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【第一章】 新生活編
【第二話】 最初の野宿
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日が昇るよりも早く村を出た僕は、とにかく西に向かって歩き続けた。
このまま道沿いに西に向かえば、村から一番近い街に到着するはずだ。
一番近いと言っても、歩いて二日も掛かる距離である。
今夜は、どこかで野宿をすることになるだろう。
持っている荷物は少なかった。
野宿に必要な道具セットと、村周辺の地図、護身用の短剣、わずかな保存食に、父さんからもらった現金三万デナリオン。
一番近い街まで行くくらいならば、これくらいの荷物で何とかなるはずだった。
一人で街まで行くのは初めてである。
でも、何度か父さんと一緒に街まで行ったことがあるので、野宿は慣れているし、火の起こし方も分かっている。
これといって、心配は無い旅路だった。
強いて言うなら、今後の生活について不安はある。
街に行けば何かしらの仕事はあるだろうが、【宝石使い】のスキルがどんな能力なのか分からないうちは、キツい肉体労働をしなければならないかもしれないのだ。
幼い時から畑仕事をしてきた僕だが、体力に自信がある訳ではない。
村の大人の方が何倍も力があるし、僕よりも体力に自信がある若者も沢山いた。
「とにかく、街まで行かないと何も始まらないな」
結局はそんな結論に至り、ひたすら歩き続ける。
◇◇◇
夕方になった。
そろそろ野宿の準備をしようと、道沿いにあった大木の下で焚き火を起こした。
持っていた干し肉を何等分かに切り分けて、一枚だけあぶる。
お腹を満たすには全く足りなかったが、仕方がない。
僕は我慢して、木にもたれかかって目を閉じた。
この辺りは危険なモンスターは居ないし、夜行性の獣が居たとしても、火を焚いていれば近寄ってこないはずだ。
「おい、君」
ウトウトしていると、不意に声を掛けられた。
「えっ、えっ」
驚いて目を開けると、数人の男が僕を囲っていた。
一瞬、その男達が盗賊だと思い、傍にある短剣に手を伸ばそうとしたが、彼らは武器を持っていないことに気付いた。
「驚かしてすまない! 襲ったりしないから落ち着いてくれないか」
そう言ったのは、僕に最初に声を掛けてきた男だった。
他にも五人の男がいたが、どの人も身なりはしっかりしている。
改めて見ると、とても盗賊には見えなかった。
「あ、あなた達は・・・・・・?」
おそるおそる尋ねると、男は笑顔になった。
「我々は行商人で、私の名はワトという。ベルテ村に向かう道中なのだが、野宿が出来そうな場所が見付からなくてね。やっと見付けたと思ったら、君が居たというわけなんだ」
ベルテ村とは、僕が住んでいた村の名前である。
時々、彼らのような商人が村で商いに来る事がある。
だからワトの言っていることは本当なのだろう。
「君さえ良ければ、一緒に火に当たらせて貰えないかな?」
ワトは人が良さそうに言った。
「はい、かまわないですよ」
このまま道沿いに西に向かえば、村から一番近い街に到着するはずだ。
一番近いと言っても、歩いて二日も掛かる距離である。
今夜は、どこかで野宿をすることになるだろう。
持っている荷物は少なかった。
野宿に必要な道具セットと、村周辺の地図、護身用の短剣、わずかな保存食に、父さんからもらった現金三万デナリオン。
一番近い街まで行くくらいならば、これくらいの荷物で何とかなるはずだった。
一人で街まで行くのは初めてである。
でも、何度か父さんと一緒に街まで行ったことがあるので、野宿は慣れているし、火の起こし方も分かっている。
これといって、心配は無い旅路だった。
強いて言うなら、今後の生活について不安はある。
街に行けば何かしらの仕事はあるだろうが、【宝石使い】のスキルがどんな能力なのか分からないうちは、キツい肉体労働をしなければならないかもしれないのだ。
幼い時から畑仕事をしてきた僕だが、体力に自信がある訳ではない。
村の大人の方が何倍も力があるし、僕よりも体力に自信がある若者も沢山いた。
「とにかく、街まで行かないと何も始まらないな」
結局はそんな結論に至り、ひたすら歩き続ける。
◇◇◇
夕方になった。
そろそろ野宿の準備をしようと、道沿いにあった大木の下で焚き火を起こした。
持っていた干し肉を何等分かに切り分けて、一枚だけあぶる。
お腹を満たすには全く足りなかったが、仕方がない。
僕は我慢して、木にもたれかかって目を閉じた。
この辺りは危険なモンスターは居ないし、夜行性の獣が居たとしても、火を焚いていれば近寄ってこないはずだ。
「おい、君」
ウトウトしていると、不意に声を掛けられた。
「えっ、えっ」
驚いて目を開けると、数人の男が僕を囲っていた。
一瞬、その男達が盗賊だと思い、傍にある短剣に手を伸ばそうとしたが、彼らは武器を持っていないことに気付いた。
「驚かしてすまない! 襲ったりしないから落ち着いてくれないか」
そう言ったのは、僕に最初に声を掛けてきた男だった。
他にも五人の男がいたが、どの人も身なりはしっかりしている。
改めて見ると、とても盗賊には見えなかった。
「あ、あなた達は・・・・・・?」
おそるおそる尋ねると、男は笑顔になった。
「我々は行商人で、私の名はワトという。ベルテ村に向かう道中なのだが、野宿が出来そうな場所が見付からなくてね。やっと見付けたと思ったら、君が居たというわけなんだ」
ベルテ村とは、僕が住んでいた村の名前である。
時々、彼らのような商人が村で商いに来る事がある。
だからワトの言っていることは本当なのだろう。
「君さえ良ければ、一緒に火に当たらせて貰えないかな?」
ワトは人が良さそうに言った。
「はい、かまわないですよ」
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