5 / 11
#2
1.
しおりを挟む
夏休み初日の早朝、俺は一人先に学食へ来ていた。
学食にはまだ人が片手で数えられるほどしかいない。
そんな静まった空間で、俺は朝食を食べるでもなく、備え付けのテレビをぼーっと見つめながら考え事をしていた。
「はぁ……」
昨日は散々だった。
同性の後輩と親友に告白されるなんて。
女子とですら恋愛経験がない俺にとっていきなり同性から告られても理解のしようがない。
結局、あれから部屋を出ていった瑠唯人は朝になっても戻って来なかった。
おそらく他の人の部屋に泊まったのだろうが、こっちは一人きりになったせいで色々考え込んでしまってほとんど眠れなかった。
「よう亮太」
急に声を掛けられ驚いて振り替えると、そこにいたのは狼獣人の須野先輩だった。
右手には、給湯室で作ってきたであろうカップラーメンを持っている。
「あっ須野先輩、おはようございます。」
「おはよ。それよりなにボーっとしてたんだ? 賢者タイムか?」
「ちっ、違いますよ!!」
「ははっ、お前はそんなことしなそうだもんな」
「もうー......それより先輩、朝からカップラーメンって重くないですか?」
「ん? まあいいじゃねーか、そんな気分なんだよ。」
「それなら、別になんとも言いませんけど……」
先輩の健康のために、と言おうとしたがどうせ反論されそうだからやめておいた。
「それより、こんな朝っぱらから一人で何してたんだ?」
先輩は俺の隣に座ってカップラーメンをすすり始めた。
静かな食堂に、「ズズッ」という音だけが響き渡る。
「ちょっと考え事してて……」
「ふーん。何を?」
「ええっと……」
男二人に告白された……なんて言ってもどうせバカにされるだけだろう。
しかし、勘の良い先輩をごまかせるような宛もなく、言葉に詰まってしまった。
「どうせあれだろ。冬馬と瑠唯人に告られた事だろ?」
「えっ!?」
驚きで目を丸くさせた俺に、先輩はニヤニヤという視線を向けている。
いくら勘の鋭い先輩といえど、昨日の出来事を当てられる訳がない。
もしかして相当顔に出やすいのか、俺。
「な、なんで知ってるんすか!?」
「なんでって、寮中で噂になってんだろうが」
「ええっ!?!?」
さっきよりも大きい声をあげた俺に、先輩だけでなく学食中の人が肩をビクンと震わせた。少数ではあるものの、確かに冷たい視線を送られている気がする。
……そんなことより、なんで昨日の夜の事がもう寮中に広まってるんだろうか。
もしかして、誰かに見られてたとか……?
「ブッ!!」
なぜか、急に途端に吹き出した先輩が腹を抱えてゲラゲラと笑い始めた。
その笑い声で、また学食中の人が驚いてこちらを振り返って見ている。
その中、俺は半ば涙目で哄笑する先輩の意図が分からず訝しげな顔で見つめていた。
「うそうそ、冗談に決まってんだろw」
「えっ、冗談......?」
「あいつらが告ったことは他に俺しかしらねえよ」
そうだ、先輩はこういう人だった。
いつも勘の鈍い俺に嘘をついてその反応を楽しんでいるのだ。
簡単に騙されてしまい悔しくなった俺は、頬を膨らませ、出来る限り不服そうな顔で先輩を睨みつけた。
「それにしても、なんで先輩はこのこと知ってるんです? まさか覗き見してたんですか......?」
もし仮に、冬馬にお互い全裸の状態で告られていたところを見られていたとしたら......は、恥ずかしすぎる。
「バカ、そんな外道なことするかよ」
「じゃあなんで......」
「瑠唯人に聞いたんだ」
瑠唯人に? そういえば昨日の夜先輩は瑠唯人を部屋に呼んでいた。
そして、先輩の部屋から帰ってきたときに告白されたのだ。
もしかしたら、その時瑠唯人は先輩に言っていたのだろうか。
「最近瑠唯人の様子がおかしかったから昨日、どうしたんだって聞いたんだよ。そしたら、お前のことが好きだけどどうやって気持ちを伝えればいいか悩んでるって」
確かに瑠唯人はあまり感情を表に出さないタイプだ。
だから瑠唯人が俺の事を好いてるなんて今まで思いもしなかった。
「だから言ってやったんだ、難しく考えずに自分の気持ち伝えてこいって」
「でも何で俺なんかを……」
「何でお前を好きになったのかって? それはあいつにしか分かんねぇけど、自分でも気付いてない魅力があるんじゃないか?」
自分でも気付いてない魅力……? 別に男に好かれるような魅力あるとは到底思えないけど。
そんな見当のつかないことを考えていると、先輩の目線が俺の後ろに向いたことに気がついた。
学食にはまだ人が片手で数えられるほどしかいない。
そんな静まった空間で、俺は朝食を食べるでもなく、備え付けのテレビをぼーっと見つめながら考え事をしていた。
「はぁ……」
昨日は散々だった。
同性の後輩と親友に告白されるなんて。
女子とですら恋愛経験がない俺にとっていきなり同性から告られても理解のしようがない。
結局、あれから部屋を出ていった瑠唯人は朝になっても戻って来なかった。
おそらく他の人の部屋に泊まったのだろうが、こっちは一人きりになったせいで色々考え込んでしまってほとんど眠れなかった。
「よう亮太」
急に声を掛けられ驚いて振り替えると、そこにいたのは狼獣人の須野先輩だった。
右手には、給湯室で作ってきたであろうカップラーメンを持っている。
「あっ須野先輩、おはようございます。」
「おはよ。それよりなにボーっとしてたんだ? 賢者タイムか?」
「ちっ、違いますよ!!」
「ははっ、お前はそんなことしなそうだもんな」
「もうー......それより先輩、朝からカップラーメンって重くないですか?」
「ん? まあいいじゃねーか、そんな気分なんだよ。」
「それなら、別になんとも言いませんけど……」
先輩の健康のために、と言おうとしたがどうせ反論されそうだからやめておいた。
「それより、こんな朝っぱらから一人で何してたんだ?」
先輩は俺の隣に座ってカップラーメンをすすり始めた。
静かな食堂に、「ズズッ」という音だけが響き渡る。
「ちょっと考え事してて……」
「ふーん。何を?」
「ええっと……」
男二人に告白された……なんて言ってもどうせバカにされるだけだろう。
しかし、勘の良い先輩をごまかせるような宛もなく、言葉に詰まってしまった。
「どうせあれだろ。冬馬と瑠唯人に告られた事だろ?」
「えっ!?」
驚きで目を丸くさせた俺に、先輩はニヤニヤという視線を向けている。
いくら勘の鋭い先輩といえど、昨日の出来事を当てられる訳がない。
もしかして相当顔に出やすいのか、俺。
「な、なんで知ってるんすか!?」
「なんでって、寮中で噂になってんだろうが」
「ええっ!?!?」
さっきよりも大きい声をあげた俺に、先輩だけでなく学食中の人が肩をビクンと震わせた。少数ではあるものの、確かに冷たい視線を送られている気がする。
……そんなことより、なんで昨日の夜の事がもう寮中に広まってるんだろうか。
もしかして、誰かに見られてたとか……?
「ブッ!!」
なぜか、急に途端に吹き出した先輩が腹を抱えてゲラゲラと笑い始めた。
その笑い声で、また学食中の人が驚いてこちらを振り返って見ている。
その中、俺は半ば涙目で哄笑する先輩の意図が分からず訝しげな顔で見つめていた。
「うそうそ、冗談に決まってんだろw」
「えっ、冗談......?」
「あいつらが告ったことは他に俺しかしらねえよ」
そうだ、先輩はこういう人だった。
いつも勘の鈍い俺に嘘をついてその反応を楽しんでいるのだ。
簡単に騙されてしまい悔しくなった俺は、頬を膨らませ、出来る限り不服そうな顔で先輩を睨みつけた。
「それにしても、なんで先輩はこのこと知ってるんです? まさか覗き見してたんですか......?」
もし仮に、冬馬にお互い全裸の状態で告られていたところを見られていたとしたら......は、恥ずかしすぎる。
「バカ、そんな外道なことするかよ」
「じゃあなんで......」
「瑠唯人に聞いたんだ」
瑠唯人に? そういえば昨日の夜先輩は瑠唯人を部屋に呼んでいた。
そして、先輩の部屋から帰ってきたときに告白されたのだ。
もしかしたら、その時瑠唯人は先輩に言っていたのだろうか。
「最近瑠唯人の様子がおかしかったから昨日、どうしたんだって聞いたんだよ。そしたら、お前のことが好きだけどどうやって気持ちを伝えればいいか悩んでるって」
確かに瑠唯人はあまり感情を表に出さないタイプだ。
だから瑠唯人が俺の事を好いてるなんて今まで思いもしなかった。
「だから言ってやったんだ、難しく考えずに自分の気持ち伝えてこいって」
「でも何で俺なんかを……」
「何でお前を好きになったのかって? それはあいつにしか分かんねぇけど、自分でも気付いてない魅力があるんじゃないか?」
自分でも気付いてない魅力……? 別に男に好かれるような魅力あるとは到底思えないけど。
そんな見当のつかないことを考えていると、先輩の目線が俺の後ろに向いたことに気がついた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる