3 / 12
消された記憶3
しおりを挟む
ーー窓の外から雨の音がする。
シリウスとベテルギウスが部屋を出て行ってから、だいぶ時間が経った。ラビィは腕をさする。痣は痛むものの、歩けないほどではない。
彼女はもう一度手鏡で自分の姿を見る。大きな赤い瞳、さらさらの白い髪。腕、足、ワンピースの上からお腹に触れてみた。
ーーわたしはなにかが原因で一時的に声が出なくなっていて、記憶も失ってしまったということだよね。
ーーん、んーーーっ。
やはりいくら声を出そうとしても、声は出せない。この状況はかなり生活に支障がありそうだ。彼女は声が出せないかわりに、身振り手振りで相手に気持ちを伝えてみようと考えていた。
ーーガチャ。
部屋の扉が開く音が聞こえた。
「ーーお待たせ、ラビィ」
ーーこの声はシリウスさんだ。
「ああ、その様子だと、部屋でずっと待っていてくれたんだね」
ラビィはうんうんと頷く。
「表情が明るくなったね。夕飯までまだ時間があるから、少しだけ僕のお屋敷を案内しようか」
ーーそういえば、さっきまで一緒にいたはずのベテルギウスさんの姿が見えない。
「ーーああ、ベテルギウスは自分の家に帰ったよ。今、このお屋敷には僕とラビィと限られたメイドしかいない」
ーーそうなんだ。
「近々、もう一人の友人も貴女に紹介するね」
ラビィはうんうんと頷いてシリウスのあとをついていく。
ーーこのようすだとお友達との話しは深刻な話しではなかったみたい。なにもなくてよかった。
廊下を歩いている途中、自然にラビィの手がシリウスの手に軽く触れてしまった。
ーーあっ、ごめんなさい。
彼女はすぐに手を離した。
シリウスはラビィの視線を追う。
ーーああ、シリウスさんはすごく優しくて、ついつい頼ってしまいそうになる。わたしもしっかりしないと。
ラビィは下をうつむく。表情は白くて長い髪で隠れていて見えない。
シリウスは、笑った。
廊下を通り過ぎるとき、大きな窓から庭を見た。お屋敷のメイドが持っていた傘を折りたたんでいる。
ーー雨があがったみたい。
キッチン、バスルーム、トイレ、二階の客室、広々としたお庭。手入れをされた花壇、柑橘系の木々ーー……。
「明日は僕も休日だから買出しに行こう」
ーーおかいもの?
「これは女性をお屋敷に招いている上で、たいへん申し訳ない話しなんだけど、客人の貴女が着る衣服が全く揃っていなくて、明日一緒に見て欲しいんだ」
ーーたしかにクローゼットの中には女性もののお洋服がたくさんありましたが、それは他の誰かのもので、わたしが着れるサイズのものではありませんでした。
ーーしかし、わたしはお金がない。お金……もってない。
ラビィはまるでうさぎのように小さくなった。
「ーー? なに? その可愛らしい仕草は僕にいったいなにを伝えたいの?」
ラビィは「金がない」とは、はっきりと言えなかった。だから、うさぎのふわふわの両手を胸の前でバツにして言った。シリウスはかがんで真っ白なうさぎの小さな唇を凝視する。
ーーい。
「ーーい?」
ーーけ。
「ーーき?」
ーーちがう、シリウス。わたしの口をよく見て! よーく見て!? ケのお口。これはケのお口だよ。
「ーーま・せ・ん? ハァ?」
ーーまずい。わたしの口が小さすぎて、口パクでは伝わらない!!! いっしょうけんめい考えたのに失敗だ。
「この僕の誘いを断った……」
ーーああっ、ちがいます! わたしは、いけませんと伝えました。それをシリウスさんはいきませんと、ごかいしたまでですっ!
「ーーふぅん。この僕と買い物に行きたくないんだ。ーーわかった、じゃあ、明日楽しみにしててね」
いきなりシリウスの口調が変わった。彼の機嫌をそこねてしまったようだ。
ーーあああ、そんなつもりはなかったんだ。
「手を握っても?」
ラビィがふらふらと歩いていたから、それが危なっかしく見えたのか、ぐいっと手を握られた。彼の骨ばった大きな手のひらに安心する。
シリウスは笑みを浮かべた。
そのあと、二人はお屋敷に戻り、食事を共にした。夕食はお肉に野菜を巻いたスープ。焼きたてのパン。デザートにアイスクリームの焼きリンゴ添えが出た。
食事のあと、ラビィは大きなバスルームを借りて、メイドさんに付き添ってもらいながら入浴した。魔法が使えない彼女はメイドさんの持つ特殊な魔法具の魔法で髪を乾かしていた。
「魔法って便利なものなのね」
昨日の今日なので、彼女の体はだいぶ疲れていて、髪を乾かして貰うときに眠気が襲って、乾かして貰いながら眠っていた。
あたたかくて、ふわふわと気持ちいい気分になって。だれかの懐かしい声が遠くで聞こえて来る……。
「ーーおやすみ、ラビィ」
ラビィは深い眠りについた。
☆
〈☆シリウスのお屋敷。リビングルーム。〉
部屋にはたくさんのトランクが並べられる。一つのトランクを開けると、可愛らしい靴が出てきた。次のトランクを開けると、綺麗なワンピースが出てくる。もう一つのトランクにはつばの大きな帽子が出てきた。
「もう、いりませんとは言わないよね?」
椅子に座ったシリウスが足を組んで得意げにラビィのことを上から見下ろしている。
乙女ごころをくすぐるかわいさとすてきがいっぱい詰まった空間。メイドたちもその様子をうっとりと眺める。仕立屋の店主がトランクを開けたり閉めたりする度に新しい洋服が出てくる。
ーーうわぁ、まっしろなワンピースや小花柄のかわいらしいワンピース。この生地にレースの上着をあわせたら清楚な感じでとっても良いんじゃない? 靴はサンダルもいいけど、ヒールがあまり高くない靴も歩きやすいだろうなぁ……。……あっ、そうじゃなかった、わたし、お金を持っていないんだっけ。
シリウスは紅茶を飲んでいる。
メイドたちは物珍しいトランクに夢中だ。
ーーとても話しを切り出せる雰囲気じゃない。
「どのお洋服もラビィさんにお似合いですね」
「お着換えもするからせめて一日二着……最低でも六なり十あっても問題ありませんね」
ラビィは朝一番に、シリウスのところに行き「おかね」と、伝えたのだが、「お菓子」と、伝わってしまい、キャンディを渡された。もう一度、「おかね」と、伝えたら、「おもち?」と、首を傾げられた。おそらく、お金という言葉はシリウスには通じないらしい。
ーーああああ、この状況いったいどうすれば。
なかなかラビィは洋服を選ばないものだから、シリウスは紅茶でお腹がだいぶ膨れてしまった。
「それではラビィの部屋のクローゼットを一つ、仕立屋と契約しよう。そちらにこちらから注文したものを直接納品していただいて構わない」
ーーんんっ!?
「それでは定期的にお店のカタログも転送させていただきますので、お好みのものがございましたら、お申込みください」
ーーえええっ!?!?
「ーーそれで問題ない」
ーー!?!?!? クローゼットをけいやく? お洋服をのうひん? 転送? はなしについていけない。
「……それでスターのことだが、支払いは納品時に請求書も一緒に送って貰えるか?」
ーースター?? もしかして「スター」って、「おかね」のこと? スターと、言えば、伝わるのね。私は、そっとシリウスのそばに寄って相談した。
「スターを持ち合わせていない? ーーそんなのあたりまえだろう。第一に、君に払わせるワケないだろう」
ーーうっ、うしろのメイドたちの視線が突き刺さる。見知らぬ人に食事や住居を提供していただいている上に、自分で使う洋服も買っていただくことになってしまうなんて。
シリウスは洋服のカタログをペラペラとめくったあと本を閉じた。
「ーーこれから、君には僕のそばについて仕事をしてもらうのだから、これくらい当然だ」
ーーおしごと!?!?!?
「ーーふふっ、かなり重要で責任のある仕事だ」
ーーその、笑みが、こ、こわいんですけど。
☆
〈☆騎士団教会。門前。〉
「ーー相変わらず、教会に入る時は緊張するな」
「お久しぶりです、ベテルギウス様」
教会の門番はベテルギウスに深く頭を下げる。ベテルギウスは上下黒の戦闘服に身を包む。肩の星と雪結晶、胸元の星と狩人の紋章がキラリと輝いていた。自分の魔法具である弓と弓矢を背負っている。彼の赤髪とオレンジ色の瞳は太陽の影に隠れる。
「事前に団長に話はつけたが、中に入れて貰えるだろうか」
「お話は聞いております。受付へどうぞ、こちらです」
ベテルギウスは騎士団の教会へ入って行った。長い髪を金の髪飾りできつく結んでいるからなのか、いつものやわらかな印象の彼とは違って見えた。
〈☆騎士団教会。客室。〉
☆
客室の扉が開く。
「ベテルギウス様、団長はもうすぐ戻られます」
「急な訪問に対応していただき、感謝する」
「いえ、こちらこそ、お戻りいただきありがとうございます」
ベテルギウスは天井を見た。自分が在籍していた頃と何も変化のない部屋。窓。毎日見ていた窓の外の風景。
「戻ってきた……つもりはないんだけどな」
ベテルギウスは鼻で笑う。
まだ時間がかかりそうだったので、彼は椅子に座るように言われたのだが、自分の定位置は扉の前だったので、と、何度か断っていた。
扉の外、通路には騎士団の仲間が声をかけて来た。ベテルギウスは優しく微笑んだ。
「……さぁ、ここからどうやって旧友を騙そうか」
静かな部屋に時計の音が鳴り響く。
シリウスとベテルギウスが部屋を出て行ってから、だいぶ時間が経った。ラビィは腕をさする。痣は痛むものの、歩けないほどではない。
彼女はもう一度手鏡で自分の姿を見る。大きな赤い瞳、さらさらの白い髪。腕、足、ワンピースの上からお腹に触れてみた。
ーーわたしはなにかが原因で一時的に声が出なくなっていて、記憶も失ってしまったということだよね。
ーーん、んーーーっ。
やはりいくら声を出そうとしても、声は出せない。この状況はかなり生活に支障がありそうだ。彼女は声が出せないかわりに、身振り手振りで相手に気持ちを伝えてみようと考えていた。
ーーガチャ。
部屋の扉が開く音が聞こえた。
「ーーお待たせ、ラビィ」
ーーこの声はシリウスさんだ。
「ああ、その様子だと、部屋でずっと待っていてくれたんだね」
ラビィはうんうんと頷く。
「表情が明るくなったね。夕飯までまだ時間があるから、少しだけ僕のお屋敷を案内しようか」
ーーそういえば、さっきまで一緒にいたはずのベテルギウスさんの姿が見えない。
「ーーああ、ベテルギウスは自分の家に帰ったよ。今、このお屋敷には僕とラビィと限られたメイドしかいない」
ーーそうなんだ。
「近々、もう一人の友人も貴女に紹介するね」
ラビィはうんうんと頷いてシリウスのあとをついていく。
ーーこのようすだとお友達との話しは深刻な話しではなかったみたい。なにもなくてよかった。
廊下を歩いている途中、自然にラビィの手がシリウスの手に軽く触れてしまった。
ーーあっ、ごめんなさい。
彼女はすぐに手を離した。
シリウスはラビィの視線を追う。
ーーああ、シリウスさんはすごく優しくて、ついつい頼ってしまいそうになる。わたしもしっかりしないと。
ラビィは下をうつむく。表情は白くて長い髪で隠れていて見えない。
シリウスは、笑った。
廊下を通り過ぎるとき、大きな窓から庭を見た。お屋敷のメイドが持っていた傘を折りたたんでいる。
ーー雨があがったみたい。
キッチン、バスルーム、トイレ、二階の客室、広々としたお庭。手入れをされた花壇、柑橘系の木々ーー……。
「明日は僕も休日だから買出しに行こう」
ーーおかいもの?
「これは女性をお屋敷に招いている上で、たいへん申し訳ない話しなんだけど、客人の貴女が着る衣服が全く揃っていなくて、明日一緒に見て欲しいんだ」
ーーたしかにクローゼットの中には女性もののお洋服がたくさんありましたが、それは他の誰かのもので、わたしが着れるサイズのものではありませんでした。
ーーしかし、わたしはお金がない。お金……もってない。
ラビィはまるでうさぎのように小さくなった。
「ーー? なに? その可愛らしい仕草は僕にいったいなにを伝えたいの?」
ラビィは「金がない」とは、はっきりと言えなかった。だから、うさぎのふわふわの両手を胸の前でバツにして言った。シリウスはかがんで真っ白なうさぎの小さな唇を凝視する。
ーーい。
「ーーい?」
ーーけ。
「ーーき?」
ーーちがう、シリウス。わたしの口をよく見て! よーく見て!? ケのお口。これはケのお口だよ。
「ーーま・せ・ん? ハァ?」
ーーまずい。わたしの口が小さすぎて、口パクでは伝わらない!!! いっしょうけんめい考えたのに失敗だ。
「この僕の誘いを断った……」
ーーああっ、ちがいます! わたしは、いけませんと伝えました。それをシリウスさんはいきませんと、ごかいしたまでですっ!
「ーーふぅん。この僕と買い物に行きたくないんだ。ーーわかった、じゃあ、明日楽しみにしててね」
いきなりシリウスの口調が変わった。彼の機嫌をそこねてしまったようだ。
ーーあああ、そんなつもりはなかったんだ。
「手を握っても?」
ラビィがふらふらと歩いていたから、それが危なっかしく見えたのか、ぐいっと手を握られた。彼の骨ばった大きな手のひらに安心する。
シリウスは笑みを浮かべた。
そのあと、二人はお屋敷に戻り、食事を共にした。夕食はお肉に野菜を巻いたスープ。焼きたてのパン。デザートにアイスクリームの焼きリンゴ添えが出た。
食事のあと、ラビィは大きなバスルームを借りて、メイドさんに付き添ってもらいながら入浴した。魔法が使えない彼女はメイドさんの持つ特殊な魔法具の魔法で髪を乾かしていた。
「魔法って便利なものなのね」
昨日の今日なので、彼女の体はだいぶ疲れていて、髪を乾かして貰うときに眠気が襲って、乾かして貰いながら眠っていた。
あたたかくて、ふわふわと気持ちいい気分になって。だれかの懐かしい声が遠くで聞こえて来る……。
「ーーおやすみ、ラビィ」
ラビィは深い眠りについた。
☆
〈☆シリウスのお屋敷。リビングルーム。〉
部屋にはたくさんのトランクが並べられる。一つのトランクを開けると、可愛らしい靴が出てきた。次のトランクを開けると、綺麗なワンピースが出てくる。もう一つのトランクにはつばの大きな帽子が出てきた。
「もう、いりませんとは言わないよね?」
椅子に座ったシリウスが足を組んで得意げにラビィのことを上から見下ろしている。
乙女ごころをくすぐるかわいさとすてきがいっぱい詰まった空間。メイドたちもその様子をうっとりと眺める。仕立屋の店主がトランクを開けたり閉めたりする度に新しい洋服が出てくる。
ーーうわぁ、まっしろなワンピースや小花柄のかわいらしいワンピース。この生地にレースの上着をあわせたら清楚な感じでとっても良いんじゃない? 靴はサンダルもいいけど、ヒールがあまり高くない靴も歩きやすいだろうなぁ……。……あっ、そうじゃなかった、わたし、お金を持っていないんだっけ。
シリウスは紅茶を飲んでいる。
メイドたちは物珍しいトランクに夢中だ。
ーーとても話しを切り出せる雰囲気じゃない。
「どのお洋服もラビィさんにお似合いですね」
「お着換えもするからせめて一日二着……最低でも六なり十あっても問題ありませんね」
ラビィは朝一番に、シリウスのところに行き「おかね」と、伝えたのだが、「お菓子」と、伝わってしまい、キャンディを渡された。もう一度、「おかね」と、伝えたら、「おもち?」と、首を傾げられた。おそらく、お金という言葉はシリウスには通じないらしい。
ーーああああ、この状況いったいどうすれば。
なかなかラビィは洋服を選ばないものだから、シリウスは紅茶でお腹がだいぶ膨れてしまった。
「それではラビィの部屋のクローゼットを一つ、仕立屋と契約しよう。そちらにこちらから注文したものを直接納品していただいて構わない」
ーーんんっ!?
「それでは定期的にお店のカタログも転送させていただきますので、お好みのものがございましたら、お申込みください」
ーーえええっ!?!?
「ーーそれで問題ない」
ーー!?!?!? クローゼットをけいやく? お洋服をのうひん? 転送? はなしについていけない。
「……それでスターのことだが、支払いは納品時に請求書も一緒に送って貰えるか?」
ーースター?? もしかして「スター」って、「おかね」のこと? スターと、言えば、伝わるのね。私は、そっとシリウスのそばに寄って相談した。
「スターを持ち合わせていない? ーーそんなのあたりまえだろう。第一に、君に払わせるワケないだろう」
ーーうっ、うしろのメイドたちの視線が突き刺さる。見知らぬ人に食事や住居を提供していただいている上に、自分で使う洋服も買っていただくことになってしまうなんて。
シリウスは洋服のカタログをペラペラとめくったあと本を閉じた。
「ーーこれから、君には僕のそばについて仕事をしてもらうのだから、これくらい当然だ」
ーーおしごと!?!?!?
「ーーふふっ、かなり重要で責任のある仕事だ」
ーーその、笑みが、こ、こわいんですけど。
☆
〈☆騎士団教会。門前。〉
「ーー相変わらず、教会に入る時は緊張するな」
「お久しぶりです、ベテルギウス様」
教会の門番はベテルギウスに深く頭を下げる。ベテルギウスは上下黒の戦闘服に身を包む。肩の星と雪結晶、胸元の星と狩人の紋章がキラリと輝いていた。自分の魔法具である弓と弓矢を背負っている。彼の赤髪とオレンジ色の瞳は太陽の影に隠れる。
「事前に団長に話はつけたが、中に入れて貰えるだろうか」
「お話は聞いております。受付へどうぞ、こちらです」
ベテルギウスは騎士団の教会へ入って行った。長い髪を金の髪飾りできつく結んでいるからなのか、いつものやわらかな印象の彼とは違って見えた。
〈☆騎士団教会。客室。〉
☆
客室の扉が開く。
「ベテルギウス様、団長はもうすぐ戻られます」
「急な訪問に対応していただき、感謝する」
「いえ、こちらこそ、お戻りいただきありがとうございます」
ベテルギウスは天井を見た。自分が在籍していた頃と何も変化のない部屋。窓。毎日見ていた窓の外の風景。
「戻ってきた……つもりはないんだけどな」
ベテルギウスは鼻で笑う。
まだ時間がかかりそうだったので、彼は椅子に座るように言われたのだが、自分の定位置は扉の前だったので、と、何度か断っていた。
扉の外、通路には騎士団の仲間が声をかけて来た。ベテルギウスは優しく微笑んだ。
「……さぁ、ここからどうやって旧友を騙そうか」
静かな部屋に時計の音が鳴り響く。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる