天空門のルシフィス 「天と地を裂かれし熾天使――その名はルシフィス」

かみちん

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惑星イオ 光国編

第80話 エバの決断、交錯する運命

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  エバの表情が、次第に険しくなっていく。

光妖精からの報告は、ある程度予想していたものではあったが、それでも耳にするたびに胸の奥がざわついた。


「……ミラー領、ドリード王国、シールド領から延びる、地下トンネルで魔物の動き……エレバン帝国城にはダークゴブリンが出現し、ハリアとハリス皇帝が接触中か……」


エバは眉をひそめ、思考を巡らせる。事態は多方面にわたり、急速に悪化していた。


「イザーナよ、どうする? このタイミングでハリアがハリス皇帝に会いに来た……いろいろな所で騒ぎが起きそうな中で、正直、最悪の展開も視野に入れねばならん」


その言葉に、イザーナは唇を噛みしめた。そして、決意を込めて顔を上げる。


「お父様とお兄様……どうしても確かめたい。帝国に行かせてください!」


「エリアたちは?」


エバが問うと、エリアは一歩前に出て、即答した。


「もちろん行きます」


「たとえ皇太子でも、危害を加えようとするなら……氷漬けにしますよ」


エレノアが冷ややかに言い放ち、オレクが力強くうなずく。


「俺たちなら大丈夫だ」


エバは静かに頷き、信頼の色を浮かべた。


「わかった。気をつけて行ってくれ。……なお、エレバン帝国には雅閻魔様が別件で滞在中だ。接触には注意しろ」


エリアは仲間たちに目を向け、短く告げる。


「じゃ、みんな……行きましょう!」


一行は天空門の光に包まれ、次なる目的地――エレバン帝国へと姿を消した。


 

エバはその場に残り、改めて光妖精へと視線を向けた。


「して……皆には言わなかったが、勇者王国の件……詳しく聞かせてくれ」


妖精は小さく頷き、早口で報告を始めた。


「本日の正午ごろ、勇者アレックス様が仲間たちと共に勇者城に戻り、アレス王と面会いたしました。旅の報告を終えた後、“魔王は?”との問いに、“見つからなかった”と返答されました。アレス王も深く追及なさらず、その場は平穏に終わりましたが――」


エバはわずかに目を細める。


「……続けて」


「その後、アレックス様が魔道師カレンと恋仲になり、結婚の許可を願い出たのです。アレス王は喜び、“婚約パーティーの準備を始めよう”と仰せになりました。ですが――」


妖精は声を低め、口をひそめるように続けた。


「アレックス様が“カレンは妊娠している”と告げたところ、アレス王の王冠から黒い霧が立ちのぼり……“許さんぞ!”という怒号と共に、アレス王の瞳が紫に染まりました。そして、その口から発せられた名は――“我は魔王カール”」


「……なんと」


エバは驚き。


「その時、カレンは“お父様!”と叫びました。しかし次の瞬間、魔王カールは彼女から“魔王の加護”を奪い、気を失った彼女をそのまま連れ去ったのです」


沈黙が落ちる。エバの瞳には、深い憂慮の色が浮かんでいた。


「……第四魔王カールが復活し、娘を連れ去ると同時にアレス王まで……」


「はい。アレックス様は、アレス王とカレン様を追い、闇国側へ向かったようです」


「事情はよくわかった。アレックスの行動を引き続き監視してくれと、精霊たちに伝えてくれ」


「了解いたしました」


エバは深く息を吸い込み、静かに呟いた。


「警戒していた事が一度に起こるとは……。空さんが降臨し、ミアと共に謎の地下トンネルを調査し、早急に対策を講じていなければ……光国は今ごろ、大混乱に陥っていただろう」


彼女の中で、情報が静かに繋がっていく。

ミラー領、ドリード王国の地下トンネルの魔物侵攻は、すでに対策済み。

エレバン帝国では、親子の再会が危うい均衡の上にある。

そして、アレス王の王冠に封印されていた第四魔王が復活そして第五魔王はアレックスの恋人で、第四魔王の娘という――。


「……さらに。空さんに酷似した、謎の人物の存在も。これは光と闇の神が与えし試練なのか、それとも……別の神……世界の終焉を告げる前兆か……」


その時、不意に背後から声がした。


「エバ様」


「うわっ……びっくりした……あなたは……雅閻魔様の……?」


そこに現れたのは、漆黒の装束に身を包んだ忍び――半蔵だった。


「はい。雅閻魔様の忍びでございます。ご報告がありまして……ツベツ平原で――」


「……なんと」


エバは目を見開いた。そして、すぐに決断を下す。


「報告、感謝する。私はそちらに向かう」


「では」


半蔵は一礼すると、そのまま闇へと紛れ、姿を消した。


エバは静かに空を仰ぐ。黒雲はいまだ空を覆い、その切れ間から差し込む光の筋が、果たして希望なのか、それとも破滅の前兆なのか――


それを知る者は、まだ誰もいなかった。


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