転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波

文字の大きさ
196 / 229
5章 高等部~そして卒業まで

5-17 たまにはこんな視点もあるのだが

しおりを挟む
‥‥‥人というのは、良く分からないことも多い。

 元々が人ではないからこそ、理解をしているわけでもないのだが、それでもある程度学んできている。

 それに、ずっとそばにいるからこそ、些細な変化も気が付きやすくもあって‥‥‥


「‥‥‥んー、アルス、大丈夫?昨晩も変な寝言言っていたよ?」
「変な寝言?いや、そんなのを口にする覚えもないんだけど‥‥‥」
「本当?」
「しいて言うのであれば、昨晩から続けて変な奴と夢の中で出会って、忠告を貰っているぐらいかな」
「原因、思いっきりその夢の人じゃないの?」

 ふわぁぁっと欠伸をしているアルスに問いかけてみるけれども、その返事はあやふやなものである。

 夢の中に二夜連続で出てくるって‥‥‥分からないけれども、何かロクデモナイ予感しかしない。


「キュルル‥‥‥不安、かも」
「まぁ、何かとわからないものが動いているとかって情報は聞けるから凄い悪くもないけれどね。でも、なんだろうな、本日はハクロから離れないほうが良いって、言われたんだよね」
「言われなくとも、そうだと思う。昨日から変なの、狙っているもの」

‥‥‥大事な大事な、私のアルス。

 彼が何者かにどのような目的で狙われているのかは分からないけれども、何かがあるのは非常に困る。

 アルスとは一緒にいたいのに、それを引き裂かれるのは嫌だ。

 だからこそ私は、大好きな彼を守るために、一生懸命策を練る。









「…‥‥今のところ、大丈夫、かな?」

 ピンっとあちこちで人には捉えられない細い糸を張って、周囲を警戒してみたが、今のところは不審な気配はない。

 けれども、昨日のいくつかの出来事は、私の糸の感知も避けていたので、今日はちょっと特別な糸も使用しているのだが…‥‥


―――ピンッ
「‥‥‥」

 っと、思っていたところで、ふとその特別な糸に反応が合った。

 以前に捉えられない、攻撃できなかった透き通った怪物に出くわして、手も足も出にくかった経験から学び、そして修得した警戒手段だったけれども見事に活きた様子。

 いや、もしかするとあの怪物の同類が、昨日から何かと仕掛けてきている者たちが生み出したものだったかもしれない。

 確証は持てないけれども、この糸に感知で出来たのであれば、される前に動くべきである。

 でも、今のアルスと離れるのは不味い予感がするので、私はそっと糸を操作し、意識の一部を人形に寄せてその視界を貰うことにした。


(‥‥‥うん、やっぱり見えない。でも、反応がある)

 アルスの方に目を向けつつ、人形から得られる情報を私の頭の中で確認していく。

 ちょっとばかり扱いやすい体の構造だった18番目あたりの姉さんの身体を模した蜘蛛の人形を動かし、周囲を見渡して糸の状態を見る。

 ぴんぴんっと当たり、普通の糸には反応はしていない。

 特殊な魔道具を用いた侵入という話もあったけれども、この感じだとその可能性が非常に高い。こういう能力を天然の生き物が持っているわけもないし、何より感じ取れるサイズは人間サイズ。

 でも、なんだろうこの感じ。人間のような姿形はしているけれども、何かがずれているというか、曲がっているような、言い表せない不気味さがある。

 人の思考に近い動きをしつつも、それでも大事な何かが壊れているかのような、呑まれているというような‥‥知りたくない代物。


 とはいえ、そんなのが動いていても、アルスに対して害をなすような真似をするのであれば、容赦はしない。

(‥‥‥キュルル)

 くいくいっと指を動かし、人形の手の先を更に動かして他の人形たちも出現させ、気配を消して忍び寄らせていく。

 さらに言えば、その人形たちもまた、特別製の糸で出来ているので相手を捕らえられるだろうけれども‥油断したら痛い目を見るのは分かっているので、気を抜くつもりはない。



ぐいっと強く糸を動かし、周囲から逃げられない状態にして飛び掛からせていく。
「----!?」

 そして相手の方も流石に触れられるとは思っていなかったのか驚愕の様子を見せたが、その動きは遅い。


 多くの人形で埋め尽くしつつ、他の人には迷惑をかけないようにその場から移動させ、別の人に投げておく。

 自分ではどうやればいいのか分からないからこそ、人形を介してその手の人がいるというのを知って、そちらに渡せばいいのはもう学んでいるのだ。


(‥‥‥キュル、これでどうにか、アルスへ変な事をする人、ちょっとは減らせたらいいんだけどなぁ)
「ハクロ、そろそろ次の授業だから移動するよー」
「キュル!わかったよー!」

 っと、意識を戻したところでアルスが話しかけてくれたので、私はさっさと意識を自分に戻した。

 ある程度分散して考えられるようにもなったけれども、やっぱり私は私としてアルスの事だけを考えたい。

 私にとって大事な人で、好きな人で、愛するべき人。

 私に対して色々とやってくれている人が存在して守ってくれているのは分かっているけれども‥‥‥でも、やっぱり私が彼を一番に守りたいもの。

「アルス、休み時間、ちょっと空に行こう!空なら、変な人、仕掛けようがないもの!キュルル!」
「そう?でも、移動があるけれども‥‥‥いや、この状況だからこそギリギリまで届かないところにいたほうが良いかも。それじゃ、ちょっとだけ一緒に空に連れてって」
「わかったよ!」

 ぎゅーーっと大事なアルスを抱きしめ、返事をして、私は翼を広げる。

 あの蜘蛛の身体も失せてしまったが、代わりに得た翼で少しでも安全な場所に彼と一緒にいるのが、今の状況で最適な回答。

 相手が空にいる私たちを狙う手段を持っていないとも限らないけれど、今は一瞬たりとも離れずに一緒にいたほうがいい。

 ついでに油断しないように空からも操作できるように糸を伸ばしつつ、私達は一緒に大空に飛び立つのであった。


‥‥‥愛するべき、私の番。奥さんになるんだったら、アルスのことは夫と言うべきなのかも。

 でも、アルスはアルスで変わらない。

「ふふふ、アルスと一緒の大空、やっぱり楽しい♪」

 大地を駆け抜ける疾走感もあれはあれでよかったけれども、大空で一緒にいるのも面白い。

 今はとりあえず、何事も起きなければいいなぁ‥‥‥‥
しおりを挟む
感想 574

あなたにおすすめの小説

35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一
ファンタジー
紹介文 「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」 そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。 失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。 ​「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」 ​手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。 電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。 さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!? ​森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、 罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、 競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。 ​これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。 ……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
 病弱な僕は病院で息を引き取った  お母さんに親孝行もできずに死んでしまった僕はそれが無念でたまらなかった  そんな僕は運がよかったのか、異世界に転生した  魔法の世界なら元の世界に戻ることが出来るはず、僕は絶対に地球に帰る

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

処理中です...