【新訂短編版_あやしい奴ら】うるさいお父さん

ふぁーぷる

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うるさいお父さん 

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「あなた煩いのよ!」

「毎日毎日、電車で乗り合わせた人の文句ばかり」

「鼻がマスクから出てったとか」

「大声で喋ってたとか」

「家に持ち帰らずにその場所でその人に言ったらどうなのよ」

「あ~もういや、ほんとウザい」

 家で日々の出来事ぐらい話してもいいだろうよ、ダメなのか、ハ?
 文句じゃなく出来事報告じゃないか。
 こちらこそ気が滅入るハ~…。
 ガミガミ嫁め!


「ダメよ、パパは電車じゃ狸寝入りだから」

「見て見ぬ振りしかしない弱い大人だから」

「正論だけは当事者いないとこでガンガン言うけどね」

「学校で言ってたそういうのって偽善者だって」

 中2の娘が言う通り。
 どこで目撃されたのかは分からないが狸寝入りの事なかれ主義。
 はらわた煮えくりだけど、狸寝入り。


「ダメだよ!パパにそんな事言っちゃ」

「迂闊に注意したら逆恨みされて刺されるよ!」

 高3の長男が言う通り今の世は危険だ。
 みんなが押し込めた鬱憤を腹に溜め込んでいる。
 ちょっと突けば暴発する可能性がある。
 危険だ。


 数日後、発車待ちの電車。
 あーだこうだ家で言われ、また腹立たしい出来事が展開している。
 電車に乗るとストレスが溜まる。

 ぶつぶつぶつぶつ、念仏みたいに喋る女の声が聞こえる。
 非常に煩い!
 何を言ってるのか聞き取りにくい声量だが、
 ぶつぶつぶつぶつ…耳障りだ。

 相手、女だし、日頃の鬱憤もあるので狸寝入りをやめて隣を勢いよく向く。

 …。

 …。

 ここは座席の一番端でその隣には誰も居ない。

 帰りの電車。
 夜の帳が降りて対面の窓ガラスに自分の姿が映っている。
 そこにも誰も映って居ない。

 疲れてるのか。

 空耳か。

 気を取り直して狸寝入りに入る。

 ぶつぶつぶつぶつ、ぶつぶつぶつぶつ聞こえ始める。

 何なんだ!
 うるせ~。

 狸寝入りの目を薄目で開くと…。

 ぶつぶつぶつぶつ、ぶつぶつぶつぶつ
 女の口調で喋りまくる自分が見えた。

 俺なのか。
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