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壱、
しおりを挟むダイナミックに正午の報せを我々に対して告げるスピーカー放送のサイレンが、今、けたたたたたたたましく鳴ったのだけれども、如何やら俺がいるここところは、ちょうど、ふたつの離れた場所に立っているスピーカーから流れる大狂騒音サウンドが両方ともダイレクトに聴こえる境界エリアみたいで、同時ではないのだけれども、一瞬か?それかワンテンポくらい?どちらかのスピーカーがどちらかのスピーカーよりも遅れて鳴りそれらかまびびびびびすしき音響をこちらは一手に引き受けるものだから、両の耳は混濁ター、輪唱?復唱?不協和音?和音には決してならず、歪な響きのコンクール!そら薬服用のタイミングもとち狂うわな! / 近くの保育園からは、園児たちの唄声が聴こえる。寺院は、墓地の管理責任者であると同時におそらく、法人としてその保育園を経営しているのだろうたぶん。隣設。ストリートに響き渡るは園児たちによるエッジの効いた合唱。「屋根より高い鯉のぼり~♪【…中略…】面白そうに泳いで ~ ない♪」と、複数のエッジィーな園児たち、そうやってふざけ大声で唄っている子供たちの声が聴こえ、そのときの表情は手に取るように判る。後々の人生に爪痕を残しそうな三ツ子の魂、此処に在り!悪ふざけにこころなごみながら、 / 俺は、まだ所有者がおらず、それとも、所有者は既にいるのだけれども、これから建立予定か?敷地にセメントを流し込んでいるだけの平地、そこだけ、空き地みたいになっていて、都会の喧騒を離れた、ビル群に取り囲まれた中でひっそりと佇む子供たちの 遊び場みたいな?墓場の非共有スペースを不法占拠!まるでそこに住んでいるような気分。正に未体験ゾーン!それにしても、この地下にはまだ屍體はないよなー?なんて。 / 塀の向こう距離にしたらすぐ傍らで車が停車、エンジンを止めて、運転手がドアから(それとも、自らの眼で確かめてはいないから、もしかしたら、ルーフトップかも?)降りてピッ!とリモートコントロール施錠?カー事情、及び カーシステムに疎いから詳しくは判らないのだけれども、そして、門扉を開けて、こちらに近づいて来る足音。まさかの、鉢合わせ?しないよな?いつも最悪の状況を想定してしまうのだけれども。やっぱ、違った。よかった!よかった!安心!安心!いつも、いついつまでも、共有エリアと云うか、誰かがいきなり勝手に来てもおかしくない場所。自宅ではなく、親戚が住んでいたが亡くなり既に無人になっていて、合鍵を共有、いつでもだれでも血族親族であるならば出入りが自由に出来る家、おんなじシチュエーションだからドキドキする。紆余曲折の諸事情が積み重なり積もり積もってほぼ絶縁状態に近いから。一回も、そんな奇跡に遭遇したことなどないのだけれども、いつかその日が来るのではないか?と、戦々恐々としている。 / それから暫くのあいだ、動向を静かにこころ落ち着かせながらその足取りだけで把握していたのだけれども動静、水場から、いつまで経っても待てど暮らせどステファンセドゥナウィ、帰って来ない ギブイットアウェイ。強風でなかなか線香の火がつかないのだろうか?ライターの音は聴こえた。一応、ちょうど燈籠部分(内部)が防風の役目を果たす空間を擁した石燈籠のようなフォルムのファイヤ スターターがあの場所にはあった筈なのだけれどもプロディジー。いつまで経っても、その場所から移動する気配がない。同じ墓地の利用者とは、おなじ穴の狢ではなくおなじマンションの住民よりも遠い縁と謂えども、顔を決して合わせたくない。挨拶をしたくも、返したくもないからいなくなってから、水場へ。 /それから一通りのお墓参りマニュアル動作を終え、帰ろうとしたらばそのとき、ちょうど風が吹いて卒塔婆が鉄製のスタンドに当たりカタカタと、それから、暫くの間 鳴り続け、次第に風は強くなり何度も何度も執拗な迄に音を立て鳴り続けるものだからなんだか、俺は、あたかも先祖伝来、時空を超えた霊的礼拝を受けているかのような錯覚を憶えた。【了】
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