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本編4
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この人の友人?らしき人がお店にすぐに連絡を取っていたみたいで、俺は店長に怒られることも無く、その人に付き添う様に言われる。
救急車は呼ばないようにと言われたらしい。
指定された病院はとても大きな場所で店の裏口に横づけされたタクシーから降りると、連絡されてたらしい病院の人たちがとても丁寧に彼の事を連れて行ってくれた。
「付き添いの方はこちらに」
香水のような強い匂いはもうしなかった。
ただ、そこにその残り香がいつまでも残っているような気がする。
それは不思議な感覚だった。
「抑制剤自体は効いてますから発作は起きないと思いますよ」
看護師さんが俺にそう言う。
彼が抑制剤を飲んだから何も匂いがしなくなったのだろうか。
けれど、おれは彼の知り合いでもなんでもない。
単に彼がいた店のアルバイトだ。
「お引止めするように申しつかっておりますので」
その看護師さんは言った。
普段病院にかかって、こんな言葉の使い方をされたことが無い。
アルファは社会的な強者が多い。
それは知っていたけれど、これがそういうことか?と思った。
◆◇◆
その人は、安藤さんと言うらしい。
そう言えばクラブでもそんな風に呼ばれていた気がする。
応急処置が終わって個室に横たわった彼は点滴をされながら横たわっている。
いまだ、意識は戻らないけれど、別に命に別状はないらしい。
ベッドの横に用意されていた丸椅子に座って彼の顔をじっと見る。
彼はいかにもアルファらしい男前な顔をしている。
着ている服も、髪の毛もどれもとても素晴らしく、必死になって所謂苦学生をしている自分とは偉く違うなと思った。
病室の扉があく。
スーツを着た男性が立っていてこちらを見た。
白衣も制服も何も着ていないから多分病院の人ではない。
「あ、あの……俺」
なんて説明したらいいのだろう。
別にこの人を誘惑したつもりは無い。
けれど世間的にそういう扱いを受けることは知っている。
「お前が、こいつのなんだかはどうでもいい」
ただ、今日俺はこいつにあった借りを返しに来ただけだ。
そうその男の人は言った。
「駄目だよ、都築さん。」
彼の奥にもう一人いたみたいで優しい声がした。
最初に入ってきた人の匂いがして少し気持ち悪くなる。この人はアルファだ。
そして、そのアルファを都築さんと呼んだ人はオメガ。
匂いで大体わかるのは便利なのか不便なのか。今はよく分からない。
「初めまして、だよね。
おれはそこで寝てる安藤の友人なんだ」
俺よりも少し小柄な一見ベータに見えるその人はふわりと言った。
「俺、何が何だか……」
あんな風にフェロモンを感じたことは無かった。
誰かにオメガの匂いを感知されたことも無かった。
先ほど起きたことの意味が自分でも分からないし、なんでここに連れてこられたのかもわからない。
「君は、安藤の恋人じゃないの?」
当たり前の様に聞かれて、驚く。
多分俺がこの人をオメガだと分かっているみたいにこの人も多分分かってる。
普通あんまり、オメガの人にオメガだとバレる事は無い。
病院の待合室にいても、「ここは休憩スペースじゃないんですけど」って他の通院者さんに怒られる位だ。
実際に俺の一部はまだベータのままなのでそりゃあそうかと思っていた。
でも多分この人はどんな方法を使ったのか分からないけれど俺が、オメガでもあると気が付いている。
「俺、この人とはさっき初めて会ったばかりで、突然運命がどうとかって言ってたけど、何がなんだか……」
本当にわからないんです。絞り出すように言うと。
「安藤が言ったの? 運命だって」
と聞かれた。匂いが強くて頭がじんと痺れた様になっていたけれど俺の横で寝ている安藤と言う人は確かに運命がどうとかと言っていた。
運命の番。映画なんかでは見たことがあるけれど所謂都市伝説の類だろう。
それなのに、安藤さんの友人だという人は「そう」と言うと、アルファの方の人に入院の手続きとかしてもらってきていいですか?と聞いた。
救急車は呼ばないようにと言われたらしい。
指定された病院はとても大きな場所で店の裏口に横づけされたタクシーから降りると、連絡されてたらしい病院の人たちがとても丁寧に彼の事を連れて行ってくれた。
「付き添いの方はこちらに」
香水のような強い匂いはもうしなかった。
ただ、そこにその残り香がいつまでも残っているような気がする。
それは不思議な感覚だった。
「抑制剤自体は効いてますから発作は起きないと思いますよ」
看護師さんが俺にそう言う。
彼が抑制剤を飲んだから何も匂いがしなくなったのだろうか。
けれど、おれは彼の知り合いでもなんでもない。
単に彼がいた店のアルバイトだ。
「お引止めするように申しつかっておりますので」
その看護師さんは言った。
普段病院にかかって、こんな言葉の使い方をされたことが無い。
アルファは社会的な強者が多い。
それは知っていたけれど、これがそういうことか?と思った。
◆◇◆
その人は、安藤さんと言うらしい。
そう言えばクラブでもそんな風に呼ばれていた気がする。
応急処置が終わって個室に横たわった彼は点滴をされながら横たわっている。
いまだ、意識は戻らないけれど、別に命に別状はないらしい。
ベッドの横に用意されていた丸椅子に座って彼の顔をじっと見る。
彼はいかにもアルファらしい男前な顔をしている。
着ている服も、髪の毛もどれもとても素晴らしく、必死になって所謂苦学生をしている自分とは偉く違うなと思った。
病室の扉があく。
スーツを着た男性が立っていてこちらを見た。
白衣も制服も何も着ていないから多分病院の人ではない。
「あ、あの……俺」
なんて説明したらいいのだろう。
別にこの人を誘惑したつもりは無い。
けれど世間的にそういう扱いを受けることは知っている。
「お前が、こいつのなんだかはどうでもいい」
ただ、今日俺はこいつにあった借りを返しに来ただけだ。
そうその男の人は言った。
「駄目だよ、都築さん。」
彼の奥にもう一人いたみたいで優しい声がした。
最初に入ってきた人の匂いがして少し気持ち悪くなる。この人はアルファだ。
そして、そのアルファを都築さんと呼んだ人はオメガ。
匂いで大体わかるのは便利なのか不便なのか。今はよく分からない。
「初めまして、だよね。
おれはそこで寝てる安藤の友人なんだ」
俺よりも少し小柄な一見ベータに見えるその人はふわりと言った。
「俺、何が何だか……」
あんな風にフェロモンを感じたことは無かった。
誰かにオメガの匂いを感知されたことも無かった。
先ほど起きたことの意味が自分でも分からないし、なんでここに連れてこられたのかもわからない。
「君は、安藤の恋人じゃないの?」
当たり前の様に聞かれて、驚く。
多分俺がこの人をオメガだと分かっているみたいにこの人も多分分かってる。
普通あんまり、オメガの人にオメガだとバレる事は無い。
病院の待合室にいても、「ここは休憩スペースじゃないんですけど」って他の通院者さんに怒られる位だ。
実際に俺の一部はまだベータのままなのでそりゃあそうかと思っていた。
でも多分この人はどんな方法を使ったのか分からないけれど俺が、オメガでもあると気が付いている。
「俺、この人とはさっき初めて会ったばかりで、突然運命がどうとかって言ってたけど、何がなんだか……」
本当にわからないんです。絞り出すように言うと。
「安藤が言ったの? 運命だって」
と聞かれた。匂いが強くて頭がじんと痺れた様になっていたけれど俺の横で寝ている安藤と言う人は確かに運命がどうとかと言っていた。
運命の番。映画なんかでは見たことがあるけれど所謂都市伝説の類だろう。
それなのに、安藤さんの友人だという人は「そう」と言うと、アルファの方の人に入院の手続きとかしてもらってきていいですか?と聞いた。
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