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本編10
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俺と安藤さんの関係をなんて呼んだらいいのか分からない。
実際にあったのは最初の一回だけで、友達というのとも少し違う気がする。
勿論恋人のようなそんな特別な物とは違うのだろう。
安藤さんと連絡をとりあう様になってから、番のしるしをつけたオメガがよく目に写る様になった。
今まで気にも留めていなかったその項の痣にも似た跡。
自分にはそのまがい物しかできないという事実も今まで気にも留めていなかったのに、棘の様に心のうちに引っかかっている。
けれど毎日は忙しく過ぎていく。
生活はいつもギリギリで、頼れる人もいない自分は日々の生活の事だけを考えるべきだ。
そんな、おとぎ話のような番がいる人の話を考えても意味はない。
大学に行って、その足でそのままバイト先に行く。
酔ったお客さんがこぼしたアルコールを拭いて、それからVIPルームの掃除をした。
VIPルームには知らないアルファの匂いがして胸やけのような感覚がした。
けれどそれを気にしてる時間は無い。
次のお客さんが使える様に綺麗に片づけてそれから、ひたすら下げられたグラスを洗う。
今日は週末なので明日は大学もないし、クラブは明け方近くまで営業しているため、家に帰りつくのは多分始発が動き始めてから。
それが自分の日常で、当たり前だけど、今日は少しだけ疲れた。
抑制剤を飲んでいなかった場合の、発情期に丁度合致していた所為なのか、それとも単にバイトがいつもより忙しかった所為か。
それとも、何だろう。
医者に、運命って本当にあるんですか?と聞いて、医者に「ベータの匂いが混ざるため稀有だと思いますよ」と言われたからだろうか。
運命を鼻で笑われた方がよかったのかは分からない。
医者は付け加える様に、あなたと相性のいいアルファが可能性としていることは否定できないと言っていたけれど、それが安藤さんの事なのかは俺にもよく分からなかった。
美しくも、儚くも繊細でもない、自分の伴侶になってくれる人間を想像できなかった。
けれど、少しだけ自分も誰かを幸せにしたいと願ってしまっている。
鉛の様に重くなった体で自宅のアパートに帰りつく。
シャワーを浴びて今日の分の抑制剤を飲んでとりあえず眠る。
今、自分がしなくちゃいけないのはそれだけ。
ちゃんと分かっているのに、疲れている体は言うことをちゃんと聞かない。
泣きそうっていうのとは少し違う。
だけど多分、少しだけ疲れてた。
なんでか分からないけど、寂しかったのかもしれない。
無意識に手がスマートフォンの通話アプリを選んで安藤さんの名前を押していた。
こんな早朝って言うにもほどがある時間に、何をやってるんだと思ったのは、彼が応答に出てしまってからだった。
実際にあったのは最初の一回だけで、友達というのとも少し違う気がする。
勿論恋人のようなそんな特別な物とは違うのだろう。
安藤さんと連絡をとりあう様になってから、番のしるしをつけたオメガがよく目に写る様になった。
今まで気にも留めていなかったその項の痣にも似た跡。
自分にはそのまがい物しかできないという事実も今まで気にも留めていなかったのに、棘の様に心のうちに引っかかっている。
けれど毎日は忙しく過ぎていく。
生活はいつもギリギリで、頼れる人もいない自分は日々の生活の事だけを考えるべきだ。
そんな、おとぎ話のような番がいる人の話を考えても意味はない。
大学に行って、その足でそのままバイト先に行く。
酔ったお客さんがこぼしたアルコールを拭いて、それからVIPルームの掃除をした。
VIPルームには知らないアルファの匂いがして胸やけのような感覚がした。
けれどそれを気にしてる時間は無い。
次のお客さんが使える様に綺麗に片づけてそれから、ひたすら下げられたグラスを洗う。
今日は週末なので明日は大学もないし、クラブは明け方近くまで営業しているため、家に帰りつくのは多分始発が動き始めてから。
それが自分の日常で、当たり前だけど、今日は少しだけ疲れた。
抑制剤を飲んでいなかった場合の、発情期に丁度合致していた所為なのか、それとも単にバイトがいつもより忙しかった所為か。
それとも、何だろう。
医者に、運命って本当にあるんですか?と聞いて、医者に「ベータの匂いが混ざるため稀有だと思いますよ」と言われたからだろうか。
運命を鼻で笑われた方がよかったのかは分からない。
医者は付け加える様に、あなたと相性のいいアルファが可能性としていることは否定できないと言っていたけれど、それが安藤さんの事なのかは俺にもよく分からなかった。
美しくも、儚くも繊細でもない、自分の伴侶になってくれる人間を想像できなかった。
けれど、少しだけ自分も誰かを幸せにしたいと願ってしまっている。
鉛の様に重くなった体で自宅のアパートに帰りつく。
シャワーを浴びて今日の分の抑制剤を飲んでとりあえず眠る。
今、自分がしなくちゃいけないのはそれだけ。
ちゃんと分かっているのに、疲れている体は言うことをちゃんと聞かない。
泣きそうっていうのとは少し違う。
だけど多分、少しだけ疲れてた。
なんでか分からないけど、寂しかったのかもしれない。
無意識に手がスマートフォンの通話アプリを選んで安藤さんの名前を押していた。
こんな早朝って言うにもほどがある時間に、何をやってるんだと思ったのは、彼が応答に出てしまってからだった。
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