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彼の事故について4
「これからあなたには、俺の罪を聞いてもらいたいと思う」
「罪……?」
唐突な話に何を言われているのかよくわからなかった。
「勇者召喚をせねばならない状況になった罪の話だ」
冗談か何かだと思いオーウェンさんの顔をきちんと見ると真剣な表情をしている。
本気の話なのだと思った。
「勇者召喚の魔法は、オーウェンさんが生まれる前からあると聞いています。
今まで幾度となく危機がおとずれると勇者を召喚していたはずで……」
だからオーウェンさんは勇者召喚に直接かかわっていない。
関わっていたとしたら、元天才なんて呼ばれていない。
「その、悪習をなくしたかった。
というのが研究の発端だった」
この人は自分の辛いことほど淡々というのだと思った。
これは自分が元天才と言われている説明をするときと同じだった。
もういいです!!と言ってしまいたかったのに上手く言葉が紡げない。
彼にはそういう迫力があった。
「この世界に、魔獣と呼ばれる魔力を多く含む通常の動物とは違う生き物がいることは知っているよね」
「はい」
「この世界では魔獣の数を厳密に管理をしている。
増やしすぎないように、減らしすぎないように、そのために冒険者ギルドがある」
討伐依頼を一元化して数を調整しているという話は以前聞いたことがあった。
「何故そこまで管理しなければならないかというと、魔獣の集団暴走の頻度を極力減らすためだ」
「すたんぴーど?」
聞きなれない言葉にオウム返しをする。
「魔獣がある日突然どこからともなくわいてあちこちを食い荒らしながら暴走する現象だ」
オーウェンさんはそう言った後「勇者はそれを抑え込むために呼ばれる」と言った。
数が多くて狂暴すぎてこの世界の魔法使いや軍だけではどうにもならず、何か役に立つスキルで魔獣を倒した利するらしい。
図書館のスキルにはどう考えても向かない仕事だと思った。
「多くの民を救うためとはいえ、他の世界から人をさらって来るのは間違っている。
そう思って研究を進めた。
なるべく多くの場所をいっぺんに、そういう理論を作ろうとした。
自分たちだけで魔獣の集団暴走を鎮静化する方法をと考えた」
オーウェンさんは悲しそうに笑った。
「そこで思いついたのは、サカキの世界で言うところの気象兵器というやつだった」
陰謀論というレベルで開発をしている国があるとかないとか、そういう技術だ。
「魔獣は集団で暴走する。
山にいるときにそこで雨が止まず地すべりでも起きて魔獣が全部巻き込まれたらいいと思った。
魔獣が町から町へ行く途中全く雨が降らず干上がってしまえばいいと思った。」
これは複製した資料だよ。
複製した資料は日本語で書かれていた。
それは俺への配慮というより、他の人間に読まれないためのものだろうと思った。
「多分、試したんですよね小規模で……」
図書館の時と同じだ。
そういう事が分かる位に俺はこの人のことをもう知っている。
「ああ……。」
固い声だ。
結果は聞かなくても分かる。
二人で確認するみたいに気象関係や地質の本色々な本を読んだから。
世界は繋がっているという事を知っているから。
ラニーニャって変な名前だなと思いながら遠い海のことが日本に関係していることを知っている。
「最初はキチンと雨を降らせられてよかったと思った。
けれど、土砂崩れが起きて巻き込まれた川の下流地域でよくないことがいくつかおこった」
それを調査していくうち、この技術は使うべきじゃないものだと思った。
世界を滅茶苦茶にしてしまう技術を考えてしまったと思った。
戦争に使われたら大変なことになると。
そういう戦争に使える技術が欲しいと思っている人間が沢山いることも貴族だったから知っていた。
このままだと誰かに知られてしまうと思った。
だから研究成果ごと全てを燃やした。
何をしようとしているかうっすらと気が付いている人間はいたかもしれないけれど、同じことを資料なしでするのは今すぐには、俺以外ではできないと知っていた。
そういう意味では俺は天才だったのだと思う。
そう言われてようやく、何故彼が事故以降何もかもを放り出してしまったのかを悟った。
彼は自分自身で何もかもを放り出すために事故を起こしたのだ。
事故は事故ではなかった。
「罪……?」
唐突な話に何を言われているのかよくわからなかった。
「勇者召喚をせねばならない状況になった罪の話だ」
冗談か何かだと思いオーウェンさんの顔をきちんと見ると真剣な表情をしている。
本気の話なのだと思った。
「勇者召喚の魔法は、オーウェンさんが生まれる前からあると聞いています。
今まで幾度となく危機がおとずれると勇者を召喚していたはずで……」
だからオーウェンさんは勇者召喚に直接かかわっていない。
関わっていたとしたら、元天才なんて呼ばれていない。
「その、悪習をなくしたかった。
というのが研究の発端だった」
この人は自分の辛いことほど淡々というのだと思った。
これは自分が元天才と言われている説明をするときと同じだった。
もういいです!!と言ってしまいたかったのに上手く言葉が紡げない。
彼にはそういう迫力があった。
「この世界に、魔獣と呼ばれる魔力を多く含む通常の動物とは違う生き物がいることは知っているよね」
「はい」
「この世界では魔獣の数を厳密に管理をしている。
増やしすぎないように、減らしすぎないように、そのために冒険者ギルドがある」
討伐依頼を一元化して数を調整しているという話は以前聞いたことがあった。
「何故そこまで管理しなければならないかというと、魔獣の集団暴走の頻度を極力減らすためだ」
「すたんぴーど?」
聞きなれない言葉にオウム返しをする。
「魔獣がある日突然どこからともなくわいてあちこちを食い荒らしながら暴走する現象だ」
オーウェンさんはそう言った後「勇者はそれを抑え込むために呼ばれる」と言った。
数が多くて狂暴すぎてこの世界の魔法使いや軍だけではどうにもならず、何か役に立つスキルで魔獣を倒した利するらしい。
図書館のスキルにはどう考えても向かない仕事だと思った。
「多くの民を救うためとはいえ、他の世界から人をさらって来るのは間違っている。
そう思って研究を進めた。
なるべく多くの場所をいっぺんに、そういう理論を作ろうとした。
自分たちだけで魔獣の集団暴走を鎮静化する方法をと考えた」
オーウェンさんは悲しそうに笑った。
「そこで思いついたのは、サカキの世界で言うところの気象兵器というやつだった」
陰謀論というレベルで開発をしている国があるとかないとか、そういう技術だ。
「魔獣は集団で暴走する。
山にいるときにそこで雨が止まず地すべりでも起きて魔獣が全部巻き込まれたらいいと思った。
魔獣が町から町へ行く途中全く雨が降らず干上がってしまえばいいと思った。」
これは複製した資料だよ。
複製した資料は日本語で書かれていた。
それは俺への配慮というより、他の人間に読まれないためのものだろうと思った。
「多分、試したんですよね小規模で……」
図書館の時と同じだ。
そういう事が分かる位に俺はこの人のことをもう知っている。
「ああ……。」
固い声だ。
結果は聞かなくても分かる。
二人で確認するみたいに気象関係や地質の本色々な本を読んだから。
世界は繋がっているという事を知っているから。
ラニーニャって変な名前だなと思いながら遠い海のことが日本に関係していることを知っている。
「最初はキチンと雨を降らせられてよかったと思った。
けれど、土砂崩れが起きて巻き込まれた川の下流地域でよくないことがいくつかおこった」
それを調査していくうち、この技術は使うべきじゃないものだと思った。
世界を滅茶苦茶にしてしまう技術を考えてしまったと思った。
戦争に使われたら大変なことになると。
そういう戦争に使える技術が欲しいと思っている人間が沢山いることも貴族だったから知っていた。
このままだと誰かに知られてしまうと思った。
だから研究成果ごと全てを燃やした。
何をしようとしているかうっすらと気が付いている人間はいたかもしれないけれど、同じことを資料なしでするのは今すぐには、俺以外ではできないと知っていた。
そういう意味では俺は天才だったのだと思う。
そう言われてようやく、何故彼が事故以降何もかもを放り出してしまったのかを悟った。
彼は自分自身で何もかもを放り出すために事故を起こしたのだ。
事故は事故ではなかった。
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