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惑星イオ 光国編
第90話 第三師団セシリアとラキ
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エレバン帝国城の北西――
ツベツ平原に突如現れた魔物たちの大群に対し、第一師団シールド兵は全面に立ち防御姿勢で迎え、第一師団の魔法兵たちが罠を仕掛ける。第ニ師団は騎馬による陽動で注意を引きつつ魔物たちの観察をし、全体の動きを逐次報告していた。まもなく、魔物たちが罠にかかるタイミングが迫っていた。
「おっ? そろそろ魔物たちが罠に入るぞ」
シールド兵たちは、左翼から右翼まで横一列を三重にやや弧を描く陣形で並び、目の前には“アースバンク”の魔法で仕掛けられた罠が広がっていた。
シールド兵の目の前は、急な下り坂になり、魔物たちから見ると、急な上り坂になっている。
「なにやら、魔物たちが赤く光り出していくぞ」
そのとき、師団の連絡兵が後方から声をかけてきた。
「赤く光る魔物は敵! 青く光る魔物は“魔物化した人間”です! 青い者は倒さないように注意を!」
「へぇ、分かりやすくていいね」
「今んとこ赤ばかりだな」
兵たちが情報を確認し合う間に、魔物たちは罠の中へと進み先頭が上り坂を登れず、後が停滞し始めていた。魔物の情報は陽動をしていた第ニ師団の騎馬隊にも素早く伝えられた。
「なるほどな。なら、俺たちは側面から魔物化した人の救出にまわるぞ。連絡、頼む」
「了解いたしました!」
「しかし……誰がこんな情報を?」
「空という天使様が、手伝ってくれたそうです」
「空? 聞いたことがない天使様だな」
「天使名はルシフィスでございます」
「ルシフィス様なら、早くそう言え!」
「す、すみません。ルシフィス様が、“名前は空と呼んでほしい”と……」
「……我らの守護天使様だ。お前たち、守護天使様が降臨されている! 張り切っていくぞ!」
各師団の旗印には、それぞれ天使をモチーフにした紋章が描かれている。
第一師団――「ウリイル」
天より遣わされし不動の盾。
神の御座を守護する聖域の壁、いかなる災いもその前には砕け散る。
第三師団――「ミカイル」
天空を翔ける光の弓手。
その矢は正義の名を帯び、悪しき者の心臓を射抜く、裁きの使徒。
第四師団――「ラファイル」
生と死の境に佇む癒しの司祭。
神の恩寵を宿す杖は、善にも悪にも平等に癒しをもたらす、沈黙の神官。
そして第二師団――「ルシフィス」
天より堕ち、地に立ち、再び天に昇る者。
悪魔の欲望を穿つ神槍を携え、神罰をもって闇を貫く、聖戦の先陣。
「おーっ!」
一方そのころ、中央では空・美加・エバの元に天空門からエリアたちが転移してくる。
「エバ様、空さん、美加さん!」
「来たか。そちらは片付いたのか?」
「ええ……幸いにも、ハリス皇帝はお助けできました」
「そうか。イザーナは大丈夫か?」
「は……はい」
弱々しい返事をするイザーナ。その声には、兄弟たちと再会した末に待ち受けていた悲しみの重さがにじんでいた。彼らが皆、地獄へ堕ちてしまった事実を受け止められるはずもなかった。
エバはエリア、オレク、エレノアに現状を伝え、右翼・キヨサト方面の防衛と魔物化した人々の救出を任せることにした。
「イザーナはここに残っていてもいいぞ」
「いえ! 皆と一緒に行きます」
「そうか……無理はするなよ? 無理はイフリートに任せておけばいいんだからな」
「ええ、そうします」
少しだけ、イザーナの口元に笑みが浮かぶ。
「じゃあ右翼側、任せたぞ」
「皆、行くわよ!」
空(ルシフィス)の方をちらちらと見ながらも、エリアは皆を引き連れて右翼へと向かっていった。
「空さんと美加さんは、しばらくここで休んでいてください」
「分かったよ。ありがとう」
空の表情に漂う疲れを察し、エバは彼と美加に中央司令本部での休息を促した。
そのころ、エレバン城の北西にある外城壁上では、第三師団師団長・セシリアが作戦本部を設置し、戦況を見据えていた。
彼女は軍需品・兵器開発の責任者でもあり、対魔物用のバリスタやカタパルト、サイクロンといった兵器の改良を手がけてきた天才。かつての大規模ゴブリン討伐では、ハノスの命令で開発室にこもるよう言われて、ラキと共にエレバン帝国兵器開発室で研究をしていた。
「セシリア様、第三師団はどうなさいますか?」
セシリアのすぐ横にいる第三師団副師団長のラキが作戦を尋ねる
「ん~~~? 」
「寝ちゃダメですよ?」
「分かっちゃった?」
「どうせ徹夜で何か作ってたんでしょう?」
「ちょっと面白い情報を仕入れてしまってね。あれが完成したら……ぐふっ、ぐふふふふ……」
「もう! 今は目の前の事態に対処してください!」
「え~、オルクスのおっちゃんと、イノシシザンザに任せておけばいいよ~」
「そんな訳にはいきません!」
「わかったよ~」
第三師団 師団長 セシリア
年齢:二十代後半、平均的な身長。
髪型:金髪ロング、大きな三つ編みがトレードマーク
性格:おおらかで明るいが、実は繊細でよく気が回るタイプ。落ち込むと長引く
服装:軽装の戦闘服。ベルトやポーチに様々な工具や爆薬を装備
【第三師団 副師団長 ラキ】
年齢:十代後半 身長低め、小柄で華奢 髪型:ブラウンのショートボブ
性格:心配性。慎重だが芯が強く、非常時に本領を発揮する
役職、第三師団副師団長/弁護士兼工作兵
服装:動きやすい軽装戦闘服+作業用ベスト。背中には法令集入りの鞄
第三師団、副師団長ラキはセシリアより年下ながら、話術に優れたしっかり者で、天才肌の彼女とも不思議と相性がよく、常に行動を共にしていた。
そして第三師団の上層部や近衛兵は女性比率が高いのも特徴だった。
「右翼は賢者オリバルじいさん、左翼は騎馬隊ザンザ、中央は重戦士オルクスのおっちゃんか……じゃあ、とりあえず中央後方にカタパルト(投石器)置いて。左翼には移動しやすいボウガンと弓兵、右翼は移動式バリスタ(通称カチューシャ)を配置。中央司令本部周りにはサイクロン(竜巻発生装置)を用意しておこうか」
「了解しました!」
中央指令本部
「オルクス様、セシリア様より報告です!」
「おっ? セシリアも来てるのか」
「はっ! セシリア様は、魔物に抜かれるなよ。抜かれたら遠慮なくカタパルト打ち込むぞ!とのことです!」
「ハッハッハ! まだ尻の青い小娘が言いよるな。第三師団の投石にやられるほど、俺たちはヤワじゃないと伝えておけ!」
「了解しました!」
「しかし、カタパルトか……今接近してるのは軍隊オオアリ。セシリアの奴、対空戦闘も視野に入れてるのか……?」
左翼側面騎馬隊
「ザンザ様! セシリア様より報告です!」
「お? 作戦指揮にセシリアがついたのか」
「はっ。“退路をちゃんと確保しておかないと、後ろから矢の雨を降らせるぞ!”とのことです!」
「なんだと? 軍隊オオアリにボウガンや通常の弓矢なんて効かないぞ……セシリアは他の魔物も想定してるのか? まぁいい、分かったと伝えてくれ」
「了解しました!」
軍隊オオアリは外皮が非常に硬く、通常の弓矢は通用しない。そのため、遠距離からは投石や大弓バリスタでの攻撃が通例とされている。
「ザンザ、どうする?」
ジンは元第ニ師団長で三十代。数年前に若きザンザへ役目を譲り、今はその補佐を務めている。
「左側を厚くした雁行の陣形でいき、退路をシールド兵側に確保しておく」
「シールド兵から離れた左側を厚くして、そのまま魔物たちをシールド兵側へ押し込む感じだな」
「ああ。何か現れる前に救出の目処をつけて、シールド兵たちと合流するのがいい」
「分かった。全隊に伝える!」
「了解しました!」
「よし、まずは魔物化した人の救出に行くぞ!」
「おーっ!」
――かくして、突如現れた大群の魔物たちの中から、魔物化した人々を救出する作戦が始まった――
ツベツ平原に突如現れた魔物たちの大群に対し、第一師団シールド兵は全面に立ち防御姿勢で迎え、第一師団の魔法兵たちが罠を仕掛ける。第ニ師団は騎馬による陽動で注意を引きつつ魔物たちの観察をし、全体の動きを逐次報告していた。まもなく、魔物たちが罠にかかるタイミングが迫っていた。
「おっ? そろそろ魔物たちが罠に入るぞ」
シールド兵たちは、左翼から右翼まで横一列を三重にやや弧を描く陣形で並び、目の前には“アースバンク”の魔法で仕掛けられた罠が広がっていた。
シールド兵の目の前は、急な下り坂になり、魔物たちから見ると、急な上り坂になっている。
「なにやら、魔物たちが赤く光り出していくぞ」
そのとき、師団の連絡兵が後方から声をかけてきた。
「赤く光る魔物は敵! 青く光る魔物は“魔物化した人間”です! 青い者は倒さないように注意を!」
「へぇ、分かりやすくていいね」
「今んとこ赤ばかりだな」
兵たちが情報を確認し合う間に、魔物たちは罠の中へと進み先頭が上り坂を登れず、後が停滞し始めていた。魔物の情報は陽動をしていた第ニ師団の騎馬隊にも素早く伝えられた。
「なるほどな。なら、俺たちは側面から魔物化した人の救出にまわるぞ。連絡、頼む」
「了解いたしました!」
「しかし……誰がこんな情報を?」
「空という天使様が、手伝ってくれたそうです」
「空? 聞いたことがない天使様だな」
「天使名はルシフィスでございます」
「ルシフィス様なら、早くそう言え!」
「す、すみません。ルシフィス様が、“名前は空と呼んでほしい”と……」
「……我らの守護天使様だ。お前たち、守護天使様が降臨されている! 張り切っていくぞ!」
各師団の旗印には、それぞれ天使をモチーフにした紋章が描かれている。
第一師団――「ウリイル」
天より遣わされし不動の盾。
神の御座を守護する聖域の壁、いかなる災いもその前には砕け散る。
第三師団――「ミカイル」
天空を翔ける光の弓手。
その矢は正義の名を帯び、悪しき者の心臓を射抜く、裁きの使徒。
第四師団――「ラファイル」
生と死の境に佇む癒しの司祭。
神の恩寵を宿す杖は、善にも悪にも平等に癒しをもたらす、沈黙の神官。
そして第二師団――「ルシフィス」
天より堕ち、地に立ち、再び天に昇る者。
悪魔の欲望を穿つ神槍を携え、神罰をもって闇を貫く、聖戦の先陣。
「おーっ!」
一方そのころ、中央では空・美加・エバの元に天空門からエリアたちが転移してくる。
「エバ様、空さん、美加さん!」
「来たか。そちらは片付いたのか?」
「ええ……幸いにも、ハリス皇帝はお助けできました」
「そうか。イザーナは大丈夫か?」
「は……はい」
弱々しい返事をするイザーナ。その声には、兄弟たちと再会した末に待ち受けていた悲しみの重さがにじんでいた。彼らが皆、地獄へ堕ちてしまった事実を受け止められるはずもなかった。
エバはエリア、オレク、エレノアに現状を伝え、右翼・キヨサト方面の防衛と魔物化した人々の救出を任せることにした。
「イザーナはここに残っていてもいいぞ」
「いえ! 皆と一緒に行きます」
「そうか……無理はするなよ? 無理はイフリートに任せておけばいいんだからな」
「ええ、そうします」
少しだけ、イザーナの口元に笑みが浮かぶ。
「じゃあ右翼側、任せたぞ」
「皆、行くわよ!」
空(ルシフィス)の方をちらちらと見ながらも、エリアは皆を引き連れて右翼へと向かっていった。
「空さんと美加さんは、しばらくここで休んでいてください」
「分かったよ。ありがとう」
空の表情に漂う疲れを察し、エバは彼と美加に中央司令本部での休息を促した。
そのころ、エレバン城の北西にある外城壁上では、第三師団師団長・セシリアが作戦本部を設置し、戦況を見据えていた。
彼女は軍需品・兵器開発の責任者でもあり、対魔物用のバリスタやカタパルト、サイクロンといった兵器の改良を手がけてきた天才。かつての大規模ゴブリン討伐では、ハノスの命令で開発室にこもるよう言われて、ラキと共にエレバン帝国兵器開発室で研究をしていた。
「セシリア様、第三師団はどうなさいますか?」
セシリアのすぐ横にいる第三師団副師団長のラキが作戦を尋ねる
「ん~~~? 」
「寝ちゃダメですよ?」
「分かっちゃった?」
「どうせ徹夜で何か作ってたんでしょう?」
「ちょっと面白い情報を仕入れてしまってね。あれが完成したら……ぐふっ、ぐふふふふ……」
「もう! 今は目の前の事態に対処してください!」
「え~、オルクスのおっちゃんと、イノシシザンザに任せておけばいいよ~」
「そんな訳にはいきません!」
「わかったよ~」
第三師団 師団長 セシリア
年齢:二十代後半、平均的な身長。
髪型:金髪ロング、大きな三つ編みがトレードマーク
性格:おおらかで明るいが、実は繊細でよく気が回るタイプ。落ち込むと長引く
服装:軽装の戦闘服。ベルトやポーチに様々な工具や爆薬を装備
【第三師団 副師団長 ラキ】
年齢:十代後半 身長低め、小柄で華奢 髪型:ブラウンのショートボブ
性格:心配性。慎重だが芯が強く、非常時に本領を発揮する
役職、第三師団副師団長/弁護士兼工作兵
服装:動きやすい軽装戦闘服+作業用ベスト。背中には法令集入りの鞄
第三師団、副師団長ラキはセシリアより年下ながら、話術に優れたしっかり者で、天才肌の彼女とも不思議と相性がよく、常に行動を共にしていた。
そして第三師団の上層部や近衛兵は女性比率が高いのも特徴だった。
「右翼は賢者オリバルじいさん、左翼は騎馬隊ザンザ、中央は重戦士オルクスのおっちゃんか……じゃあ、とりあえず中央後方にカタパルト(投石器)置いて。左翼には移動しやすいボウガンと弓兵、右翼は移動式バリスタ(通称カチューシャ)を配置。中央司令本部周りにはサイクロン(竜巻発生装置)を用意しておこうか」
「了解しました!」
中央指令本部
「オルクス様、セシリア様より報告です!」
「おっ? セシリアも来てるのか」
「はっ! セシリア様は、魔物に抜かれるなよ。抜かれたら遠慮なくカタパルト打ち込むぞ!とのことです!」
「ハッハッハ! まだ尻の青い小娘が言いよるな。第三師団の投石にやられるほど、俺たちはヤワじゃないと伝えておけ!」
「了解しました!」
「しかし、カタパルトか……今接近してるのは軍隊オオアリ。セシリアの奴、対空戦闘も視野に入れてるのか……?」
左翼側面騎馬隊
「ザンザ様! セシリア様より報告です!」
「お? 作戦指揮にセシリアがついたのか」
「はっ。“退路をちゃんと確保しておかないと、後ろから矢の雨を降らせるぞ!”とのことです!」
「なんだと? 軍隊オオアリにボウガンや通常の弓矢なんて効かないぞ……セシリアは他の魔物も想定してるのか? まぁいい、分かったと伝えてくれ」
「了解しました!」
軍隊オオアリは外皮が非常に硬く、通常の弓矢は通用しない。そのため、遠距離からは投石や大弓バリスタでの攻撃が通例とされている。
「ザンザ、どうする?」
ジンは元第ニ師団長で三十代。数年前に若きザンザへ役目を譲り、今はその補佐を務めている。
「左側を厚くした雁行の陣形でいき、退路をシールド兵側に確保しておく」
「シールド兵から離れた左側を厚くして、そのまま魔物たちをシールド兵側へ押し込む感じだな」
「ああ。何か現れる前に救出の目処をつけて、シールド兵たちと合流するのがいい」
「分かった。全隊に伝える!」
「了解しました!」
「よし、まずは魔物化した人の救出に行くぞ!」
「おーっ!」
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