番が見つかったからといって幸せになれるとは限らない

渡辺 佐倉

文字の大きさ
3 / 16

辛い生活※

それからの生活は私が番としておごらないように竜王様の真実の愛に比べて私がいかに駄目かについて皆が語る、そういうものでした。

部屋から出してもらえることはめったにありませんでしたが専属の侍女というものはおらず入れ代わり立ち代わり私の世話をする獣人が変わり、皆口々に調子に乗らないようにと口にしました。
私は理由が無い限り部屋の外に出ることが出来ませんでした。

それは私の存在を真実の愛のお相手が心配するからと私の身を気遣ってという事でした。
私が一度バルコニーに出ようとしたとき、血相を変えた侍女の様子を見て、私が逃亡しないように、私が死のうとしないようにという理由が一番なのだと気が付きました。
窓には鎖と鍵がかけられるようになりました。

真実の愛との結婚式が今日あるのだと侍女に言われた日がありました。
私とは何か書類すら交わしたことはありません。
特に何もなくその日は終わりました。侍女が監視のため結婚パーティを見に行けずイライラしていたことだけを覚えています。

食事と着替えは一応用意されました。
ただそれは伯爵家で暮らしていたときのものより質素で使用人用のものだとわかりました。
着替えも全てお仕着せでした。

それ以外は何も与えられませんでした。
侍女たちは話しかけても、ほとんど何も答えてはくれませんでした。

結婚式が終わってしばらく、おおよそひと月が経った頃、「陛下のお渡りがあります」と静かに侍女が告げた。
邪魔な存在として忘れ去られ、嫌味を言われるだけの存在だと思い始めていたので驚いた。

けれどその瞬間は決して楽しくも、幸せなものではなかった。
竜王は私を粗雑に扱ったし、私への気遣いも無かった。
『カトリーヌはもっといい匂いがする』と何度も行為の最中に比較をされた。
番との行為は最高なのだと言われていたが少なくとも私はそうは思わなかった。

竜王様にとってはどうだったか分からないが、彼は時々この部屋を訪れるようになりました。
別に何かまともな会話をしたことはないです。
私はこの人が竜王であるという事以外は真実の愛の相手がいること以外何もしりません。

この部屋は客人用のものではなく、また夫婦のためのものでもないため浴場は隣接していませんでした。
そのため体を清めるときだけは部屋の外に出ることを許されました。

その道中色々な人がひそひそと私の陰口を言っているのが聞こえました。きっと聞かせているのでしょう。
私が真実の愛に対していかに失礼な存在か、番だからと言ってわきまえなければならないのか。
これ以上私は何を諦めればいいのか分かりませんでした。

きっと私の世話という名の監視をしている侍女に聞いても答えてはくれないでしょう。

その道中で、私ははじめてカトリーヌ様に会いました。
誰かから紹介されたわけではありません。

ただ、貴族だから分かるのです。
周りの人間の目線が、行動がその人が高貴な存在だと示していることが。
その人の着ている服がアクセサリーが、そして手入れの行き届いた髪型が高貴な人だという事が……。

そして竜王様と同じ匂いをしていることがぴたりと重なってこの人が竜王様の最愛なのだと気が付きました。
私は慌てて私の国の礼を取りました。

私の地位がこの国でどのようになっているかは知りません。
聞いても誰も答えてはくれませんでした。
けれど、だからこそとてもとても低いものになっているのだろうと気が付いています。

番だというのは城に来てから何人もの医師らしき人、研究者らしき人が確認していったので本当なのでしょう。けれどそれだけです。

カトリーヌ様に侍っていた者の一人がカトリーヌ様に耳打ちをしました。

「へえ、あなたが……」

カトリーヌ様は馬鹿にする様な眼で私を見ました。

「虫けらの分際でよく陛下の寵をうけられますね」

カトリーヌ様はそう言いました。
虫けらと言われた私は何も言い返せませんでした。

「身の程をわきまえなさい」

カトリーヌ様はそう言いました。
ここで言い返してはいけないことくらいわかります。
彼女は一国の王妃です。
白い耳はとがっていて私には何の力を持つ獣人なのかよくわからないけれどそれでも私の様な人間より強い事だけは確かで、そして権力も私より強い。

「かしこまりました」

私は震えながらそう言う事しかできませんでした。

周りにいた人々がクスクスと私をあざ笑っている声だけがよく響いていました。

* * *

竜は子ができにくい。けれど番との間であれば別である。
というのは本当だったらしい。

獣人が私が身ごもったと判断したのははじめて竜王様がこの部屋に渡ってから四か月のころだった。
けれど誰も喜んでいる様には見えなかった。
竜王様から何か言葉があった訳でもない。

ただ、渡りが無くなったことは少しだけマシだった。
けれどそれは長くは続かなかった。

番との間の子は強いと聞いていたが、子は流れてしまった。
誰も私を慰めはしなかった。

それよりむしろ何人もの獣人が竜王の子を殺したと私を責めた。

私が朝早く風呂に入りに行ったのが悪いと言った者がいた。
それはカトリーヌ様と会ってしまうと彼女に申し訳ないという建前で決められた入浴の時間だったからそれに従うしかなかった。

きちんと食事をとらなかったからだと言うものがいた。
出されたものは相変わらず使用人のものだろうと思われるものだったが、妊娠が分かって以降半ば無理矢理食べさせられていました。

私に何かできたことなのでしょうか。
それでも私の子が流れてしまった喪失感で涙があふれて、あふれてしばらくの間止まりませんでした。

竜王様からはその時も何もありませんでした。
それからしばらくして、恐らく医師から許可が出たのだろうまた竜王様が私の部屋にお渡りになるようになりました。

辛い時間を耐えて、周りに誰も味方がいない中、私は再び妊娠し、そして流産しました。

余りにも辛く、家族に手紙を書きたいとうったえましたが、許可されることはありませんでした。
感想 1

あなたにおすすめの小説

婚約者の番

毛蟹
恋愛
私の婚約者は、獅子の獣人だ。 大切にされる日々を過ごして、私はある日1番恐れていた事が起こってしまった。 「彼を譲ってくれない?」 とうとう彼の番が現れてしまった。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

『恋心を凍らせる薬を飲みました』 - 残りの学園生活、どうぞご自由にお遊びください、婚約者様

恋せよ恋
恋愛
愛されることを諦めた。だから、私は心を凍らせた。 不誠実な婚約者・ユリアンの冷遇に耐えかねたヤスミンは、 伝説の魔女の元を訪れ、恋心を消し去る「氷の薬」を飲む。 感情を捨て、完璧な「人形」となった彼女を前に、 ユリアンは初めて己の罪と執着に狂い始める。 「お願いだ、前のように僕を愛して泣いてくれ!」 足元に跪き、涙を流して乞う男に、ヤスミンは冷酷に微笑む。 「愛?……あいにく、そのような無駄な感情は捨てましたわ」 一度凍りついた心は、二度と溶けない。 後悔にのたうち回る男と、心を凍らせた冷徹な公爵夫人の、 終わりのない贖罪の記録。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

悪女はダンジョンから消えた

毛蟹
恋愛
クロウエア王国には、王立学園が存在する。  そこに通う事ができるのは、主に貴族と王族、そして優秀な平民達だ。  学べる内容は多岐にわたり、魔法学、神学、経済学など様々だ。  王立学園には、ある風習がある。  それは、卒業予定者の中で優秀な成績を納めた五人でダンジョンを攻略するものだ。  小さくとも危険が伴うので辞退することは可能なものではあるが、歴代の成績優秀者は誰一人として辞退した事はなかった。  ダンジョンとはいえ、下級のもので初級の魔法が使えれば誰でも攻略できるものなので、安全性はかなり高い。  ダンジョン攻略は、誰もが憧れるイベントだ。  王立学園に通う者にとっては一つのステータスでもあった。  卒業記念ダンジョンを攻略したと言えば、周囲は一目置いてくれる。  そのため王立学園に通う者達にとっては目標になっていた。  そして、今年は成績優秀者六名がダンジョンを攻略しに旅に出た。  誰もが、無事に帰ってくると信じて疑わなかった。  当然だ。歴代の攻略者は誰一人として失敗などしなかったからだ。  今年度の成績優秀者には、歴代の中でも文武両道と謳われる皇太子。そして、同じように優秀だと言われる彼の婚約者がいる。  この二人だけではない。  遠くない未来に騎士団長に任命されるであろう。現騎士団長の子息。  同じく遠くない未来に宰相に選ばれるであろう。宰相子息。  次期、魔術師団長候補者。  最後に、王族に次ぐ高貴な立場にある聖女が選ばれたのだ。  選りすぐりの集団だ。  もしも、一人がミスをしたとしても誰かしらフォローができるほどの戦力があった。  誰もが、瞬く間にダンジョンを攻略してすぐに暇を持て余すと思っていた。  ……しかし。  数日後、彼らは逃げ回ったのだろう、土で汚れた姿で帰ってきた。  六人いたパーティメンバーは、一人欠けて五人になっていた。  欠けたメンバーは、皇太子の婚約者だった。 「……彼女が僕たちを守ってくれたんだ」  皇太子の頬を銀色の水滴が伝い落ちていった。  それが呼び水のように、他のメンバーが声を出して泣き出した。 「……最期に、心を入れ替えてくれたんです」  聖女が言いながら皇太子の婚約者を悼むように目を閉じた。  その聖女の肩を皇太子が抱きしめていた。  愛する人を守るように。  こうして、王立学園の優秀者によるダンジョン攻略が終わった。  皇太子の婚約者だけをダンジョンに残して……。

今から婚約者に会いに行きます。〜私は運命の相手ではないから

毛蟹
恋愛
婚約者が王立学園の卒業を間近に控えていたある日。 ポーリーンのところに、婚約者の恋人だと名乗る女性がやってきた。 彼女は別れろ。と、一方的に迫り。 最後には暴言を吐いた。 「ああ、本当に嫌だわ。こんな田舎。肥溜めの臭いがするみたい。……貴女からも漂ってるわよ」  洗練された都会に住む自分の方がトリスタンにふさわしい。と、言わんばかりに彼女は微笑んだ。 「ねえ、卒業パーティーには来ないでね。恥をかくのは貴女よ。婚約破棄されてもまだ間に合うでしょう?早く相手を見つけたら?」 彼女が去ると、ポーリーンはある事を考えた。 ちゃんと、別れ話をしようと。 ポーリーンはこっそりと屋敷から抜け出して、婚約者のところへと向かった。

私のことは愛さなくても結構です

毛蟹
恋愛
サブリナは、聖騎士ジークムントからの婚約の打診の手紙をもらって有頂天になった。 一緒になって喜ぶ父親の姿を見た瞬間に前世の記憶が蘇った。 彼女は、自分が本の世界の中に生まれ変わったことに気がついた。 サブリナは、ジークムントと愛のない結婚をした後に、彼の愛する聖女アルネを嫉妬心の末に殺害しようとする。 いわゆる悪女だった。 サブリナは、ジークムントに首を切り落とされて、彼女の家族は全員死刑となった。 全ての記憶を思い出した後、サブリナは熱を出して寝込んでしまった。 そして、サブリナの妹クラリスが代打としてジークムントの婚約者になってしまう。 主役は、いわゆる悪役の妹です

【完結】「元カノが忘れられないんでしょう?」と身を引いた瞬間、爽やか彼氏の執着スイッチが入りました

恋せよ恋
恋愛
「元カノが忘れられないなら、私が身を引くわくべきよね」 交際一周年、愛するザックに告げた決別の言葉。 でも、彼は悲しむどころか、見たこともない 暗い瞳で私を追い詰めた。 「僕を捨てる? 逃げられると思っているの、アン」 私の知る爽やかな王子の仮面が剥がれ落ち、 隠されていた狂おしいほどの独占欲が牙を剥く。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

もう終わってますわ

こもろう
恋愛
聖女ローラとばかり親しく付き合うの婚約者メルヴィン王子。 爪弾きにされた令嬢エメラインは覚悟を決めて立ち上がる。