一から百まで

渡辺 佐倉

文字の大きさ
上 下
72 / 101

72

しおりを挟む
自分の流している涙が、恥ずかしい話をした所為なのか、快楽に滲んでいるのかもよく分からない。

「あっ、あっ、それ、やらッ……。」

くちくちと音を立てながら後ろを解される。

風呂の淵に上半身を預けて尻を百目鬼に突き出してる。

泣いている所為で瞼も腫れぼったい。

体をくまなく洗われて、それからなすがままにもう一度風呂につかってそれからこうやって後ろを解されてる。

「泡が風呂に入っちゃうだろ!?」

俺がそう言っても百目鬼は聞かなかった。

「ここ源泉かけ流しだから。」

というよく分からない答えが返ってきて中を探られるように撫でられる。

前回百目鬼のものがちゃんと入らなかったことは覚えている。
中をひろげないと無理だ。

理屈は分かっているけど、百目鬼の太い指が中をを広げる様に撫でると、たまらなくなる。
逃げ出したいような縋りたいような。
見て欲しいような見ないで欲しいような。

前回より確かに官能を拾ってしまっていて、はしたない声が出る。

腰がゆるゆると震えて、前だって反応している。
そこをどういう風に使うかもう知っている体は、百目鬼を求めてしまっている。

「柔らかくなってきてる。」

俺に覆いかぶさる様に後ろから抱き着きながら百目鬼が言う。
声が熱い。甘い。

その声を聞いただけでぞくぞくとする。

この体制は抱き着く先が無くて、手を伸ばした先に百目鬼がいて欲しいと思ってしまう。

――ピピピッ

目の前の脱衣室から音がする。

「ああ、時間切れだ。」

百目鬼が言う。

「へ?」
「タイマーセットしておいたから。」

ここ一時間だけだっただろ?と言われてようやくおもいだす。

百目鬼が指を抜く瞬間、物足りなさそうな嬌声が出てしまう。

「流すから。」

百目鬼に手を引かれてそれに従う。
相変わらず涙は止まらなくてぐずぐずだ。

綺麗に流してもらっている。という実感があまりわかない。

そのまま、浴衣を着せられて、二人で部屋に戻る。
目頭が熱い。

妙に甘えたい様な不思議な気分になる。

部屋に戻ると、百目鬼から冷蔵庫に入っていた、オレンジジュースを渡される。

「ありがとう。」

一口二口飲んでようやく、水分が少し足りていなかったことに気が付く。

「こういう無防備すぎるのも考え物だな。」

よく分からない事を百目鬼が言う。

体中が甘く疼いている様な気がした。
しおりを挟む

処理中です...