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優しい人
その日から、ルーチェ様は普通に半袖等の服を着るようになりました。
私は体調もほとんど回復しました。
心の傷は分からないですが、町にいる獣人の方を見ても体が固まってしまうようなことはなくなりました。
だからこそ、これからのことを考えることが増えました。
私は貴族令嬢としてはもう役に立つことはできない存在です。
竜王が私を探しているという話は聞きました。
人族には番という概念はありません。
だから番がいなくなっても生きていけます。
番との方が妊娠しやすいなんてこともありません。
ただ、長命の竜人族の番はそれに合わせ長い人生を生きます。
それがどうなっているかはわかりません。
ただ、人としての人生で充分なので私にとって、今のところその部分は正直どうでもよかったのです。
私にとってあの人は必要が無いけれどあの人に見つかる訳にはいかない。
どこか人の街に行って働くことは難しいという事が分かりました。
父は、「アイリスはもう一生分辛い思いをしたのだからあとはゆっくり暮らせばいいんだよ」と言います。
けれど、私は何かをしたいのです。
あの何もできなかった獣人国と同じ毎日を過ごしたくないのです。
もはや定例となってしまった、ルーチェ様とのお茶会で私がそういうとルーチェ様は少し考えた後、「私の仕事を手伝ってみますか?」と聞いた。
「私にもできるものでしょうか?」
私が聞くと「領主の仕事みたいなものですから、伯爵令嬢のアイリス嬢であれば充分戦力になりますよ」と答えました。
それから少しずつルーチェ様の書類仕事を手伝う様になりました。
私の負担にならないようそれはとても少ない量から始めました。
周りの先輩たちも皆優しく教えてくださいます。
少しずつ、少しずつ、今のことを考えられるようになりました。
お給金も出ました。
私はそれで刺繍糸を買ってハンカチーフに刺繍をしました。
今までのお礼としてルーチェ様に渡したら彼は喜んでくれるでしょうか?
刺繍の色は彼の瞳の色であるブルーグレーと彼の名にちなんだ金色にした。
私の人生に差し込んだ光はキラキラと輝いていて金色に見えた。
* * *
私が刺繍入りのハンカチを渡すとルーチェ様は飛び上がって喜んだ。
私も嬉しくなりました。
私は私の心に芽生えた淡い感情が何かにちゃんと気が付いていました。
こんなに優しい人を愛さないことは多分きっと難しいでしょう。
けれど傷物である私はその優しい人には不釣り合いです。
この優しい人にはもっとずっとふさわしい人がいると思うのです。
「このハンカチのお礼をしてもいいでしょうか?」
ルーチェ様は私に聞いた。
「このハンカチがお礼ですので……」
私はそう返した。
本当にルーチェ様は優しい人です。
「いや、そうではなく、私もあなたに何か贈り物をしたいのです!!」
叫ぶというほどではないのですが、ルーチェ様は真っ赤になって立ち上がるとそう言いました。
周りのメイドたちは、ほほえましい物を見るように、あらあらまあまあという顔で私たちを見ています。
ルーチェ様は状況に気が付いたのか席に座り直すと。
「あのですね……、つまりですね……」
としばらく意味のあるか分からない言葉を言った後――
「私はあなたのことが好きなのです」
そう小さな声で言いました。
「ただ、望まない番としての生活を強いられたあなたに、私の気持ちを押し付けたくはないのです」
ルーチェ様はそう付け加えました。
やはり彼はとてもとても優しい人です。
「……私もお慕いしております」
私も精一杯自分の気持ちを伝えました。
私は体調もほとんど回復しました。
心の傷は分からないですが、町にいる獣人の方を見ても体が固まってしまうようなことはなくなりました。
だからこそ、これからのことを考えることが増えました。
私は貴族令嬢としてはもう役に立つことはできない存在です。
竜王が私を探しているという話は聞きました。
人族には番という概念はありません。
だから番がいなくなっても生きていけます。
番との方が妊娠しやすいなんてこともありません。
ただ、長命の竜人族の番はそれに合わせ長い人生を生きます。
それがどうなっているかはわかりません。
ただ、人としての人生で充分なので私にとって、今のところその部分は正直どうでもよかったのです。
私にとってあの人は必要が無いけれどあの人に見つかる訳にはいかない。
どこか人の街に行って働くことは難しいという事が分かりました。
父は、「アイリスはもう一生分辛い思いをしたのだからあとはゆっくり暮らせばいいんだよ」と言います。
けれど、私は何かをしたいのです。
あの何もできなかった獣人国と同じ毎日を過ごしたくないのです。
もはや定例となってしまった、ルーチェ様とのお茶会で私がそういうとルーチェ様は少し考えた後、「私の仕事を手伝ってみますか?」と聞いた。
「私にもできるものでしょうか?」
私が聞くと「領主の仕事みたいなものですから、伯爵令嬢のアイリス嬢であれば充分戦力になりますよ」と答えました。
それから少しずつルーチェ様の書類仕事を手伝う様になりました。
私の負担にならないようそれはとても少ない量から始めました。
周りの先輩たちも皆優しく教えてくださいます。
少しずつ、少しずつ、今のことを考えられるようになりました。
お給金も出ました。
私はそれで刺繍糸を買ってハンカチーフに刺繍をしました。
今までのお礼としてルーチェ様に渡したら彼は喜んでくれるでしょうか?
刺繍の色は彼の瞳の色であるブルーグレーと彼の名にちなんだ金色にした。
私の人生に差し込んだ光はキラキラと輝いていて金色に見えた。
* * *
私が刺繍入りのハンカチを渡すとルーチェ様は飛び上がって喜んだ。
私も嬉しくなりました。
私は私の心に芽生えた淡い感情が何かにちゃんと気が付いていました。
こんなに優しい人を愛さないことは多分きっと難しいでしょう。
けれど傷物である私はその優しい人には不釣り合いです。
この優しい人にはもっとずっとふさわしい人がいると思うのです。
「このハンカチのお礼をしてもいいでしょうか?」
ルーチェ様は私に聞いた。
「このハンカチがお礼ですので……」
私はそう返した。
本当にルーチェ様は優しい人です。
「いや、そうではなく、私もあなたに何か贈り物をしたいのです!!」
叫ぶというほどではないのですが、ルーチェ様は真っ赤になって立ち上がるとそう言いました。
周りのメイドたちは、ほほえましい物を見るように、あらあらまあまあという顔で私たちを見ています。
ルーチェ様は状況に気が付いたのか席に座り直すと。
「あのですね……、つまりですね……」
としばらく意味のあるか分からない言葉を言った後――
「私はあなたのことが好きなのです」
そう小さな声で言いました。
「ただ、望まない番としての生活を強いられたあなたに、私の気持ちを押し付けたくはないのです」
ルーチェ様はそう付け加えました。
やはり彼はとてもとても優しい人です。
「……私もお慕いしております」
私も精一杯自分の気持ちを伝えました。
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