天空門のルシフィス 「天と地を裂かれし熾天使――その名はルシフィス」

かみちん

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惑星イオ 光国編

第22話 亜空間へ念じる

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 リアムと諜報員Aが領主館へ向かったきり、未だ戻らない。そして、ギルド職員のカーターとレアも行方不明となっていた。そんな中、空と美加のもとへ、ミラー領の領主ルーク・ミラーから晩餐会への招待状が届く。

 それはどう見ても罠だった。

 対策として、メイソン、エレノア、諜報員Bの三人は、亜空間に待機し、必要な瞬間にミラー領主館へ転移できるよう準備を整えることになった。亜空間は、一度行ったことがある場所ならば念じるだけで瞬時に移動できる場所。たとえ本人が行ったことがなくても、同行者が経験していれば問題なかった。

「じゃあ、行ってくる」

 メイソンはそう言い残し、作戦会議室を後にして兵隊長を呼び寄せると、見張り以外の兵士と冒険者を招集にかかった。

 室内に残った空は、エレノアと諜報員Bに微笑んだ。

「今は誰もいないから、二人とも亜空間に入る方法を試してみて」

 エレノアと諜報員Bは顔を見合わせ、息を合わせて手を上げた。

「手を上げて……亜空間に行きたいと念じる……!」

 すると二人の手先から白いモヤが立ち上り、そのモヤが彼女たちの体を包み込む。やがてモヤとともに彼女たちはその場から消えた。空もまた、その後を追うようにしてモヤの中へと入っていく。

 目の前に広がったのは、石造りの壮麗な宮殿と手入れの行き届いた庭、そして未開発の大地。

「ここが……亜空間!」

 二人がその景色に見入っていると、一人の天使が現れた。

「エレノア様、諜報員B様ですね。空様よりご案内を承っております。どうぞ、こちらへ」

「ど、どうも……」

 緊張した面持ちで天使の案内に従い、二人は宮殿の中へと足を踏み入れる。エントランスでは、美加と熾天使ガブリールが談笑していた。

「ようこそ、亜空間へ。まだ正式な名前がないので、みんな“亜空間”と呼んでいます」
「私もお二人の活躍はよく拝見しておりますよ」

 下界の番人であるガブリールは、すべての者を見守り、必要に応じて神意を届け導く役目を担っている存在だった。

「お二人とも、ちょうど良いお年頃ですし……異性のこととかも、いろいろ気になるわよね?」

 突然の話題に、エレノアと諜報員Bが顔を赤らめる。

「わ、私は剣一筋でございますのでっ!」
「え、ええ、わたくしもそういった話はさっぱり……!」

「ふふっ、でもあなたたち、似ているわよね~」

 ふいにエレノアが問いかけた。

「……もしかして、諜報員Bさんって女性?」

「ええ、そうよ~」

「ガブリール様! 個人情報は……!」

「ごめんなさい、つい嬉しくて話しすぎちゃったわ」

 そんなやりとりを経て、ガブリールは二人をお茶会へと誘う。エレノアは渋るものの、結局はガブリールの強引さに負けて隣室へ。

 一方、美加のもとへ空が現れる。

「エレノアさんと諜報員Bさん、来てない?」

「ガブリールが女子会と称して、隣の部屋へ連れて行きました」

「そっか……えっ、女子会? 諜報員Bさんって女性だったの!?」

 空の頭には、もし男扱いしていたら……という最悪の想像がよぎる。

「危ないところでしたね。命拾いしましたよ?」

「はは……そうだね……(気をつけよう、マジで)」

 空はここで、本題に入る。ルーク・ミラーからの招待、そしてリアムたちの失踪。美加は真剣な表情に変わり、空――いや“ルシフィス”と、天使としての名で呼びかける。

「ルシフィス様。話さねばならぬことがあります。これは悪魔についてです」

 悪魔――それは天使と相反する存在。人間の心を惑わせ、その魂を奪い、勢力を広げていく。

「惑星イオで暗躍しているのは、魔族ではなく……悪魔なのです。南東樹海事件も、ミラー領の出来事も、全ては悪魔たちの仕業です」

 さらに、悪魔の位階についての説明が続く。

 極悪魔と呼ばれる六柱――

 憤怒のアバドン

 暴食のベルゼブブ

 強欲のマモン

 色欲のアスモタン

 嫉妬のレビィタン

 怠惰のベルフェタン

 それぞれが人の欲望を刺激し、堕落と破滅へと導く存在。そして、彼らの下にはそれぞれ上級、中級の悪魔たちが控えており、悪魔勢力“666”を形成しているのだ。

「悪魔に対して有効な技、覚えていますか?」

「もちろん。“シャイニングフィンガー”だよね?」

「はい。光の御指……それは悪魔のデーモンコアを破壊し、魔界へと還す力を持つ天使の技。どうか、使いこなせるよう準備をお願いします」

 そこへメイソンが天使に案内されて到着する。

「おお~空さん美加さん~」
と言いながら駆け寄って来た。

「二人が居て良かった~!亜空間へ行きたいと念じたあと、白いモヤに包まれて目を開けたら見知らぬ宮殿に天使様の案内と、俺は死んだのかと思ったぜ」

「あーごめんなさい。そうかそうだよね亜空間は今天使だらけだから天国に見えちゃうか・・・」

「私もウッカリしていました。案内人を変えないといけませんね」

「うぅ。ともかく死んでない事が分かって良かったぜ!エレノア達は?」

「熾天使ガブリールと女子会中見たい・・ガブリールお話し好きだから」

「そうか。女性同士積もる話もあるもんだからな。まして冒険者は女性が少ないからエレノアは本当はお喋りしたいのとか色々我慢させているのかもな。ところで諜報員Bは?」

「あ~いや、一緒に女子会中ですよ」
空が言うと

「そうか、でも亜空間に来てまで情報収集しなくても良いよな」

 メイソンも諜報員Bを“男”だと信じていた。

「じゃあ、止めてこないとな。亜空間で諜報活動なんて、しなくていいって言わないと」

 部屋を開けたその瞬間、メイソンは現実を知る。

「……え?」

 目の前にいたのは、女性の姿をした諜報員B子。そして咄嗟に顔を隠す彼女。

「あーあーすまん! なんでもない!」

 男性だと思っていた事を誤魔化す為に咄嗟になんでも無かったとエレノアに話しかけた。と同時に諜報員B子は部屋の外へ出ていった。

 その後、宮殿の外が騒がしくなり見に行くと、何故かエリックの姿があり近くにいたミアに話を聞くと、ギルド館近くでエリックと会い話をしていると、何故か衛兵がエリックを追いかけて来て、ミアは咄嗟にエリックを連れて亜空間に飛び込んできたらしい。

 手つかずの世界に狂喜乱舞するエリックにメイソンが落ち着かせ、空たちは状況の説明を始める。ミラー領の異常、晩餐会の招待、そして救出作戦の話。

「空さんがそんなに強いなんて……見えませんよ?」と無遠慮に言い放ったエリックに、ミアが提案する。

「空にぃ! 分からせた方が良いよ~!」

 模擬戦のゴングが鳴った次の瞬間、エリックの身体が宙を舞う。

「ゲフッ!」

 軽い一撃で、意識を失いながら飛んで行ったエリックを、美加が受け止めた。

「……人を見た目で判断するからだな」

 メイソンの呟きが、静かに場に響いた。

 その後、空のスキルによってエリックは回復。深く頭を下げる。

「空さん……申し訳ありませんでした! 地下のこと、開発のこと、全力で協力いたします!」

 こうして、亜空間に新たな役職が誕生する。

「亜空間の開発部長、ミアでいい?」

「えぇ~……うん、分かったよ~」

 こうして、ミアとエリックは新たな任務に向かうべく、研究所へと足を進めた。

 夜は更け、皆は宮殿の部屋でそれぞれの眠りにつく――
 明日、運命の晩餐が待っていることを、心に刻みながら。
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