天空門のルシフィス 「天と地を裂かれし熾天使――その名はルシフィス」

かみちん

文字の大きさ
57 / 101
惑星イオ 光国編

第57話 樹海トンネル調査報告

しおりを挟む
  ぽん吉は、かつてシールド領で行われた“ゴブリン討伐”に触れて、キールたちやハリア・エレバンとなにやら不穏な名前出てきて、空とミアは目を見交わす。


「なるほど……では私たちはダークゴブリンの件は、干渉しないでおくよ」


「おおきにな!」


こうして調査を終えた、一行は静かに南東樹海基地へと引き返した。


「おう! お帰り~。で、どうだった?」


 基地で出迎えたのは、メイソンだった。空は簡潔に、地下トンネルとダークゴブリンたちについて説明する。


「なるほどな……。ゴブリン狩りが一時流行ってたって話は聞いていたが、まさか進化するとはな」


「ゴブリン狩りって、他の地域でも?」と空が訊ねる。


「いや、そんな物騒なことやってたのはシールド領だけさ。他じゃゴブリンはむしろ善良な存在として知られてる。俺なんか、倒れた地蔵を直してるゴブリンを見たことがあるし、ミラー領のギルドじゃ“良い奴ら”って教えてるくらいだ」


「奴らの狙いはシールド領やから、南東樹海でダークゴブリンに出くわすことはないと思うで」とぽん吉が補足する。


「それは助かるが、ルークやリアムにも報告はしておく。ここの連中にも、見かけないゴブリンを見たら即撤退と通達しておく」


「おおきにな。ほな、わいは妖狐はんのとこ戻るわ。シールド領の北東樹海におるさかい、何かあったら来てな~」


 そう言ってぽん吉は肉球を見せて手を振り、天空門を経由して去っていった。ミアも疲れた様子で一言残して帰っていく。


「ボクも戻るね~、またね」


 残された空に、メイソンが一つ頼みごとを持ちかけた。


「実はな……南東樹海基地までの道を広げてほしいんだ。ちょうど今、夕飯時で外に誰もいないからお願い出来るかな?」


「分かりました」


 空は《グラビティビット》を発動し、馬車が四台横に並んで通れるほどの広大な道を切り拓いていった。木々は静かに吸い上げられ、見事な道が現れる。


「さすがだな。今までの道は馬車一台でいっぱいいっぱいだったんだ。本当に助かるぜ」


「良いんですよ、どうせなら大きく作っておいた方が便利でしょうし」


「これで基地の物資輸送も楽になる。馬車はまだ地下トンネル通れないから、ありがとう、空さん」


「それでは私も、天空門に戻りますね」


 空が天空門の屋敷に戻ると、玄関ロビーにはイザーナ、エリア、エレノア、オレク、雅閻魔、そしてエバが揃っていた。空の帰還を待っていたかのように、彼らは自然と集まり、その場には張り詰めたような空気が漂っていた。


「え~っと……何かありましたか?」


 空の問いに、雅閻魔がゆったりと口を開いた。


「空よ、超位精霊について知っておるか?」


「確か……最上位の精霊ですよね? イフリートとか」


「うむ、その通りじゃ。そして、そこにおるイザーナが、その精霊たちと契約できる資質を持っておるのじゃ」


「明日から、彼女に超位精霊たちとの契約を試みてもらう」とエバが続ける。


「分かりました。私も同行しますよ」


「うむ、頼んだぞ」


 イザーナは一歩前に出て、深々と頭を下げた。


「よろしくお願いします、空様」


「このパーティーの鍛錬も兼ねていますので、緊急時以外は手を出さぬよう願います」とエバが念を押す。



空は静かに頷き、ふと隣に佇むイザーナの肩へと視線を落とす。

そこには――静かに羽をたたむ一羽の小鳥が止まっていた。


「……その鳥は、まさか……」


声に宿った驚きと、微かな祈り。

それに応えるように、エバがやわらかく微笑み、そっと頷く。


「はい。不死鳥です。

イザーナが魔力を解き放ったその瞬間――まるで、魂の声に導かれるように舞い降りました。

そして、彼女が名を与えたことで、心と心が結ばれたのです」


空の胸の奥が、温かく波打つ。

遠い奇跡を目前にしたような、静かな感動が広がっていく。


「そうか……よかった。本当によかった」

言葉は短くとも、その声には確かな安堵と祝福が込められていた。


「で、その名は?」


イザーナはそっと小鳥に目をやり、愛おしむように囁く。


「……レミーア、と名づけました。

光と夢のあいだを飛ぶ者――そんな意味を込めて」


空は微笑み、頷く。

その名が、この場にひとひらの風のような余韻を残す。


「……素敵な名前だ。まるで歌の一節のようだね」


「ありがとうございます」

イザーナの頬に微笑みが灯った。


 

そして空は改めて周囲を見渡す。仲間たちの表情には、かつて見られなかった自信と落ち着きが宿っていた。


「皆さんも、ずいぶん立派になりましたね」


「エバ様と雅様のしごきのせいで……」とエレノアが思わず漏らした瞬間、エバの冷たい視線が突き刺さる。


「エレノア?」


「い、いえっ! なんでもありません! 」


 彼女たちは、地獄のブートキャンプとも言える修練を共に乗り越え、確かな絆を育んでいた。


「ところで、どの精霊から契約を?」


「まずはトーカチ山にいる、火の超位精霊ですね」とエバが答える。


「了解です」


 イオの世界には、自然の理を司る六体の超位精霊が存在する。


――火の超位精霊イフリート

――風の超位精霊シルフェード

――水の超位精霊アクアディア

――地の超位精霊ロックウェル

――光の超位精霊エバ

――闇の超位精霊カイン


 これらの精霊たちは、“勇者と救世主”にしか力を貸さぬ存在。


 “救世主”――

その名を冠する者が現れる時、各超位精霊は道を示し、旅路に寄り添うと言われている。


 こうして、エリア(神官剣士)をリーダーに、エレノア(魔法剣士)、オレク(重戦士)、イザーナ(神官兼精霊召喚士)の冒険者パーティーが誕生し、各地にいるという超位精霊に契約しに行く旅が、始まろうとしていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...