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惑星イオ 光国編
第98話 特大・四尺爆裂弾
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ツベツ平原で第三師団による攻撃が始まって、四十分ほどが経過していた。新兵器の威力は魔虫に対して絶大な効果を発揮したが、魔虫の数も凄まじく、戦場は膠着状態を迎えていた。
その様子を見て中級悪魔キマグレイは。
「ハリアからの連絡はまだか……しかし小癪な人間どもめ。おとなしく我が魔虫に餌を提供すれば良いものを。こうなれば……」
ツベツ平原の戦場中央部では、魔虫と兵士たちの間に中央観測棒を挟んで、横一文字に境目ができていた。その境目を崩そうと、キマグレイはパチンと指を鳴らした。
すると、軍隊オオアリの最後尾に大量のイボブーが現れ、軍隊オオアリと共に戦場中央目掛けて突進し始めた。
「エレバン帝国に入った後、勇者王国に攻め入るための戦力だったが、仕方がない」
キマグレイの計画は、色欲のアスモタンに誘惑された、ハリア・エレバンが父ハリス・エレバンを倒し、新たな皇帝として即位することだった。そして、帝国の師団兵士たちを魔虫で蹂躙し、兵力を削り取ることで、エレバン帝国を乗っ取り、魔王カレンにより混乱が起きているであろう、勇者王国まで手中に収めようするというものであった。
しかし、開戦前に軍隊オオアリたちをゆっくりと進軍させながら、ハリアからの連絡を待っている間に、奇妙な事態が起きる。師団兵士たちがどこからともなく現れ、いざ軍隊オオアリたちがエレバン城を攻める段階に差し掛かると、師団兵士たちは既に、準備万端の状態で待機していた。
すでにキマグレイの予想を超えた事態が進行しており、計画は破綻しつつあることに、彼はまだ気づいていなかった。
「さあ、イボブー! 何もかも踏みつけていくのです!」
その異変に気がついたのは、左翼にいるジンだった。
「また後方から音がするぞ」
「よく聞こえるな~」
戦場は魔虫アブンブとユスリカ、軍隊ハネオオアリの羽音に加え、第三師団の新兵器の破裂音が響き渡り、周囲の音は全く聞こえない状況だった。
「これは……足音?」
ジンの聴力は凄まじく、二キロ先で針が落ちる音も聞こえる。そのため、普段は耳栓をして生活をしていた。
「イボブーと軍隊オオアリか……しかも、また大量に」
「そりゃまずいな。対空だけで手一杯なところに地上から突撃かよ。さすがにシールド兵まで下がるしかないか」
「いや、今我々だけで下がれば、均衡が崩れて隊列が崩壊するぞ」
「大至急、セシリアに伝えてくれ」
「分かった」
第三師団作戦本部、ジンから至急の連絡を受けたレーカがセシリアに報告する。
「セシリア様」
「ん?」
「左翼のジン様から、大量のイボブーと軍隊オオアリが魔虫の後方から接近中、との報告です」
「な、なんだって~!」
「いかがいたしましょうと、ザンザ様が泣いているようです」
「ザンザ君もさすがに対応しきれないか。では、その場に留まり、イボブーと軍隊オオアリが接近してきたら、全員頭守ってうつ伏せになってやり過ごせ、と」
「かしこまりました」
「そんなことをしたら踏みつけられてかなりのダメージを負いますが、大丈夫でしょうか?」
「ラキちゃん! イボブーには、やっぱり中濃ソースだよね?」
「へ? あっ、いや……」
「ウスターは違うか……デミちゃんでもあー……」
「何を悩んでるんですか! でも、ポークチャップしかないと思います!」
「あー、良いね、良いね。では、戦いが終わったら食べに行こうね~! では特大カタパルト、スタンバイ!」
「かしこまりました」
レーカが外城壁内にある特大カタパルトに合図を送ると、カタパルト担当兵たちが慌ただしく動き始めた。
外城壁内には三基の特大カタパルトがあり、それぞれ戦場の左翼、中央、右翼に立てられた中央の観測棒を目標として照準を合わせていた。
あとは、弾着までの時間を調整する導火線の長さを決めれば、いつでも発射可能だった。
第一師団中央ファランクス隊、オルクスがいる現場では。
「ん? なんだって?」
「大量のイボブーと軍隊オオアリが前から来るので、来たらうつ伏せでやり過ごせ、と伝令が来ております」
「そんなことをしたら全員踏み潰されて死傷者が出るぞ……。様子を見て判断すると言っておけ」
「了解しました」
「セシリアの奴め、情勢が悪くなってやけになったのか?」
第四師団、司令部テント内
「オリバル様、第三師団が大きな投石をするので、十人一組で円陣を組み、防御魔法をかけて固まってしゃがんでいてください、とのことです」
「了解じゃ。皆に伝えておけ」
「了解しました」
「いつの間にか第三師団はバリスタを片付けて外城壁に向かおうとしているし、一体全体、どんな投石をするのやら……」
そして、二十分後。
第二師団アタッカー隊、ザンザたちがいる現場。
「イボブーと軍隊オオアリが来るぞ~!」
「仕方ねえ、指示に従うか……。攻撃止め! イボブーと軍隊オオアリが来たら、全員頭守ってうつ伏せになってやり過ごせよ!」
「了解しました!」
第三師団作戦本部
「イボブーと軍隊オオアリ来ましたよ! あんなにたくさん……大丈夫かな~」
ラキはモニター越しに中央ファランクス隊の映像を見る。
「あれ? 攻撃を止めてうつ伏せになる気配がない……そろそろ伏せたほうが……」
セシリアが特大カタパルトの発射カウントダウンを開始する。
「カウントダウン、五・四・三・二・一……発射!」
セシリアが発射の合図をすると、外城壁内の特大カタパルト三基から、直径一メートル二十センチの大きな玉が、戦場中央の観測棒目掛けて放たれた。
放たれた大きな玉には蛍光塗料が塗られており、放物線を描いて飛んでいく姿は、まるで流れ星を見ているかのような光景だった。弾着するまで数十秒間、それを見ていたラキは、
「わぁー、綺麗ですね~」
ザンザは皆に伏せるよう命じる
「来たぞ~! 全員伏せろ!」
第一師団ファランクス隊
「セシリアの奴め、投石で流れ星を作って……ん?」
オルクスはうつ伏せになるかギリギリまで見極めるつもりで外城壁の方を見ていたが、現在地から視認できるほどの大きさの破裂する玉が飛んでくる脅威を、ようやく認識した。
「あれはヤバい! 全員、伏せろ~!」
オルクスがそう叫んだ瞬間――
第三師団の観測員が「弾着、今!」と叫んだ瞬間——。
左翼・中央・右翼、それぞれの中央観測棒の上空およそ百五十メートル位置で、三発の四尺爆裂弾が同時に炸裂した。
次の刹那、
大地を揺るがす——いや、世界そのものを震わせるような轟音が、耳を貫いた。
ズドオオオオオオオォン!!!
爆心から奔った衝撃波は壁のように押し寄せ、戦場を丸ごと薙ぎ払う。空気が裂け、地面がうねり、兵も魔虫も区別なく飲み込む暴風となった。
その威力は絶大だった。
戦場に群がっていた魔虫は、瞬く間に細切れとなり、空中で赤黒い霧と化す。巨体のイボブーすら、まるで紙細工のように押し潰され、骨ごと砕かれて吹き飛んだ。地面に叩きつけられた肉塊は、なおも爆風に転がされ続けた。
それは、惑星イオの歴史で初めて放たれた四尺爆裂弾——しかも三発同時という暴挙が生み出した、まさに地獄の光景だった。
戦場にいた兵士たちはうつ伏せで動かない者、伏せるのが間に合わす吹き飛んだ者、魔物たちは全部居なくなり静まり返る戦場。
そして一時間後……
真正面から衝撃波と左翼、右翼からも衝撃波が来た中央ファランクス隊は、一番被害が大きく、三方から合わさった衝撃波は後方のサイクロンの竜巻防御も効かず、作戦本部がある外城壁を全壊に追いやった。
そんな中央で頑丈が取り柄のオルクスは軽傷で済み、この惨状を目の当たりにし
その眉間には青筋が浮かび、口からは低く、そして深く唸るような声が漏れていた。
「……セシリアァアアア!やりすぎだ!!」
戦場全体が静まり返る中、怒りの咆哮が響き渡った――。
その様子を見て中級悪魔キマグレイは。
「ハリアからの連絡はまだか……しかし小癪な人間どもめ。おとなしく我が魔虫に餌を提供すれば良いものを。こうなれば……」
ツベツ平原の戦場中央部では、魔虫と兵士たちの間に中央観測棒を挟んで、横一文字に境目ができていた。その境目を崩そうと、キマグレイはパチンと指を鳴らした。
すると、軍隊オオアリの最後尾に大量のイボブーが現れ、軍隊オオアリと共に戦場中央目掛けて突進し始めた。
「エレバン帝国に入った後、勇者王国に攻め入るための戦力だったが、仕方がない」
キマグレイの計画は、色欲のアスモタンに誘惑された、ハリア・エレバンが父ハリス・エレバンを倒し、新たな皇帝として即位することだった。そして、帝国の師団兵士たちを魔虫で蹂躙し、兵力を削り取ることで、エレバン帝国を乗っ取り、魔王カレンにより混乱が起きているであろう、勇者王国まで手中に収めようするというものであった。
しかし、開戦前に軍隊オオアリたちをゆっくりと進軍させながら、ハリアからの連絡を待っている間に、奇妙な事態が起きる。師団兵士たちがどこからともなく現れ、いざ軍隊オオアリたちがエレバン城を攻める段階に差し掛かると、師団兵士たちは既に、準備万端の状態で待機していた。
すでにキマグレイの予想を超えた事態が進行しており、計画は破綻しつつあることに、彼はまだ気づいていなかった。
「さあ、イボブー! 何もかも踏みつけていくのです!」
その異変に気がついたのは、左翼にいるジンだった。
「また後方から音がするぞ」
「よく聞こえるな~」
戦場は魔虫アブンブとユスリカ、軍隊ハネオオアリの羽音に加え、第三師団の新兵器の破裂音が響き渡り、周囲の音は全く聞こえない状況だった。
「これは……足音?」
ジンの聴力は凄まじく、二キロ先で針が落ちる音も聞こえる。そのため、普段は耳栓をして生活をしていた。
「イボブーと軍隊オオアリか……しかも、また大量に」
「そりゃまずいな。対空だけで手一杯なところに地上から突撃かよ。さすがにシールド兵まで下がるしかないか」
「いや、今我々だけで下がれば、均衡が崩れて隊列が崩壊するぞ」
「大至急、セシリアに伝えてくれ」
「分かった」
第三師団作戦本部、ジンから至急の連絡を受けたレーカがセシリアに報告する。
「セシリア様」
「ん?」
「左翼のジン様から、大量のイボブーと軍隊オオアリが魔虫の後方から接近中、との報告です」
「な、なんだって~!」
「いかがいたしましょうと、ザンザ様が泣いているようです」
「ザンザ君もさすがに対応しきれないか。では、その場に留まり、イボブーと軍隊オオアリが接近してきたら、全員頭守ってうつ伏せになってやり過ごせ、と」
「かしこまりました」
「そんなことをしたら踏みつけられてかなりのダメージを負いますが、大丈夫でしょうか?」
「ラキちゃん! イボブーには、やっぱり中濃ソースだよね?」
「へ? あっ、いや……」
「ウスターは違うか……デミちゃんでもあー……」
「何を悩んでるんですか! でも、ポークチャップしかないと思います!」
「あー、良いね、良いね。では、戦いが終わったら食べに行こうね~! では特大カタパルト、スタンバイ!」
「かしこまりました」
レーカが外城壁内にある特大カタパルトに合図を送ると、カタパルト担当兵たちが慌ただしく動き始めた。
外城壁内には三基の特大カタパルトがあり、それぞれ戦場の左翼、中央、右翼に立てられた中央の観測棒を目標として照準を合わせていた。
あとは、弾着までの時間を調整する導火線の長さを決めれば、いつでも発射可能だった。
第一師団中央ファランクス隊、オルクスがいる現場では。
「ん? なんだって?」
「大量のイボブーと軍隊オオアリが前から来るので、来たらうつ伏せでやり過ごせ、と伝令が来ております」
「そんなことをしたら全員踏み潰されて死傷者が出るぞ……。様子を見て判断すると言っておけ」
「了解しました」
「セシリアの奴め、情勢が悪くなってやけになったのか?」
第四師団、司令部テント内
「オリバル様、第三師団が大きな投石をするので、十人一組で円陣を組み、防御魔法をかけて固まってしゃがんでいてください、とのことです」
「了解じゃ。皆に伝えておけ」
「了解しました」
「いつの間にか第三師団はバリスタを片付けて外城壁に向かおうとしているし、一体全体、どんな投石をするのやら……」
そして、二十分後。
第二師団アタッカー隊、ザンザたちがいる現場。
「イボブーと軍隊オオアリが来るぞ~!」
「仕方ねえ、指示に従うか……。攻撃止め! イボブーと軍隊オオアリが来たら、全員頭守ってうつ伏せになってやり過ごせよ!」
「了解しました!」
第三師団作戦本部
「イボブーと軍隊オオアリ来ましたよ! あんなにたくさん……大丈夫かな~」
ラキはモニター越しに中央ファランクス隊の映像を見る。
「あれ? 攻撃を止めてうつ伏せになる気配がない……そろそろ伏せたほうが……」
セシリアが特大カタパルトの発射カウントダウンを開始する。
「カウントダウン、五・四・三・二・一……発射!」
セシリアが発射の合図をすると、外城壁内の特大カタパルト三基から、直径一メートル二十センチの大きな玉が、戦場中央の観測棒目掛けて放たれた。
放たれた大きな玉には蛍光塗料が塗られており、放物線を描いて飛んでいく姿は、まるで流れ星を見ているかのような光景だった。弾着するまで数十秒間、それを見ていたラキは、
「わぁー、綺麗ですね~」
ザンザは皆に伏せるよう命じる
「来たぞ~! 全員伏せろ!」
第一師団ファランクス隊
「セシリアの奴め、投石で流れ星を作って……ん?」
オルクスはうつ伏せになるかギリギリまで見極めるつもりで外城壁の方を見ていたが、現在地から視認できるほどの大きさの破裂する玉が飛んでくる脅威を、ようやく認識した。
「あれはヤバい! 全員、伏せろ~!」
オルクスがそう叫んだ瞬間――
第三師団の観測員が「弾着、今!」と叫んだ瞬間——。
左翼・中央・右翼、それぞれの中央観測棒の上空およそ百五十メートル位置で、三発の四尺爆裂弾が同時に炸裂した。
次の刹那、
大地を揺るがす——いや、世界そのものを震わせるような轟音が、耳を貫いた。
ズドオオオオオオオォン!!!
爆心から奔った衝撃波は壁のように押し寄せ、戦場を丸ごと薙ぎ払う。空気が裂け、地面がうねり、兵も魔虫も区別なく飲み込む暴風となった。
その威力は絶大だった。
戦場に群がっていた魔虫は、瞬く間に細切れとなり、空中で赤黒い霧と化す。巨体のイボブーすら、まるで紙細工のように押し潰され、骨ごと砕かれて吹き飛んだ。地面に叩きつけられた肉塊は、なおも爆風に転がされ続けた。
それは、惑星イオの歴史で初めて放たれた四尺爆裂弾——しかも三発同時という暴挙が生み出した、まさに地獄の光景だった。
戦場にいた兵士たちはうつ伏せで動かない者、伏せるのが間に合わす吹き飛んだ者、魔物たちは全部居なくなり静まり返る戦場。
そして一時間後……
真正面から衝撃波と左翼、右翼からも衝撃波が来た中央ファランクス隊は、一番被害が大きく、三方から合わさった衝撃波は後方のサイクロンの竜巻防御も効かず、作戦本部がある外城壁を全壊に追いやった。
そんな中央で頑丈が取り柄のオルクスは軽傷で済み、この惨状を目の当たりにし
その眉間には青筋が浮かび、口からは低く、そして深く唸るような声が漏れていた。
「……セシリアァアアア!やりすぎだ!!」
戦場全体が静まり返る中、怒りの咆哮が響き渡った――。
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