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彼の罪
「駄目ですよ、この兵器は……」
この人が大切だと思った。
この優しい人が。
勇者召喚が仕方のない事だとは思えないけれど、これは駄目だ。
これを発表してあちこちで使ったら、多分自然の流れというものがめちゃくちゃになる。
中学校の時に習った偏西風から何から全て繋がって気候というものは作られているのだから。
それに、こういう兵器が使えたとして、ある程度の自然の変化を皆で受け入れられるとして、それは世界が一つになっている時だけだ。
勇者召喚は世界を代表してこの国で行われたわけではない。
この国がこの国の意思で行った。
彼が天才で気象兵器の影響を読めたとして、それはどこか全員が納得した訳ではない場所に悪影響を押し付けるのだ。
彼は悲しそうな顔をしていた。でも安心したような表情だった。
「君に会えてよかった」
この世界の人とは違う価値観で、これの影響を理解して話せるとは思ってなかった。
他の研究者の裏付けを知ることも。
「そうだ! この資料!!」
俺のために危険を冒してくれたことが分かる。
この資料は処分すべきものだ。
「通常の状態で燃やしたものを元に戻す技術がこの世界にはある」
だから、絶対に復元できないように魔力暴走もつけて前は研究施設を爆破した。
そう言われて俺はひゅっと息を飲む。
「これは君の図書館に保管しておいてくれないかい?」
オーウェンさんは言った。
「それでいいんですか?」
その言葉にはいろいろな意味が込められていた。
俺が他の人に誤って見せてしまうのではないか、誰かに脅されて通してしまうのではないか。
ある程度の言葉の日本語との対応表はもうオーウェンさんが作ってくれた。
「そこが一番、俺が安心なんだ」
「それに魔法の部分はサカキが理解できないだろうから書いていない。これは未完成の資料だから」
オーウェンさんはそう言った。
俺は少し悩んでから「わかりました」と答えた。
俺はスキルを発動すると二人で図書館に入る。
そしてオーウェンさんの資料を外国文学の一番端の少しの隙間に押し込んだ。
オーウェンさんを見る。
日差しが差し込んで図書館は穏やかな雰囲気だった。
「私を信じてくれてありがとう。
罪に付き合ってくれてありがとう」
オーウェンさんはそう言った。
「私は一度逃げてしまったけれど、もうこれ以上勇者召喚の儀が行われないよう他の方法を模索しようと思う。
そう考えられたのはサカキのおかげだ」
オーウェンさんの瞳は甘く蕩けてほどけるように笑みを浮かべる。
「俺の罪ごと愛して欲しい」
それが彼の告白なのだと気が付くのに数秒かかった。
罪なんてないと叫びたかった。
けれど、俺が言ったところで彼の罪悪感は取れないことを知っている。
実際俺たちがこの世界に呼ばれてしまった事実によって、彼にとって罪は確定してしまっている。
答えを言うのにはあまり悩まなかった。
こちらに来てからあまり多くの人に会わなかったからだろうか。
余り男同士だからという事も考えなかった。
この人が大切だと思った。
この優しい人が。
勇者召喚が仕方のない事だとは思えないけれど、これは駄目だ。
これを発表してあちこちで使ったら、多分自然の流れというものがめちゃくちゃになる。
中学校の時に習った偏西風から何から全て繋がって気候というものは作られているのだから。
それに、こういう兵器が使えたとして、ある程度の自然の変化を皆で受け入れられるとして、それは世界が一つになっている時だけだ。
勇者召喚は世界を代表してこの国で行われたわけではない。
この国がこの国の意思で行った。
彼が天才で気象兵器の影響を読めたとして、それはどこか全員が納得した訳ではない場所に悪影響を押し付けるのだ。
彼は悲しそうな顔をしていた。でも安心したような表情だった。
「君に会えてよかった」
この世界の人とは違う価値観で、これの影響を理解して話せるとは思ってなかった。
他の研究者の裏付けを知ることも。
「そうだ! この資料!!」
俺のために危険を冒してくれたことが分かる。
この資料は処分すべきものだ。
「通常の状態で燃やしたものを元に戻す技術がこの世界にはある」
だから、絶対に復元できないように魔力暴走もつけて前は研究施設を爆破した。
そう言われて俺はひゅっと息を飲む。
「これは君の図書館に保管しておいてくれないかい?」
オーウェンさんは言った。
「それでいいんですか?」
その言葉にはいろいろな意味が込められていた。
俺が他の人に誤って見せてしまうのではないか、誰かに脅されて通してしまうのではないか。
ある程度の言葉の日本語との対応表はもうオーウェンさんが作ってくれた。
「そこが一番、俺が安心なんだ」
「それに魔法の部分はサカキが理解できないだろうから書いていない。これは未完成の資料だから」
オーウェンさんはそう言った。
俺は少し悩んでから「わかりました」と答えた。
俺はスキルを発動すると二人で図書館に入る。
そしてオーウェンさんの資料を外国文学の一番端の少しの隙間に押し込んだ。
オーウェンさんを見る。
日差しが差し込んで図書館は穏やかな雰囲気だった。
「私を信じてくれてありがとう。
罪に付き合ってくれてありがとう」
オーウェンさんはそう言った。
「私は一度逃げてしまったけれど、もうこれ以上勇者召喚の儀が行われないよう他の方法を模索しようと思う。
そう考えられたのはサカキのおかげだ」
オーウェンさんの瞳は甘く蕩けてほどけるように笑みを浮かべる。
「俺の罪ごと愛して欲しい」
それが彼の告白なのだと気が付くのに数秒かかった。
罪なんてないと叫びたかった。
けれど、俺が言ったところで彼の罪悪感は取れないことを知っている。
実際俺たちがこの世界に呼ばれてしまった事実によって、彼にとって罪は確定してしまっている。
答えを言うのにはあまり悩まなかった。
こちらに来てからあまり多くの人に会わなかったからだろうか。
余り男同士だからという事も考えなかった。
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