9 / 20
小さな友達(番外編内三人称視点)
しおりを挟む
私にはお父様が二人います。
普通はお父様とお母様で家族ということを知らない訳ではありません。
けれど、私のうちはお父様が二人いるので仕方がありません。
一度、たとえ男同士の夫婦であっても生んだ方が母親だろうと言われたことがありました。
けれど、私にはそれがぴんときませんでした。
だって、お父様はやっぱりお父様だから。
私のお父様は二人とも強くてかっこよくてやさしくて、それに私のことを想っていてくださるのが分かるのです。
「ああ、シャーリーこんなところにいたのか。」
息を切らしてグレン父様が言う。
私のことをずいぶんと探したようだった。何せ、ここは庭の一番はじだったから。
足元で、私のおちびちゃんがニャーと鳴いた。
慌てて隠すと、ふはっと声を立ててお父様が笑った。
「ねこ見つけたのか。」
お父様はしゃがむと、手を伸ばして舌を鳴らした。
「あ、あのね、お父様。」
今日はもう一人のお父様、アルフ父様が久しぶりに帰ってくる日なのだ。
だから、我侭を言って困らせてはいけない。
分かっているのに、上手くは出来ませんでした。
「大丈夫だよ。」
お父様はネコを撫でるように、ぽんぽんと私の頭を撫でた。
それは、いつものそっと撫でる手つきと少しだけ違っていて、少しだけ力強くて、それでも優しさがつたわってくるものでした。
「アルフレートが帰ってきたら一緒に頼んでみような。」
「はいっ!」
私はおちびちゃんをそっと抱えてお父様に見せた。
お父様は目じりを下げて笑顔を浮かべた。
「屋敷に戻ろうか。」
二人で並んでゆっくりと歩いた。
◆
「お疲れ様。」
ベッドに腰掛けたアルフレートを見下ろしながらグレンは言う。
久しぶりに帰ってきたアルフレートに娘のシャーリーははしゃぎすぎて、既に彼女の寝室のベッドの上だ。
「貴方こそ、いつもありがとうございます。」
腰に手を回しながらアルフレートは言う。
グレンが見下ろしたアルフレートの顔は、穏やかに笑っていた。
犬にするみたいに、ぐしゃぐしゃとアルフレートの金髪をかき混ぜる瞬間が案外すきだと知ったのは彼の伴侶として生きると決めてしばらくたってからだった。
「シャーリーまた可愛くなってて。」
「将来が楽しみだろ?」
「心配ですよ?」
眉根を寄せたアルフレートをグレンは鼻で笑った。
「だって、シャーリーはアンタに似てるじゃないですか!」
「いや、どう見てもお前似だろ。」
金色の髪の毛と瞳を持つ少女はアルフレートによく似ているように見える。
娘の前で呼ばれている貴方という言葉が、昔つかっていたアンタに戻る瞬間がグレンはとても好きだ。
見下ろしたアルフレートの頬をそっと撫でると、口付けをした。
すぐに、主導権はアルフレートに移る。
柔らかな唇をお互いに食む。
唾液が流れ落ちるのも気にせず、舌を絡ませると、グレンの後頭部をアルフレートが乱暴に撫でた。
唇は離れたものの顔自体は至近距離にあり、かかる吐息が熱く感じられる。
アルフレートの金色の目は情欲に揺らめいていた。
グレンはそれを見ると目を細める。
それから、ぺろりと唇を舐めた。
アルフレートはゴクリと唾を飲み込む。
「お前趣味悪いよな。」
てっきりたまたま近くにいたのが自分だったから、組み伏せて壊れないのが自分だったから関係を持ったのだとグレンは思っていた。
別に男が好きだろうがなんだろうが、あえてグレンを選ぶ必要は無いのだから。
「は?俺は趣味はいいですし、見る目もありますよ。」
そういうとアルフレートはグレンの腕をひっぱる。
体制を崩してベッドに横たわった、グレンのシャツのボタンを器用にはずした。
それから、グレンの筋張った首筋をそっと撫でた。
ほら、やっぱり趣味悪いと思いながら、グレンはアルフレートの背中に腕を伸ばした。
了
お題:甘々、子煩悩
普通はお父様とお母様で家族ということを知らない訳ではありません。
けれど、私のうちはお父様が二人いるので仕方がありません。
一度、たとえ男同士の夫婦であっても生んだ方が母親だろうと言われたことがありました。
けれど、私にはそれがぴんときませんでした。
だって、お父様はやっぱりお父様だから。
私のお父様は二人とも強くてかっこよくてやさしくて、それに私のことを想っていてくださるのが分かるのです。
「ああ、シャーリーこんなところにいたのか。」
息を切らしてグレン父様が言う。
私のことをずいぶんと探したようだった。何せ、ここは庭の一番はじだったから。
足元で、私のおちびちゃんがニャーと鳴いた。
慌てて隠すと、ふはっと声を立ててお父様が笑った。
「ねこ見つけたのか。」
お父様はしゃがむと、手を伸ばして舌を鳴らした。
「あ、あのね、お父様。」
今日はもう一人のお父様、アルフ父様が久しぶりに帰ってくる日なのだ。
だから、我侭を言って困らせてはいけない。
分かっているのに、上手くは出来ませんでした。
「大丈夫だよ。」
お父様はネコを撫でるように、ぽんぽんと私の頭を撫でた。
それは、いつものそっと撫でる手つきと少しだけ違っていて、少しだけ力強くて、それでも優しさがつたわってくるものでした。
「アルフレートが帰ってきたら一緒に頼んでみような。」
「はいっ!」
私はおちびちゃんをそっと抱えてお父様に見せた。
お父様は目じりを下げて笑顔を浮かべた。
「屋敷に戻ろうか。」
二人で並んでゆっくりと歩いた。
◆
「お疲れ様。」
ベッドに腰掛けたアルフレートを見下ろしながらグレンは言う。
久しぶりに帰ってきたアルフレートに娘のシャーリーははしゃぎすぎて、既に彼女の寝室のベッドの上だ。
「貴方こそ、いつもありがとうございます。」
腰に手を回しながらアルフレートは言う。
グレンが見下ろしたアルフレートの顔は、穏やかに笑っていた。
犬にするみたいに、ぐしゃぐしゃとアルフレートの金髪をかき混ぜる瞬間が案外すきだと知ったのは彼の伴侶として生きると決めてしばらくたってからだった。
「シャーリーまた可愛くなってて。」
「将来が楽しみだろ?」
「心配ですよ?」
眉根を寄せたアルフレートをグレンは鼻で笑った。
「だって、シャーリーはアンタに似てるじゃないですか!」
「いや、どう見てもお前似だろ。」
金色の髪の毛と瞳を持つ少女はアルフレートによく似ているように見える。
娘の前で呼ばれている貴方という言葉が、昔つかっていたアンタに戻る瞬間がグレンはとても好きだ。
見下ろしたアルフレートの頬をそっと撫でると、口付けをした。
すぐに、主導権はアルフレートに移る。
柔らかな唇をお互いに食む。
唾液が流れ落ちるのも気にせず、舌を絡ませると、グレンの後頭部をアルフレートが乱暴に撫でた。
唇は離れたものの顔自体は至近距離にあり、かかる吐息が熱く感じられる。
アルフレートの金色の目は情欲に揺らめいていた。
グレンはそれを見ると目を細める。
それから、ぺろりと唇を舐めた。
アルフレートはゴクリと唾を飲み込む。
「お前趣味悪いよな。」
てっきりたまたま近くにいたのが自分だったから、組み伏せて壊れないのが自分だったから関係を持ったのだとグレンは思っていた。
別に男が好きだろうがなんだろうが、あえてグレンを選ぶ必要は無いのだから。
「は?俺は趣味はいいですし、見る目もありますよ。」
そういうとアルフレートはグレンの腕をひっぱる。
体制を崩してベッドに横たわった、グレンのシャツのボタンを器用にはずした。
それから、グレンの筋張った首筋をそっと撫でた。
ほら、やっぱり趣味悪いと思いながら、グレンはアルフレートの背中に腕を伸ばした。
了
お題:甘々、子煩悩
18
あなたにおすすめの小説
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
愛を知らない少年たちの番物語。
あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。
*触れ合いシーンは★マークをつけます。
乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました
西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて…
ほのほのです。
※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王
ミクリ21
BL
姫が拐われた!
……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。
しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。
誰が拐われたのかを調べる皆。
一方魔王は?
「姫じゃなくて勇者なんだが」
「え?」
姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる