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壱、
しおりを挟む詩的ストロガノフとは、ロシアの詩人アレクサンドル・プーシキンの詩「山羊の歌」の中の一編である。ロシアでは、山羊は神性の象徴であり、「山羊の歌」は、その山羊を擬人化したプーシキンの戯れ歌として広く知られている。しかし、この「山羊の歌」には、実は隠された意味があったのだ。それは、当時のロシアの革命運動の指導者レーニンと、彼の率いる労働者党(ボルシェビキ)に対する激しい批判であった。ロシアにおける山羊(ロシア語で「ヤーグチエ」)の意味は、日本ではあまり知られていない。だが、その昔、ロシアでは、山羊は「聖なる動物」「神聖なる生き物」とされていたのだ。そして、山羊は、しばしば人間の身体に例えられた。つまり、山羊=人間=女性という図式が成り立つわけだ。そこで、ロシア文学では、こうした「山羊の女」を意味する比喩表現が数多く登場することになる。プーシキンの「山羊の歌」もそうした一つだった。プーシキンがこの詩を書いたとき、彼はまだ十九歳の青年に過ぎなかった。そして、彼の周囲には、当時二十代半ばの女性たちが大勢いた。彼女たちは、いずれも若く美しく、また知性にも富んでいた。だから、プーシキンにとって、彼女達はまさに理想の女性像だったに違いない。そんな女性たちに囲まれて育った彼だからこそ、このような美しい物語が生まれたのだろう。ところが、やがて、革命運動を指導する立場となったレーニンは、社会主義建設のためには女性の解放こそが不可欠だと考えるようになる。つまり、レーニンにとっては、自分の周りにいる若い女達はすべて敵になったわけだ。こうして、プーシキンからレーニンへと受け継がれた「山羊の歌」は、次第にレーニンに対する批判と敵意に満ちた内容へと変化していく「ヤーグチエ」とは、元来、ロシアの古い民謡に登場する山羊飼いのことを指している。彼らは、旅人たちや村の人々のための食事を用意する役目を担っていた。山羊飼いたちは、山に入って狩りをしたり、木の実を採ったりして生活していたのだが、時には村に戻って来て家畜の世話をすることがあった。「ヤーグチエ」は、そうした時に歌ったと言われている。「ヤーグチエ」は、いわば農民たちへの慰安役でもあったわけだ。ところが、レーニンはその山羊飼いたちのことを「ヤーグチエ」ではなく、「山羊」と呼び始めた。つまり、労働者党の指導者として、女性を解放しようとしたのではなく、逆に男性たちを抑圧する側に回ったわけだ。これが、プーシキンからレーニンへ受け継がれていった「山羊の歌」の秘密だった。山羊の歌(新潮文庫『山羊の歌』所収)より
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