僕の建国記〜師匠のスローライフの為、弾かれ者達の為に建国します〜

PALプンテ

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果ての大地

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 師匠と別れた僕は、ひたすら赤い光の後を追って歩いた。僕を導くようにずっと前をフヨフヨと進んでいく赤い光だが、僕が足を止めるとその場でフヨフヨと留まってくれるので必要な休息も取る事ができていた。

 日が傾きかけ、僕が野宿のできそうな場所を探している時一羽の羽兎はねうさぎが目の前を横切っる。
 ちょうど空腹も感じていた僕は、直に体にエンチャントを付与してけて羽兎目掛けて跳躍する。
 人間離れした速度で跳躍した僕は直に羽兎に追い付いて、羽兎の首根っこを鷲掴みにしそのまま首の骨を握り潰した。

 夕食の獲物をゲットした僕は上機嫌になり、師匠からもらった魔袋の中へ手を突っ込んだ。
 必要そうな物はあらかた入れてくれたと言っていたので、解体用のナイフも入ってる筈だ。
 ナイフと念じながら魔袋に手を突っ込むと、硬い鉄の感触を指先が伝えてくる。
 それを握りしめて手を引き抜くと、予想していた通り小型のナイフが鞘のついた状態で出てきた。
 僕は慣れた手付きで皮を剥ぎ、内臓と骨を切り分けて食べれる部分だけを残す。
 そこで僕はふと気づいてしまう。

「肉を焼く為の火ってどうしたらいいんだろう……」

 この5年間『師匠』という超便利人間と一緒に生活していた為、魔法の存在が生活に組み込まれてしまっていた。
 それなのに僕はエンチャント魔法しか使えない、僕は魔法の使えない不便な現状を理解しげんなりとした顔になる。
 ふと手を見ると羽兎の解体の際に血まみれになった手が目に映る。

「手を洗いたいけど……水がないか……」

 僕は血まみれの手を見ながら溜息をつく。
 水が欲しければ雨水を貯めるか、川へ汲みに行く。
 魔法を使える人から見れば「非効率なことしてるな」と笑われるかもしれないけど、魔法がなければ当然の事だと思う。
 それだけこの世界は魔法に依存していて、魔法を使えないとされていた第3世代もその恩恵にあやかっていたのだ。

 僕は掌に土をつけてゴシゴシと擦る。
 ある程度血が取れたところで『水』と念じながら魔袋に手を突っ込んでみるが、指先に何かが触れる事はなく魔袋の中に飲むものが無い事を教えてくれた。

「はぁっ……水がないって分かったら急に喉が乾いてきたよ……」

 急激に喉が乾いてきた僕は再び溜息をついて途方に暮れる。
 そこでふと師匠が託してくれた魔導書を思い出す。
 魔袋の中から魔導書を取り出すと『水の確保の方法』と念じながら本を開く。

 すると予想した通り、本には水の確保方法がびっしりと書かれていた。

 火を使い湯気から水を集める方法、生えている草木から水源を探す方法などの中から『水竹を切る』という項目を見つけた。魔導書には丁寧に『水竹』の姿絵が描かれており、歩く途中で何度か見かけた事を思い出す。
 水竹は木の中ではかなり細い幹をしており、その中の空洞部分に水を貯め込む正接があるとの事だ。
 魔法が広まった現代では価値が薄まってしまったが、魔法がない時代では水の確保の方法として常識であったとも補足で書いてあった。

 リョージは早速水竹を探そうと顔を上げる。
 そして呆気ないほど簡単にに水竹を見つける事ができた。

「よくよく思い出せば森の中って水竹だらけじゃん。水魔法のおかげで必要じゃなくなったから、生え放題になってるのかなぁ」

 僕は腰から下げている刀を抜き、目の前にある水竹を軽く切る。刀を腰に巻いた布に引っ掛けてぶら下げているのは、師匠が刀ならこう身に着けるべきだと譲らなかったからだ。
 本当は背に背負うような形で身につけたかったのだが、師匠に「邪道だ!」と糾弾されたので諦める事になった。

 空を切るように振り抜かれた刀は、水竹の硬い外皮を切り裂き半分ほど切り裂いていた。
 すると断面から溢れ出るように水が吹き出してくる。
 僕は咄嗟に血がついた手を洗い流すが、直に溢れ出ていた水の勢いが弱まり、そのまま出てこなくなってしまった。
 なんとなく納得が行かなかった僕は、水竹の半分だけ切れていた部分を切り飛ばす。
 そして断面を覗き込むと水竹の中にはたっぷりと水が溜まっていた。

「水竹の上の部分を切れば、それより下の水は出てこないのか……まぁ普通に考えればそうだよな」

 当然の事を1人で呟いた僕は、隣に生えていた水竹の下の部分を同じようにもう一度切った。
 すると先程と同じように水が吹き出してきたので、素早く手を洗い口を近づけようとする。

 しかし今度は極端に下を切ってしまった為、よつん這いの様な体制にならなければ口を近づける事ができなかった。 

「あっ、これは下過ぎた。はぁ、少しは考えろよ僕」

 何も考えずに水竹を切った自分に文句を言いつつ、四つん這いになって喉を潤す。満足いくまで水竹から溢れる水を飲んだ僕は、近くにあった手頃な岩に腰を下ろす。

「これで水の問題は解決したけど、今度は火をどうするかだなぁ」

 僕はそう呟きながら『火を起こすもの』と念じて魔袋に手を突っ込む。
 すると指先に固いものが2つ触れたのが分かる。
(どうせ何も入っていない)と半ば諦めていた僕は慌てて何かを掴んで手を引き抜く。

「これは……石となんだ……?」

 出てきたのは握り拳程の黒い石と握りやすそうな形をした金物だ。いや、これでどうやって火を起こせと? 僕は頭の上にはてなマークを浮かべながら『石を使って火を起こす方法』と念じながら魔導書を開く。

 すると『火打ち石を使った火の起こし方』というタイトルの内容だけが本に書かれていた。『水の確保の方法』と念じたときは色々な事が書かれていたが、今回はピンポイントだった為か1つの項目しか書かれていない。

「えっと、この黒い石に金物を押し付けるように当てて、そのまま勢いよく擦ればいいんだな」
 僕は内容を確認してすぐに試してみる。

 激しく擦れあった石と金物は『ジャッ』っと硬い者同士が擦れたときに出す音を出して、激しく火花を撒き散らした。

「おおっ! 凄い! これで火が起こせる!」

 僕は早速枯れ木を集め、その上で火打ち石を擦り火花を落としていく。

「全然燃えない……」

 どれだけ火花を落としても枯木が燃える気配はなく、流石に僕もやり方が違うと気付いた。
 もう一度魔導書を開いて隅々まで確認すると、最初に火種という燃えやすい素材に火をつけてそこから枯れ葉、枯れ木と少しずつ火を大きくするようだ。 
 火種になるもので手に入りそうなものはシュロという木の皮であったが、残念ながら近くで見つける事はできず火を起こす事は諦めた。

 幸いにも魔袋に『食べ物』と念じながら手を突っ込むと、保存が効く干し肉がいくつか出てきた為、それを食べて今日は休む事にした。

 僕が眠りにつこうとすると、不意に近くをフヨフヨと浮いている赤い光が目に入る。
 なんとなく赤い光に「おやすみなさい」と声をかけて僕は眠りについた。

 結局僕は師匠の元を離れて4日間、赤い光の後を追って森を歩き続けた。
 途中で偶然にもシュロの木を見つける事もでき、火起こしの手段も手に入れていた僕は、4日間森を歩き続けた割には元気な状態を維持していた。
 3日目には狼の群れに襲われるアクシデントもあったが、エンチャントで脚力を強化して木の上を飛び回り難を逃れている。

 そして僕は今森の終わりに立っている。
 目の前には雄大な平原と巨大な湖が広がり、湖の奥には荒々しい山脈がそびえ立っていた。山脈の終わりは見えず、この世界の果てまで続いているのではないかと錯覚する程だ。

「これが……国境の果てエンドラインか、本当に終わりが見えないんだな……」

 エンドラインは『魔法国家アルマ』と『軍国ホルランド』を分ける山脈だ。
 僕のいる『魔法国家アルマ』では様々な伝説やおとぎ話にエンドラインが出てくる。
 誰もが知っていて、それでいてほとんどの人が見る事なく死んでいくのがエンドラインだ。

 僕がここが国境近くの果ての地なのだと考えていると、絶景に飲まれている僕を無視するように赤い光はフヨフヨと移動を再開する。
 少しだけ不満げな目を赤い光に向ける僕だが、大人しく赤い光の後ろをついていく。そして10分程歩くと小さな小屋が見えてくきて、小屋の一歩手前まで近づいたところで役目を終えた赤い光が四散しながら消えていった。

「ここが……新たな拠点か……」

 師匠の小屋は比較的湖の近くに建てられていた。
 背後には湖を跨いでエンドラインが広がり、正面には平原と、遠くに僕と師匠が過ごした森が見える。
 僕はゆっくりと生きを吸いながら師匠の言葉を思い出す。
「第3世代を守り、師匠ののぞみを叶える……ここから全てを始めるんだ!」
 力強く言葉を紡ぎ、僕は師匠の小屋の扉に手をかける。
 そして今こそが、『中立国家エデン』誕生の種がこの地に落ちた瞬間であった。
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