだ。…これじゃ、答えになってないかな。」
ユーリオン様はそう言うと、わたくしを優しい瞳で見つめてきました。
「君は俺の初恋の相手なんだ。エルフィー以外の女性を好きになったことは今までない。……側にいて欲しいんだ、エルフィー。」
ユーリオン様の嘘が全く感じられない言葉を、わたくしはどう受け止めたらいいのか分かりませんでした。
弟の子を身籠ったわたくしごと受け入れてくださるとユーリオン様は言っているのです。そんなこと、かなりの覚悟がないと言えないはずです。
それに、ユーリオン様ならきっと、クロードが伯爵家に戻る時もお父様をうまく取り成してくれるはずです。
ですから、ユーリオン様と結婚することがみんなが幸せになれる一番の方法なのかもしれません。
「……でも、わたくしは、死んだことになっているのではありませんか?」
口はやっと動いてくれました。
そもそも、わたくしという人間が存在しないのなら、結婚なんて無理なのではないでしょうか。
「遺体は無かったのだから、奇跡的に生きていたことにすればいいよ。……そうだね、事故で記憶を無くして他の町でしばらく生活していたことにでもしようか。それに、父にはこのお腹の子は俺の子だと言い張るから。」
侯爵家でそんなことが通用するのでしょうか。いくらユーリオン様が次男だとは言っても、少しでも怪しい点があれば認めてはもらえないと思います。
口に出さなかった疑問にユーリオン様は答えてくださいました。
「父は、俺が小さい頃から君を大好きなのを知っているんだ。だから初夜を待ちきれなかったと言ったら子のことは納得すると思う。それにね、うちの兄の出生日も少し計算が合わないんだよ。だから父は強くは言えないはずだよ。」
顔を強ばらせているわたくしに気を使って、ユーリオン様はおどけたようにウィンクをしてくれました。
ユーリオン様の用意してくれる筋書きは完璧なのでしょう。何よりわたくしを守ってくれるという意志がすごく感じられます。
それでも、わたくしは結婚できない理由を探してしまうのです。
「わたくしの父には何て言ったらいいのでしょうか。」
「僕に襲われて出来た子たと言えばいいよ。自分の娘を死んだように偽装したこともあって、あまり何も言って来ないと思うよ。」
「クロードのことは……。」
「伯爵は、彼のことは寄宿学校に入れたと周りに言っているらしいから、帰ってきたと言えばいいと思う。」
「でも……。」
「子も、君の子だったら誰が父親でも俺は愛せる。後に生まれた俺の子と愛情の差が生まれてしまうと危惧しているのなら、子は今君のお腹の中にいる子だけでもいい。僕は跡取りではないからね。だから、エルフィー、不安になることなど何もないんだよ。」
ユーリオン様がそう言ってくださるのなら、嘘を吐くような方ではないので、きっとそうしていただけるのでしょう。
けれど、わたくしは不安になっている訳ではないのです。ただ、なかなか気持ちの整理がつかないだけなのです。
「……どうして、そこまで言っていただけるのでしょうか。」
ユーリオン様にここまでしていただけるようなこと、わたくしはしていません。
「……エルフィーが、死んだと言われて遺体も見つからない時、俺は毎日祈っていた。君を生き返らせてくれと。その為なら何でもする、と。悪魔にだって心を売ろう、と。……だから今、君がここにいて、生きているだけで、俺にはどんなことだって、大した問題じゃなく思えてしまうんだ。…これじゃ、答えになってないかな。」
ユーリオン様はそう言うと、わたくしを優しい瞳で見つめてきました。
「君は俺の初恋の相手なんだ。エルフィー以外の女性を好きになったことは今までない。……側にいて欲しいんだ、エルフィー。」
ユーリオン様の嘘が全く感じられない言葉を、わたくしはどう受け止めたらいいのか分かりませんでした。
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