番が見つかったからといって幸せになれるとは限らない

渡辺 佐倉

文字の大きさ
14 / 16

崩壊【視点変更】

【竜王視点】

それはある日突然やってきた。

まずカトリーヌの匂いが全く受け付けなくなってしまった。
愛している筈の彼女を見ても気持ち悪く感じてしまう。

それよりも、もっと……。

何を自分が求めているのかは分かった。
番だ。俺には番が必要なのだ。

ふらふらとあれが暮らしていた部屋に向かう。
ドアを開けた瞬間あれの匂いがする。

ああ、この匂いだ。俺に必要だったのはこの匂いなのだ。
粗末なベッドに寝転んで息を吸い込む。

何故番がいないのだ。
番は、俺の番は……。

俺は吼えた。吼えて、吼えて。声がかれるまで吼え続けた。

番は見つからない。
探知できないのであれば……という話もあった。
信じられない。そんなこと信じられない…

あれの名前を呼ぼうとして知らなかったのだと思いなおす。
何故名前を聞かなかったのか、俺は多分自分の名前さえ教えていない。

暴れて、暴れて、その所為で部屋がめちゃくちゃになってその所為であれの匂いが薄くなってしまってそれでまた吼えて。

暴れた所為で窓に何かが引っかかっていることに気が付いた。
あれの匂いがする。よろよろと近づく。
あれの髪の毛で作られた何かを見つける。
それをむしり取るように取って、匂いを嗅ぐ。

ああ、あれの匂いだ。
それが手放せない。

何かをする気にもならない。


それよりもこの匂いをきちんと覚えておかなければならない。

* * *

仕事も何も手につかなくなった。
食欲も無い。
眠ることすら億劫になった。

そんな時、家来の一人らしき男が俺に言った。

「あなたのお世継ぎになる筈だった子は、毒殺されています」

子という言葉に思い当たることは無かった。
けれど少しかんがえて思い出した。
あれは俺の子を孕んでいた。

俺の子、俺と番の……。

なんで忘れていたんだ。
そうだ。
確かに俺の子がいた筈だ。

毒……。

俺の子が殺されていた。

許さない。

朦朧とする中、「我が子を毒殺したものを一族郎党見つけ出し関わったものすべてを処刑せよ」と言った。

その後どうなったかは知らない。
興味が無かった。
番は見つからない。

どこに行ってしまったのか、探しても探しても見つからない。
あれの親を捜索したがそれでも見つからない。

この国から出られるはずが無い。
無能が探せないのか、それとも誰かが俺の物を隠しているのか。

「ああ、陛下はおしまいだ……」

そういう声が聞こえた気がするけれど気にならなかった。

吼えて、吼えて。
無能を折檻して。

それから――

しばらくすると何人も何人もに取り囲まれて石で囲まれた部屋に連れていかれた。

普段であればそんなもの振り払うのに。
食事をちゃんとしていなかった所為だろうか上手く力が出なかった。

そのまま、残った片方の角を無理矢理折られる。

やめろ。これが無ければ番が番だと分からないじゃないか。
そう抗議すると「陛下は何度も番様に会われております。お顔も覚えておいででしょうからこんなものなくても大丈夫ですよ」と言われた。

つのを折られたせいで、匂いもよくわからなくなってしまった。
あれの髪の毛をかいでも、うまくにおいがわからなくなっている。

あれはなぜかえってこないのか。
あれは、あれは……。

ぼとぼととなみだががあふれる。
りゆうはよくわからない。

あれにさえあえればなおるのに。

ちくしょう。
感想 1

あなたにおすすめの小説

婚約者の番

毛蟹
恋愛
私の婚約者は、獅子の獣人だ。 大切にされる日々を過ごして、私はある日1番恐れていた事が起こってしまった。 「彼を譲ってくれない?」 とうとう彼の番が現れてしまった。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

『恋心を凍らせる薬を飲みました』 - 残りの学園生活、どうぞご自由にお遊びください、婚約者様

恋せよ恋
恋愛
愛されることを諦めた。だから、私は心を凍らせた。 不誠実な婚約者・ユリアンの冷遇に耐えかねたヤスミンは、 伝説の魔女の元を訪れ、恋心を消し去る「氷の薬」を飲む。 感情を捨て、完璧な「人形」となった彼女を前に、 ユリアンは初めて己の罪と執着に狂い始める。 「お願いだ、前のように僕を愛して泣いてくれ!」 足元に跪き、涙を流して乞う男に、ヤスミンは冷酷に微笑む。 「愛?……あいにく、そのような無駄な感情は捨てましたわ」 一度凍りついた心は、二度と溶けない。 後悔にのたうち回る男と、心を凍らせた冷徹な公爵夫人の、 終わりのない贖罪の記録。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

今から婚約者に会いに行きます。〜私は運命の相手ではないから

毛蟹
恋愛
婚約者が王立学園の卒業を間近に控えていたある日。 ポーリーンのところに、婚約者の恋人だと名乗る女性がやってきた。 彼女は別れろ。と、一方的に迫り。 最後には暴言を吐いた。 「ああ、本当に嫌だわ。こんな田舎。肥溜めの臭いがするみたい。……貴女からも漂ってるわよ」  洗練された都会に住む自分の方がトリスタンにふさわしい。と、言わんばかりに彼女は微笑んだ。 「ねえ、卒業パーティーには来ないでね。恥をかくのは貴女よ。婚約破棄されてもまだ間に合うでしょう?早く相手を見つけたら?」 彼女が去ると、ポーリーンはある事を考えた。 ちゃんと、別れ話をしようと。 ポーリーンはこっそりと屋敷から抜け出して、婚約者のところへと向かった。

悪女はダンジョンから消えた

毛蟹
恋愛
クロウエア王国には、王立学園が存在する。  そこに通う事ができるのは、主に貴族と王族、そして優秀な平民達だ。  学べる内容は多岐にわたり、魔法学、神学、経済学など様々だ。  王立学園には、ある風習がある。  それは、卒業予定者の中で優秀な成績を納めた五人でダンジョンを攻略するものだ。  小さくとも危険が伴うので辞退することは可能なものではあるが、歴代の成績優秀者は誰一人として辞退した事はなかった。  ダンジョンとはいえ、下級のもので初級の魔法が使えれば誰でも攻略できるものなので、安全性はかなり高い。  ダンジョン攻略は、誰もが憧れるイベントだ。  王立学園に通う者にとっては一つのステータスでもあった。  卒業記念ダンジョンを攻略したと言えば、周囲は一目置いてくれる。  そのため王立学園に通う者達にとっては目標になっていた。  そして、今年は成績優秀者六名がダンジョンを攻略しに旅に出た。  誰もが、無事に帰ってくると信じて疑わなかった。  当然だ。歴代の攻略者は誰一人として失敗などしなかったからだ。  今年度の成績優秀者には、歴代の中でも文武両道と謳われる皇太子。そして、同じように優秀だと言われる彼の婚約者がいる。  この二人だけではない。  遠くない未来に騎士団長に任命されるであろう。現騎士団長の子息。  同じく遠くない未来に宰相に選ばれるであろう。宰相子息。  次期、魔術師団長候補者。  最後に、王族に次ぐ高貴な立場にある聖女が選ばれたのだ。  選りすぐりの集団だ。  もしも、一人がミスをしたとしても誰かしらフォローができるほどの戦力があった。  誰もが、瞬く間にダンジョンを攻略してすぐに暇を持て余すと思っていた。  ……しかし。  数日後、彼らは逃げ回ったのだろう、土で汚れた姿で帰ってきた。  六人いたパーティメンバーは、一人欠けて五人になっていた。  欠けたメンバーは、皇太子の婚約者だった。 「……彼女が僕たちを守ってくれたんだ」  皇太子の頬を銀色の水滴が伝い落ちていった。  それが呼び水のように、他のメンバーが声を出して泣き出した。 「……最期に、心を入れ替えてくれたんです」  聖女が言いながら皇太子の婚約者を悼むように目を閉じた。  その聖女の肩を皇太子が抱きしめていた。  愛する人を守るように。  こうして、王立学園の優秀者によるダンジョン攻略が終わった。  皇太子の婚約者だけをダンジョンに残して……。

【完結】「元カノが忘れられないんでしょう?」と身を引いた瞬間、爽やか彼氏の執着スイッチが入りました

恋せよ恋
恋愛
「元カノが忘れられないなら、私が身を引くわくべきよね」 交際一周年、愛するザックに告げた決別の言葉。 でも、彼は悲しむどころか、見たこともない 暗い瞳で私を追い詰めた。 「僕を捨てる? 逃げられると思っているの、アン」 私の知る爽やかな王子の仮面が剥がれ落ち、 隠されていた狂おしいほどの独占欲が牙を剥く。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

私のことは愛さなくても結構です

毛蟹
恋愛
サブリナは、聖騎士ジークムントからの婚約の打診の手紙をもらって有頂天になった。 一緒になって喜ぶ父親の姿を見た瞬間に前世の記憶が蘇った。 彼女は、自分が本の世界の中に生まれ変わったことに気がついた。 サブリナは、ジークムントと愛のない結婚をした後に、彼の愛する聖女アルネを嫉妬心の末に殺害しようとする。 いわゆる悪女だった。 サブリナは、ジークムントに首を切り落とされて、彼女の家族は全員死刑となった。 全ての記憶を思い出した後、サブリナは熱を出して寝込んでしまった。 そして、サブリナの妹クラリスが代打としてジークムントの婚約者になってしまう。 主役は、いわゆる悪役の妹です

もう何も信じられない

ミカン♬
恋愛
ウェンディは同じ学年の恋人がいる。彼は伯爵令息のエドアルト。1年生の時に学園の図書室で出会って二人は友達になり、仲を育んで恋人に発展し今は卒業後の婚約を待っていた。 ウェンディは平民なのでエドアルトの家からは反対されていたが、卒業して互いに気持ちが変わらなければ婚約を認めると約束されたのだ。 その彼が他の令嬢に恋をしてしまったようだ。彼女はソーニア様。ウェンディよりも遥かに可憐で天使のような男爵令嬢。 「すまないけど、今だけ自由にさせてくれないか」 あんなに愛を囁いてくれたのに、もう彼の全てが信じられなくなった。