番が見つかったからといって幸せになれるとは限らない

渡辺 佐倉

文字の大きさ
2 / 16

真実の愛らしい

家族とあいさつをすることもできず。
旅のための荷物をまとめることもできず私は普段着のまま獣人国の馬車に押し込まれました。

私を守るというよりも私が逃げないために護衛がきっちりと周りを固めています。

なにが起こったのかほとんど意味がわからないまま馬車は進んでいきます。

いまわかっていることは竜王様の番として私が見いだされたという事と、私は番の義務を果たすために連れ去られているという事だけです。

私は何故そんなことになってしまっているのか馬車に乗っている人に聞こうとしました。
そもそも竜王様は私を見るのも嫌だという感じで別の馬車に乗っています。

わたしと同じ馬車に乗ったのは竜王様の腹心の一人だったようで、獣人には番と呼ばれる魂の片割れとも呼べる存在がいる。
番と出会った獣人はそれを求めてしまう。
だが番をなんらかの事情で失うと狂ってしまうか衰弱してしまう。
だから高貴な者に番が見つかったら城で保護しなければならない。

そして竜王様には愛するものがいるので魂の求めを消し去るために片角を折った。

そう淡々と話してくださった。
私への同情心は全くなく竜王様がいかに、いたわしいかという話ばかり聞かされた。
それにまるで私も竜王様を求めている様な前提で話されてしまってとても困った。

何とかその誤解を解こうとしたが上手くいかなかった。
少なくとも獣人の国にとって私はとても名誉で嬉しい事になっているという前提で全てが進んでいるという事が分かりました。

私は家に残してきてしまった家族が心配でした。
うちの家族は貴族としてはとても珍しい家族の仲がとてもいい家でした。

父と母が悲しんでいないか。姉は、小さな弟は……。と考えるだけで心配でした。

* * *

大きな宮殿に着きました。
来たことは無かったけれどそこが獣人国の宮殿なのだとすぐにわかりました。

意思も何もなく連れてこられた私は宮殿の端にある部屋に押し込まれました。
その部屋はよく言えばシンプル、悪く言えば何も無い部屋でした。

少なくとも人の貴族の常識では大切に扱う人間にあてがう部屋ではありませんでした。
周りに人気ひとけはまるでありませんでした。
あの恨むような目。そしてこの部屋。
この国が私にどういう扱いをしたいのかはすぐに察することが出来ました。

先ほど角を折っていた竜王様が私の前に再び現れました。
頭には包帯が巻かれ手当てがなされている様でした。
全てが間違いだったと言われるのを少しだけ期待したけれど私に対する憎々しいというのを隠さない視線がそれが違うものだと物語っていました。

「俺には愛するものがいる。幼いころからの婚約者カトリーヌだ」

うなるようにその人、私の番は言いました。

「だから俺は絶対にお前を愛さない」

であれば手放して欲しい。
ただ番というだけでこの国に無理やり連れてこられて閉じ込められて、憎悪を向けられる。
何故私がこんな目にあわなければならないのでしょう。


「お前は番の義務さえ果たせばいい。絶対につけあがるな!!」

番は、この国の竜王様はそう言いました。
何も持たされず、この場所に閉じ込めるように押し込まれた私にどうやってつけあがる要素があるのだろう。

竜王様はなるべく私を見ず、匂いも嗅がないようになのか、顔をそらしたまま足早にこの部屋を出て行った。

どっと、涙が溢れました。

「ううっ、あああ、わああああああああああ」


私は声を出して泣きました。
獣人国は武力が高いとされる国です。
きっと誰も私を迎えに来てくれることはないでしょう。

何故、何故……。
勝手に番と判断されて、勝手に番の義務を決められて、何故私は悪意を向けられないとならないのでしょう。
番の義務……。

あの人にはすでに愛する婚約者がいるそうです。
その人がお妃様になるという事も分かりました。

私につけられた侍女は監視も兼ねているようでじとりとした目で私を見てくるばかりです。
番の義務について聞くと、強い子を産むことだと端的に教えてくださいました。

吐き気がしました。

獣人の国は私を国王の子を産むものとして奪ってきたようでした。
感想 1

あなたにおすすめの小説

婚約者の番

毛蟹
恋愛
私の婚約者は、獅子の獣人だ。 大切にされる日々を過ごして、私はある日1番恐れていた事が起こってしまった。 「彼を譲ってくれない?」 とうとう彼の番が現れてしまった。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

『恋心を凍らせる薬を飲みました』 - 残りの学園生活、どうぞご自由にお遊びください、婚約者様

恋せよ恋
恋愛
愛されることを諦めた。だから、私は心を凍らせた。 不誠実な婚約者・ユリアンの冷遇に耐えかねたヤスミンは、 伝説の魔女の元を訪れ、恋心を消し去る「氷の薬」を飲む。 感情を捨て、完璧な「人形」となった彼女を前に、 ユリアンは初めて己の罪と執着に狂い始める。 「お願いだ、前のように僕を愛して泣いてくれ!」 足元に跪き、涙を流して乞う男に、ヤスミンは冷酷に微笑む。 「愛?……あいにく、そのような無駄な感情は捨てましたわ」 一度凍りついた心は、二度と溶けない。 後悔にのたうち回る男と、心を凍らせた冷徹な公爵夫人の、 終わりのない贖罪の記録。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

悪女はダンジョンから消えた

毛蟹
恋愛
クロウエア王国には、王立学園が存在する。  そこに通う事ができるのは、主に貴族と王族、そして優秀な平民達だ。  学べる内容は多岐にわたり、魔法学、神学、経済学など様々だ。  王立学園には、ある風習がある。  それは、卒業予定者の中で優秀な成績を納めた五人でダンジョンを攻略するものだ。  小さくとも危険が伴うので辞退することは可能なものではあるが、歴代の成績優秀者は誰一人として辞退した事はなかった。  ダンジョンとはいえ、下級のもので初級の魔法が使えれば誰でも攻略できるものなので、安全性はかなり高い。  ダンジョン攻略は、誰もが憧れるイベントだ。  王立学園に通う者にとっては一つのステータスでもあった。  卒業記念ダンジョンを攻略したと言えば、周囲は一目置いてくれる。  そのため王立学園に通う者達にとっては目標になっていた。  そして、今年は成績優秀者六名がダンジョンを攻略しに旅に出た。  誰もが、無事に帰ってくると信じて疑わなかった。  当然だ。歴代の攻略者は誰一人として失敗などしなかったからだ。  今年度の成績優秀者には、歴代の中でも文武両道と謳われる皇太子。そして、同じように優秀だと言われる彼の婚約者がいる。  この二人だけではない。  遠くない未来に騎士団長に任命されるであろう。現騎士団長の子息。  同じく遠くない未来に宰相に選ばれるであろう。宰相子息。  次期、魔術師団長候補者。  最後に、王族に次ぐ高貴な立場にある聖女が選ばれたのだ。  選りすぐりの集団だ。  もしも、一人がミスをしたとしても誰かしらフォローができるほどの戦力があった。  誰もが、瞬く間にダンジョンを攻略してすぐに暇を持て余すと思っていた。  ……しかし。  数日後、彼らは逃げ回ったのだろう、土で汚れた姿で帰ってきた。  六人いたパーティメンバーは、一人欠けて五人になっていた。  欠けたメンバーは、皇太子の婚約者だった。 「……彼女が僕たちを守ってくれたんだ」  皇太子の頬を銀色の水滴が伝い落ちていった。  それが呼び水のように、他のメンバーが声を出して泣き出した。 「……最期に、心を入れ替えてくれたんです」  聖女が言いながら皇太子の婚約者を悼むように目を閉じた。  その聖女の肩を皇太子が抱きしめていた。  愛する人を守るように。  こうして、王立学園の優秀者によるダンジョン攻略が終わった。  皇太子の婚約者だけをダンジョンに残して……。

今から婚約者に会いに行きます。〜私は運命の相手ではないから

毛蟹
恋愛
婚約者が王立学園の卒業を間近に控えていたある日。 ポーリーンのところに、婚約者の恋人だと名乗る女性がやってきた。 彼女は別れろ。と、一方的に迫り。 最後には暴言を吐いた。 「ああ、本当に嫌だわ。こんな田舎。肥溜めの臭いがするみたい。……貴女からも漂ってるわよ」  洗練された都会に住む自分の方がトリスタンにふさわしい。と、言わんばかりに彼女は微笑んだ。 「ねえ、卒業パーティーには来ないでね。恥をかくのは貴女よ。婚約破棄されてもまだ間に合うでしょう?早く相手を見つけたら?」 彼女が去ると、ポーリーンはある事を考えた。 ちゃんと、別れ話をしようと。 ポーリーンはこっそりと屋敷から抜け出して、婚約者のところへと向かった。

私のことは愛さなくても結構です

毛蟹
恋愛
サブリナは、聖騎士ジークムントからの婚約の打診の手紙をもらって有頂天になった。 一緒になって喜ぶ父親の姿を見た瞬間に前世の記憶が蘇った。 彼女は、自分が本の世界の中に生まれ変わったことに気がついた。 サブリナは、ジークムントと愛のない結婚をした後に、彼の愛する聖女アルネを嫉妬心の末に殺害しようとする。 いわゆる悪女だった。 サブリナは、ジークムントに首を切り落とされて、彼女の家族は全員死刑となった。 全ての記憶を思い出した後、サブリナは熱を出して寝込んでしまった。 そして、サブリナの妹クラリスが代打としてジークムントの婚約者になってしまう。 主役は、いわゆる悪役の妹です

【完結】「元カノが忘れられないんでしょう?」と身を引いた瞬間、爽やか彼氏の執着スイッチが入りました

恋せよ恋
恋愛
「元カノが忘れられないなら、私が身を引くわくべきよね」 交際一周年、愛するザックに告げた決別の言葉。 でも、彼は悲しむどころか、見たこともない 暗い瞳で私を追い詰めた。 「僕を捨てる? 逃げられると思っているの、アン」 私の知る爽やかな王子の仮面が剥がれ落ち、 隠されていた狂おしいほどの独占欲が牙を剥く。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

もう終わってますわ

こもろう
恋愛
聖女ローラとばかり親しく付き合うの婚約者メルヴィン王子。 爪弾きにされた令嬢エメラインは覚悟を決めて立ち上がる。