一匹狼の宝石採集記 〜異世界に召喚されたけど、授かったスキルのせいでパーティが組めません。仕方ないので、のんびり宝石でも集めます。〜

尾関 天魁星

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【第一章】新生活編

【第三話】王都追放

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 近年の異世界小説には、テンプレの展開が存在する。
 
 
 最強のスキルを手に入れて無双するか、逆に不遇スキルを手に入れてしまい追放されるかのどちらかだ。
 
 
 そして、僕の身に起こったのは、後者だった。
 
 
 パーティが組めなくなるだけという、デメリットしかないスキル、【一匹狼】。
 
 
「どうしましょう、大主教様。これでは・・・・・・」
 
 
 先程から、神官たちがザワついていた。
 
 
「むぅ・・・・・・、これでは魔王軍との戦いでは使えないだろう」
 
 
 使えない。
 
 
 役に立たないということか。
 
 
「こんなスキルを持つ召喚者を召喚してしまったと国王に知られれば、私の立場が危うくなる。ここは仕方ない・・・・・・」
 
 
「あ、あのぅ・・・・・・」
 
 
 この至近距離だ。
 話している内容は、すべて筒抜けである。
 
 
「ユキカ殿、こちらへ」
 
 
 神官の一人が、前に出て言った。
 
 
 その神官に促されるままに別室へ入り、簡素な椅子に座らされた。
 
 
「ユキカ殿には申し訳ないが、あなたにはこの王都から離れてもらいます」
 
 
「・・・・・・」
 
 
 やはりね。
 
 
 テンプレ追放パターンだ。
 
 
「王都から離れるって、つまりは追放ってことですよね・・・・・・?」
 
 
 今さら言葉を誤魔化されても気分が悪い。
 正直に言ってくれた方が気が楽だった。
 
 
「・・・・・・ユキカ殿に罪はありません。どうか、息災でありますよう」
 
 
 結局、神官はそれ以上のことを言おうとはしなかった。
 
 
「これをお持ち下さい。わずかですが、路銀です」
 
 
 そう言われて手渡されたのは、ひと掴みほどの大きさの布袋だった。
 
 
 紐をほどいてみると、中には硬貨が入っていた。
 
 
「十万デナリオンが入っています」
 
 
 この世界の物価や金銭の価値はまだ分からないから、十万デナリオンで何が出来るのか分からない。
 
 
 僕は仕方なく、その袋をポケットに押し込んだ。
 
 
「ひとつ、聞いても良いですか?」
 
 
「はい、私に分かることでしたら」
 
 
「もしあの時、強くて優秀なスキルを手に入れていたら、どうなっていたのですか?」
 
 
「王国から【勇者】や【英雄】などの称号を与えられ、何不自由のない生活が送れるときいております」
 
 
 やはり僕は、追放される方のテンプレだったようだ。
 
 
 今のところ、【一匹狼】の能力で活用出来そうな要素は無い。
 
 
 かと言って、すぐに元の世界に帰れるものでもないらしい。
 
 
「詰んだ・・・・・・」
 
 
 僕は小さくつぶやいた。
 
 
 こうして、僕は追放されることになった。
 
 
 価値も分からない十万デナリオンだけを持ち、神殿から出される。
 
 
 神官の言う通り、ここは王国の王都らしく、巨大な王宮はもちろん、通りにも立派な建物が並んでいた。
 
 
 
 
 
「さて・・・・・・、これからどうすれば・・・・・・」
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