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獣王国ヴァイス編
鑑定魔法~ギフト編~
しおりを挟む「それで、次はどうしますか? ギフトの鑑定か、加護の鑑定か……」
「ギフトにしよう。加護の方は多分、俺と同じだし」
「獣王様と同じ……?」
「うん。俺にもあるんだよ、獣神様の加護が」
あの時の状況を考えれば、俺とアドルフに与えられたのは獣神様の加護だろう。それは予想していたが……獣王様も加護を持っていたのか。
「ちなみに、ギフトも持ってる。個人的には気に入ってるんだけど、下手すれば誰かを巻き込んじゃうから、味方が近くにいる時はなかなか使えなくて――」
「アルベルト。……わざわざ他人に、自分の切り札を明かすな。何処から情報が漏れるかも分からん」
と、リアムが獣王様の言葉を遮った。……そう言いながら俺を睨むあたり、俺が情報を漏らすのではないかと疑っているようだ。
「えー? レイモンドは他人じゃなくて、同胞なんだけどなー」
「……今日会ったばかりの他人だろう。警戒心を持て」
「でも、レイモンドなら大丈夫だろ。もし俺のギフトのことを知ったとしても、外部に広めたりしないと思うぞ」
「……その根拠は?」
「何でか分からねーけど、そいつのことは信用できると思ってる」
「……ちっ! これが貴様のスキルの力か。我らの王まで惑わすとは! あのアドルフが大人しく言うことを聞いている時点で、おかしいと思っていたが……!」
そんな、親の仇かってぐらい睨まないで欲しい。このスキルは、俺が自分の意思で使っている物ではない。俺自身も、誰にどれ程の影響が出ているのかが、分かっていない状態だ。
「スキル自体は信用できる物だと分かった。……ジーナさんが鑑定した結果、洗脳などという言葉は出なかったのだな?」
「あぁ。それは間違いないよ」
「では、無意識に獣人を惑わしているのか! 洗脳よりもたちが悪い……!」
言われてみれば、確かにそうだな。これは洗脳だと疑われてもおかしくないスキルだし、俺自身がコントロールできない物だから、たちが悪いと言われても仕方ない。
今さらだが、罪悪感を持った。無意識に発動され、制御もできないとはいえ、獣人達の感情をねじ曲げていることになるのか……
「リアム。その話は後にしようぜ。今は、レイモンドとアドルフのギフトと加護の鑑定を優先させよう。……というかアドルフはともかく、人間であるレイモンドに獣神様の加護が与えられていたら、それだけで信用できるんじゃないか? 獣人を生み出した神様が、わざわざ違う種族に加護を与えるって……余程のことだと思うぞ?」
「ぐ……それは……!」
獣王様の言葉にリアムは黙り込み、第一旅団の幹部達はしきりに頷いて同意した。
「獣神様は……そもそも神は、簡単にギフトや加護を与えてくれる存在ではないじゃろう」
「そうですね。ある文献には『神が地上に住む者達に干渉することは、ごく稀である』と書かれています。『神が地上に対して頻繁に干渉すれば、その代償がいつか何らかの形で現れる』とも書かれていました。神はその事実をよく理解しているため、自分から動くことは滅多に無いとか……」
ロッコに続いて、エヴァンがそう言った。……バタフライ効果のようなものだろうか?
「……で、次はギフトを鑑定すればいいのかい?」
「おう。さっそく頼むぜ、ジーナ。最初はレイモンドで、次にアドルフの方も鑑定してくれ」
「よろしくお願いします」
先程と同様にジーナが鑑定魔法を使い、その結果を紙に書き出す。……書き終わると、その紙を俺に渡してくれた。礼を言って紙を受け取り、文面を見る。
――魂の融合。……獣人族のアドルフと共有する力であり、獣神デファンスより与えられたギフト。
ギフトの発動条件は、使用者とアドルフが同じ場所にいる時。何らかの強固な意志を籠めて、共にギフト名を叫ぶこと。
発動後、使用者の魂とアドルフの魂が融合され、互いの能力を共有することが可能となる。
共有される能力は、境界を越える親愛、補助魔法、魔力量、真実を得る者、獣化、アドルフの身体能力。
また、オオカミ族の身体的特徴、互いの気質、スキルの欠点も共有される。
アドルフが人狼化を使用した際、使用者はその暴走を制御する役目を担う。その制御に失敗した場合は使用者も人狼となり、アドルフと共に暴走してしまう。
使用者には荒れ狂う本能を制する、強靭な理性が求められる。
ただし。使用者とアドルフの成長次第では、どちらも暴走せずに、人狼化を維持できる可能性が高まる。
なお。発動解除後は、24時間使用不可能となる。
……その内容を読み終わった時、俺はまずアドルフにこう聞いた。
「アドルフ。お前のスキルの名前って、真実を得る者か?」
「……何で、それを?」
「やはりそうか……ここに書いてあったんだ」
「見せてくれ」
紙を渡すと、アドルフは目を皿のようにしてそれを読み始めた。……やがて、顔を上げる。真顔だった。
「お前、ギフトを使うと獣化もできるのか」
「そのようだ。まだ試していないから、どうなるかは分からないが」
「本気でオオカミ族になる気はねぇか?」
「馬鹿か。そもそも、なれないだろ」
「いや、まだ分からないぜ。一回死んで転生すれば、オオカミ族に生まれ変わるかも」
残念。俺はもう転生済みだ。……ところで、一回死んで転生って、まさか俺を殺す気か? やめろよ。まぁ、冗談だと思うが。
「そんなことよりも、その紙を返せ。彼らにも内容を説明しなければ」
「おっと、悪い」
アドルフから紙を受け取り、先程から興味津々で俺達の会話を聞いていた獣王様達に、ギフトのことを話した。
なお、リアムは除く。彼はしかめっ面で、俺のことを睨み続けていた。
そして、俺の説明を聞いた獣王様が一言。
「――何だそれ最強か」
一言でまとめ過ぎです、獣王様。
「いや、これ……戦力過多じゃねーの?」
「お前にだけは言われたくねぇな。アルのギフトだって戦力過多だ」
「いやいや、お前らには負けるよ。これ、要はアドルフが二人になるんだろ? アドルフ本人と、お前の能力を持つレイモンドで、二人。……最強コンビ結成か?」
「……確かに強力な力ですが、レイモンドへの負担は大きい」
ヴェーラが静かにそう言うと、アドルフが表情を歪めた。
「……あぁ。その通りだな。俺が人狼化した後はレイモンドがその暴走を止めることになるが、最終的に本人が気絶しちまう程の負担が掛かるからな」
「だから、それはお前のせいでは――」
「分かってる。……分かってはいるが、やっぱりどうしても罪悪感が残るんだよ……」
「…………」
こうなると、俺が下手に慰めの言葉を掛けるわけにもいかないな……どうしよう。
俺とアドルフが揃って沈黙していた時、エヴァンが恐る恐るといった様子で口を開いた。
「え、えっと……とりあえず、アドルフの方も鑑定してみませんか? 何か、レイモンドの負担を少しでも軽くする手掛かりがあるかもしれません。先程、二人の成長次第で、暴走せずに人狼化できる可能性が高まるとの説明もありましたし……!」
「そうだな……少し見てみるか。ありがとう、エヴァン」
「……ありがとな」
二人でエヴァンの気遣いに礼を言い、ジーナに頼んでアドルフのギフトを鑑定してもらった。……その結果は、大体が俺を鑑定した時と同じだった。しかし、最後の文面に変化がある。
――使用者が人狼化した際、レイモンド・ベイリーはその暴走を制御する役目を担う。その制御に失敗した場合は彼も人狼となり、使用者と共に暴走してしまう。
人狼化の時間が長引く、もしくは血の匂いに溺れ過ぎると、それに比例して人狼の本能が引き出され、レイモンド・ベイリーへの負担も増える。
ただし。使用者とレイモンド・ベイリーの成長次第では、どちらも暴走せずに人狼化を維持できる可能性が高まる。
それは、ギフトを発動せずに人狼化した場合の制御にも役立つだろう――
……と、書かれていたのだ。
「やっぱり俺のせいだったか……あの時、俺は血の匂いに興奮して調子に乗っていた。それがレイへの負担を増やしたんだ」
アドルフの耳と尻尾が下がった。エヴァンは慌てふためいた。自分が変に希望を持たせたから、なんて思ってるのかもな。
すると、ずっと黙っていたミュースが口を開いた。
「でも……アドルフが、レイモンドと共に成長すれば……その負担も、軽くなるかもしれない。……エヴァンも、さっきそう言ってた。それに、ギフトを発動せずに、人狼化した時の制御にも、役立つと……ちゃんと、手掛かりがあった」
「……そう、だな――手掛かりはあった。あとは成長の過程で、レイに負担を掛けずに制御する方法を見つければいい」
耳と尻尾が元に戻る。アドルフが元気を取り戻してくれた。……ミュースの言葉のおかげで。
彼女の言葉一つで、彼は立ち直った。ミュースは凄いな……俺は心友が落ち込んでいても、どう慰めればいいのか分からない。
下手に言葉を重ねて、さらに罪悪感を持たせたら本末転倒だ。そう考えてしまい、なかなか言葉が出てこなかった。
前世でも、そうだったな。落ち込む妻を前にして、俺は黙って寄り添うことしかできなかった。
それだけで充分。あなたが側にいると落ち着く……妻はそう言ってくれたが、俺は申し訳なく思った。
今の俺も、アドルフに対して申し訳なく思っている。
「ギフトの鑑定は済んだし、次は加護の鑑定だろ?」
「はいはい……今やるよ」
切り替えが早いアドルフは、ジーナに加護の鑑定をするよう促している。……俺も、その切り替えの早さを見習うとしよう。
さて。加護の内容は何だ?
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