天空門のルシフィス 「天と地を裂かれし熾天使――その名はルシフィス」

かみちん

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惑星イオ 光国編

第20話 エリック調査員

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 壮大すぎる中立都市建設計画に、未だ現実感を持てずにいたメイソンだったが、「なるようにしかならない」と半ば開き直りの覚悟を決めた。そしてその覚悟も空しく、目の前に現れたのは、ほんの一瞬で完成した約四千四百キロメートルの地下トンネルの出入口。あまりの現実離れに、メイソンは遠い目をしてその入口を見つめるのだった。

「……さて、昼か。基地に戻って飯でも食うか」

 現実逃避を決め込んだメイソンは、本部に戻り食堂で昼食を取り始めた。すると、勢いよく扉が開き、元気な声が響いた。

「ギルマス~!」

 振り向いた先には、整った装備を纏った一人の冒険者の姿があった。

「よう、エリック。落ち着いたか?」

「はい!大分落ち着きました!」

 彼は、探索と調査に命を懸けるレンジャーの冒険者、エリック。空たちにも紹介が済んだそのタイミングで、メイソンは本題を切り出した。

「いきなりですまんが、依頼を一つ頼めないか?」

「依頼?もちろん、内容によりますけどね」

「相変わらず慎重だな」

「ギルマスやエレノアさんでも信用しすぎてはダメですから。レンジャーの基本です」

「はは、まあそうだな。……で、内容なんだが――」

 メイソンは、地下空間とドリード王国まで続くトンネルのことを説明した。

「……今日、ここからドリード王国の近くまで、トンネルが完成したんだ。しかも地下に、だ。調査と確認をしてきて欲しい。どれだけ続いているか、強度は問題ないかなどな」

 エリックは目を見開いた。

(いや、馬車で二ヶ月かかる距離だぞ? 地下トンネルなんて、普通なら三十年、いや四十年は必要だ。そんなものが"今日"完成した? まさか……)

「疑うのも当然だ。だが本当にある。信じられないなら、まずは見てこい。俺も後から行く」

「わ、分かりました」

 半信半疑のまま、エリックは地下入口へと向かった。

「当然、ああなりますよね」エレノアが呆れ気味に言う。

「これから毎回あの反応を見るのか……」メイソンはため息をついた。

「常識人には辛いですね……」

「が、頑張って」ミアが申し訳なさそうに声をかけると、メイソンとエレノアは項垂れながら「はい」とだけ返した。

――そして昼食を終えた一行は、地下空間へと足を運んだ。

「エリックー! どこだー!」メイソンの呼びかけに応えるように、トンネルの奥からエリックが戻ってきた。

「エリック、どうだ? 信じられたか?」

「ギルマス……この地下空間とトンネル、どうするつもりですか?」

 うつむき加減に問うエリックに、メイソンは視線を向ける。

「俺がどうこうする訳じゃない。詳しくは、ミアと空さんに聞いてくれ」

「お二人とも、詳しくお聞きしても……?」

「もちろん」ミアはにっこりと微笑み、エリックに構想を語り始めた。

 地下空間には温泉保養施設ができ、その後中立都市の建設を予定していること。ドリード王国をはじめ、各国と繋がる地下トンネルを通じて物資と人の流れを新たに作ること。さらには、魔族と人間が共存できる町を目指していること――。

 その話を聞き終えると、エリックは興奮気味にメイソンへ詰め寄った。

「ギルマス!」

「お、おう?」

「是非とも調査をやらせてください!」

 目を輝かせ、少年のように無邪気な声で叫ぶエリックに、メイソンは少し引き気味に聞き返す。

「そんなに興奮することか……?」

「ギルマス、これは偉業なんですよ! これが実現すれば、地上ではもはや不可能だった都市開発が可能になるんです! 領土問題、魔物、魔族の干渉――全てを超える都市が作れるんですよ!」

「そ、そうなのか……」

「しかも、中立都市として運営されれば、誰かの支配もなく、住民たちが議会を通じて都市を動かす。自由で平和な共同体が作れるんです! これは、まさに夢の都市ですよ!」

 メイソンとエレノアは、目の前の熱量についていけず、完全に押され気味だった。

「ミアさん! 自分、都市設計図を描いてもいいですか? 地下なら防御構造を気にせず、思い切ったデザインができます!」

「もちろん。開発好きな人たちで構想を練って、多数決で採用案を決めたいと思ってるよ」

「よっしゃあ……燃えてきた!」

「……話はまとまったか?」

「ええ、明日から早速、地下トンネルの調査に取りかかります!」

「よし、ギルドから調査費を出す。基地にいれば飲食も無料だ。調査結果は基地本部にまとめておいてくれ」

「了解しました! では一度ギルド館に戻って準備をしてきます。他の人にこの依頼を渡したら許しませんからね!」

「分かった分かった。任せたぞ」

 エリックは意気揚々と、準備のためにギルド館へと帰っていった。

 メイソンは、彼の背を見送りながらふと呟いた。

「……本当にとんでもないことになってきたな」

 エレノアは、無言で小さく頷いたのだった。
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