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惑星イオ 光国編
第57話 樹海トンネル調査報告
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ぽん吉は、かつてシールド領で行われた“ゴブリン討伐”に触れて、キールたちやハリア・エレバンとなにやら不穏な名前出てきて、空とミアは目を見交わす。
「なるほど……では私たちはダークゴブリンの件は、干渉しないでおくよ」
「おおきにな!」
こうして調査を終えた、一行は静かに南東樹海基地へと引き返した。
「おう! お帰り~。で、どうだった?」
基地で出迎えたのは、メイソンだった。空は簡潔に、地下トンネルとダークゴブリンたちについて説明する。
「なるほどな……。ゴブリン狩りが一時流行ってたって話は聞いていたが、まさか進化するとはな」
「ゴブリン狩りって、他の地域でも?」と空が訊ねる。
「いや、そんな物騒なことやってたのはシールド領だけさ。他じゃゴブリンはむしろ善良な存在として知られてる。俺なんか、倒れた地蔵を直してるゴブリンを見たことがあるし、ミラー領のギルドじゃ“良い奴ら”って教えてるくらいだ」
「奴らの狙いはシールド領やから、南東樹海でダークゴブリンに出くわすことはないと思うで」とぽん吉が補足する。
「それは助かるが、ルークやリアムにも報告はしておく。ここの連中にも、見かけないゴブリンを見たら即撤退と通達しておく」
「おおきにな。ほな、わいは妖狐はんのとこ戻るわ。シールド領の北東樹海におるさかい、何かあったら来てな~」
そう言ってぽん吉は肉球を見せて手を振り、天空門を経由して去っていった。ミアも疲れた様子で一言残して帰っていく。
「ボクも戻るね~、またね」
残された空に、メイソンが一つ頼みごとを持ちかけた。
「実はな……南東樹海基地までの道を広げてほしいんだ。ちょうど今、夕飯時で外に誰もいないからお願い出来るかな?」
「分かりました」
空は《グラビティビット》を発動し、馬車が四台横に並んで通れるほどの広大な道を切り拓いていった。木々は静かに吸い上げられ、見事な道が現れる。
「さすがだな。今までの道は馬車一台でいっぱいいっぱいだったんだ。本当に助かるぜ」
「良いんですよ、どうせなら大きく作っておいた方が便利でしょうし」
「これで基地の物資輸送も楽になる。馬車はまだ地下トンネル通れないから、ありがとう、空さん」
「それでは私も、天空門に戻りますね」
空が天空門の屋敷に戻ると、玄関ロビーにはイザーナ、エリア、エレノア、オレク、雅閻魔、そしてエバが揃っていた。空の帰還を待っていたかのように、彼らは自然と集まり、その場には張り詰めたような空気が漂っていた。
「え~っと……何かありましたか?」
空の問いに、雅閻魔がゆったりと口を開いた。
「空よ、超位精霊について知っておるか?」
「確か……最上位の精霊ですよね? イフリートとか」
「うむ、その通りじゃ。そして、そこにおるイザーナが、その精霊たちと契約できる資質を持っておるのじゃ」
「明日から、彼女に超位精霊たちとの契約を試みてもらう」とエバが続ける。
「分かりました。私も同行しますよ」
「うむ、頼んだぞ」
イザーナは一歩前に出て、深々と頭を下げた。
「よろしくお願いします、空様」
「このパーティーの鍛錬も兼ねていますので、緊急時以外は手を出さぬよう願います」とエバが念を押す。
空は静かに頷き、ふと隣に佇むイザーナの肩へと視線を落とす。
そこには――静かに羽をたたむ一羽の小鳥が止まっていた。
「……その鳥は、まさか……」
声に宿った驚きと、微かな祈り。
それに応えるように、エバがやわらかく微笑み、そっと頷く。
「はい。不死鳥です。
イザーナが魔力を解き放ったその瞬間――まるで、魂の声に導かれるように舞い降りました。
そして、彼女が名を与えたことで、心と心が結ばれたのです」
空の胸の奥が、温かく波打つ。
遠い奇跡を目前にしたような、静かな感動が広がっていく。
「そうか……よかった。本当によかった」
言葉は短くとも、その声には確かな安堵と祝福が込められていた。
「で、その名は?」
イザーナはそっと小鳥に目をやり、愛おしむように囁く。
「……レミーア、と名づけました。
光と夢のあいだを飛ぶ者――そんな意味を込めて」
空は微笑み、頷く。
その名が、この場にひとひらの風のような余韻を残す。
「……素敵な名前だ。まるで歌の一節のようだね」
「ありがとうございます」
イザーナの頬に微笑みが灯った。
そして空は改めて周囲を見渡す。仲間たちの表情には、かつて見られなかった自信と落ち着きが宿っていた。
「皆さんも、ずいぶん立派になりましたね」
「エバ様と雅様のしごきのせいで……」とエレノアが思わず漏らした瞬間、エバの冷たい視線が突き刺さる。
「エレノア?」
「い、いえっ! なんでもありません! 」
彼女たちは、地獄のブートキャンプとも言える修練を共に乗り越え、確かな絆を育んでいた。
「ところで、どの精霊から契約を?」
「まずはトーカチ山にいる、火の超位精霊ですね」とエバが答える。
「了解です」
イオの世界には、自然の理を司る六体の超位精霊が存在する。
――火の超位精霊イフリート
――風の超位精霊シルフェード
――水の超位精霊アクアディア
――地の超位精霊ロックウェル
――光の超位精霊エバ
――闇の超位精霊カイン
これらの精霊たちは、“勇者と救世主”にしか力を貸さぬ存在。
“救世主”――
その名を冠する者が現れる時、各超位精霊は道を示し、旅路に寄り添うと言われている。
こうして、エリア(神官剣士)をリーダーに、エレノア(魔法剣士)、オレク(重戦士)、イザーナ(神官兼精霊召喚士)の冒険者パーティーが誕生し、各地にいるという超位精霊に契約しに行く旅が、始まろうとしていた。
「なるほど……では私たちはダークゴブリンの件は、干渉しないでおくよ」
「おおきにな!」
こうして調査を終えた、一行は静かに南東樹海基地へと引き返した。
「おう! お帰り~。で、どうだった?」
基地で出迎えたのは、メイソンだった。空は簡潔に、地下トンネルとダークゴブリンたちについて説明する。
「なるほどな……。ゴブリン狩りが一時流行ってたって話は聞いていたが、まさか進化するとはな」
「ゴブリン狩りって、他の地域でも?」と空が訊ねる。
「いや、そんな物騒なことやってたのはシールド領だけさ。他じゃゴブリンはむしろ善良な存在として知られてる。俺なんか、倒れた地蔵を直してるゴブリンを見たことがあるし、ミラー領のギルドじゃ“良い奴ら”って教えてるくらいだ」
「奴らの狙いはシールド領やから、南東樹海でダークゴブリンに出くわすことはないと思うで」とぽん吉が補足する。
「それは助かるが、ルークやリアムにも報告はしておく。ここの連中にも、見かけないゴブリンを見たら即撤退と通達しておく」
「おおきにな。ほな、わいは妖狐はんのとこ戻るわ。シールド領の北東樹海におるさかい、何かあったら来てな~」
そう言ってぽん吉は肉球を見せて手を振り、天空門を経由して去っていった。ミアも疲れた様子で一言残して帰っていく。
「ボクも戻るね~、またね」
残された空に、メイソンが一つ頼みごとを持ちかけた。
「実はな……南東樹海基地までの道を広げてほしいんだ。ちょうど今、夕飯時で外に誰もいないからお願い出来るかな?」
「分かりました」
空は《グラビティビット》を発動し、馬車が四台横に並んで通れるほどの広大な道を切り拓いていった。木々は静かに吸い上げられ、見事な道が現れる。
「さすがだな。今までの道は馬車一台でいっぱいいっぱいだったんだ。本当に助かるぜ」
「良いんですよ、どうせなら大きく作っておいた方が便利でしょうし」
「これで基地の物資輸送も楽になる。馬車はまだ地下トンネル通れないから、ありがとう、空さん」
「それでは私も、天空門に戻りますね」
空が天空門の屋敷に戻ると、玄関ロビーにはイザーナ、エリア、エレノア、オレク、雅閻魔、そしてエバが揃っていた。空の帰還を待っていたかのように、彼らは自然と集まり、その場には張り詰めたような空気が漂っていた。
「え~っと……何かありましたか?」
空の問いに、雅閻魔がゆったりと口を開いた。
「空よ、超位精霊について知っておるか?」
「確か……最上位の精霊ですよね? イフリートとか」
「うむ、その通りじゃ。そして、そこにおるイザーナが、その精霊たちと契約できる資質を持っておるのじゃ」
「明日から、彼女に超位精霊たちとの契約を試みてもらう」とエバが続ける。
「分かりました。私も同行しますよ」
「うむ、頼んだぞ」
イザーナは一歩前に出て、深々と頭を下げた。
「よろしくお願いします、空様」
「このパーティーの鍛錬も兼ねていますので、緊急時以外は手を出さぬよう願います」とエバが念を押す。
空は静かに頷き、ふと隣に佇むイザーナの肩へと視線を落とす。
そこには――静かに羽をたたむ一羽の小鳥が止まっていた。
「……その鳥は、まさか……」
声に宿った驚きと、微かな祈り。
それに応えるように、エバがやわらかく微笑み、そっと頷く。
「はい。不死鳥です。
イザーナが魔力を解き放ったその瞬間――まるで、魂の声に導かれるように舞い降りました。
そして、彼女が名を与えたことで、心と心が結ばれたのです」
空の胸の奥が、温かく波打つ。
遠い奇跡を目前にしたような、静かな感動が広がっていく。
「そうか……よかった。本当によかった」
言葉は短くとも、その声には確かな安堵と祝福が込められていた。
「で、その名は?」
イザーナはそっと小鳥に目をやり、愛おしむように囁く。
「……レミーア、と名づけました。
光と夢のあいだを飛ぶ者――そんな意味を込めて」
空は微笑み、頷く。
その名が、この場にひとひらの風のような余韻を残す。
「……素敵な名前だ。まるで歌の一節のようだね」
「ありがとうございます」
イザーナの頬に微笑みが灯った。
そして空は改めて周囲を見渡す。仲間たちの表情には、かつて見られなかった自信と落ち着きが宿っていた。
「皆さんも、ずいぶん立派になりましたね」
「エバ様と雅様のしごきのせいで……」とエレノアが思わず漏らした瞬間、エバの冷たい視線が突き刺さる。
「エレノア?」
「い、いえっ! なんでもありません! 」
彼女たちは、地獄のブートキャンプとも言える修練を共に乗り越え、確かな絆を育んでいた。
「ところで、どの精霊から契約を?」
「まずはトーカチ山にいる、火の超位精霊ですね」とエバが答える。
「了解です」
イオの世界には、自然の理を司る六体の超位精霊が存在する。
――火の超位精霊イフリート
――風の超位精霊シルフェード
――水の超位精霊アクアディア
――地の超位精霊ロックウェル
――光の超位精霊エバ
――闇の超位精霊カイン
これらの精霊たちは、“勇者と救世主”にしか力を貸さぬ存在。
“救世主”――
その名を冠する者が現れる時、各超位精霊は道を示し、旅路に寄り添うと言われている。
こうして、エリア(神官剣士)をリーダーに、エレノア(魔法剣士)、オレク(重戦士)、イザーナ(神官兼精霊召喚士)の冒険者パーティーが誕生し、各地にいるという超位精霊に契約しに行く旅が、始まろうとしていた。
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