一匹狼の宝石採集記 〜異世界に召喚されたけど、授かったスキルのせいでパーティが組めません。仕方ないので、のんびり宝石でも集めます。〜

【第一章】新生活編

【第一話】異世界召喚

　目が覚めると、僕は魔方陣の上にいた。
　
　
　あたりは暗く、魔方陣だけが淡く輝いている。
　
　
「こ、ここは･･････？」
　
　
　状況が飲み込めずに困惑していると、不意に近くで火が灯された。
　
　
　見たところ、ここは教会か神殿のような建物のようだ。
　
　
　僕は、その祭壇の上にいた。
　
　
　そして今更ながら、僕の他にも倒れている人がいる事に気付く。
　
　
　ざっと数えたら十数人だった。
　知った顔はいない。
　
　
「う、う～ん･･････」
「何なんだよ･･････」
「･･････こんなにも食べられないよ～」
　
　
　目を覚まして困惑する人、機嫌を損ねる人、気持ち良さそうに寝続ける人。
　反応は、まちまちだった。
　
　
「よくぞ参られた、召喚者たち」
　
　
　祭壇の下の方から男性の声がしたので、僕は視線を下ろした。
　
　
　神官。
　見るからにそういった服装の老人だった。
　
　
「そなたたちは、異世界よりこの世界に召喚されたのだ」
　
　
「はっ？　何を言ってるんだ？」
「召喚だと、なんの事だ」
　
　
　祭壇にいたほとんどの人が、状況を読めないようだった。
　
　
　しかし、僕は何となく察していた。
　
　
「異世界、召喚･･････」
　
　
　無意識のうちに、僕は言葉に出していた。
　
　
「おぉ、どうやら知識者がいるようだ」
　
　
　神官の老人が言った。
　
　
　異世界小説では、もはやテンプレである。
　
　
　それにしても、まさかそれが現実に起こるとは。
　
　
　同じくテンプレ通りなら、この後スキルの内容を確認し、その結果次第で勇者になるか、そうでないのかが決まる。
　
　
「ここはヴァンドール王国の王都。魔王軍の脅威から人類を救うため、そなたたちは召喚されたのだ」
　
　
　やはり、異世界の設定もテンプレ通り。
　
　
「わ、訳わかんねぇよ！」
「家に･･････、家に返してよ！」
「なんの冗談だ、このジジイ！」
　
　
　僕とは裏腹に、他の人たちは激しく怒っていた。
　
　
　どうやら異世界小説のテンプレ知識を持っているのは僕だけのようだ。
　
　
「静まるのです、そなたたちの心配は承知している。無事に魔王を討伐することが出来たら、元いた世界に帰れるであろう」
　
　
　神官の老人の後ろには数人が控えていて、その一人が石版のような物を差し出した。
　
　
「これは【スキルの石版】。異世界からやって来た者が触れると、その人がもつ【スキル】を投影するアイテムだ」
　
　
　老人はそう説明したが、やはり僕以外の人達は理解していないようだった。
　
　
「そんな得体の知れない物に触れるか！」
「そうだそうだ！　とにかく家に帰せ！」
　
　
　このままでは、パニックに陥った人達が暴れかねない。
　
　
　この中で、僕が一番状況に理解があるはずだ。
　
　
　だったら、僕がこの場を抑えるべきだろう。
　
　
　
　
　
「す、すみません･･････、その石版、僕から触ります、けど･･････」