転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波

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5章 高等部~そして卒業まで

5-24 レトロなのも案外行ける

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「キュルル、2番隊、そのまま前進。4番隊はその直前にトラップあるので、解除まで待機。6番隊は待ち伏せしている人たちの襲撃に備えて」
『『『了解!!』』』

 将軍や大将と言う訳でもないのだが、人形などで先に多くの情報を得て統括出来るからこそ、ハクロが指揮の立場に立っていた。

 最初の一撃こそ入れたのは良いけれども、相手の狙いがハクロの方にあるとも限らない。そんな場所に、自ら飛び込むにはリスクも大きいので、少し安全を確保した場所から指示を出す方がいいという事で、騎士たちにも納得してもらいつつ、各自への報連相を素早く行う。

『しかし、通信用の魔道具への妨害も考えているとはいえ、これで声が届くのは面白いですな』
「これ、アルスの案。相手の技術力を考えるなら、魔道具妨害される可能性がある。だからいっその事、レトロな方でやってみるのも良いかもって言われたの」
『なるほど、流石守護天使様の旦那様だ』

 ちょっと待って、なんでそんな名称になっているの?

 まぁ、白き蜘蛛の姫から守護天使に変わったのはその容姿の変容から納得は出来るけど、挙式はまだなのに既にその名で広まっているのだろうか?

 何にしても、その声が聞こえて来た連絡用に用意した糸電話‥‥‥ハクロの魔力を通した特殊な意図で作られたものから聞こえてきた声は、皆同じような事を言ってくる。

 バケモノを作る技術などを考えると、ちょっとやそっとの通信系の魔道具は妨害される可能性があったからね。だからこそ、ハイテクに対してレトロな手段を取ったのだが、これはこれで中々良いらしい。

 多少、糸の切断の恐怖などがあるとは言え、それでも邪魔にならないように透けるような糸で伝わっており、直ぐにどこでどのようなことが起きているのかという報告も届きつつ、こちらからの指示も出しやすく、案外悪い手段ではなかっただろう。

 まぁ、今回限りの使い捨ての形なので、糸電話のコップはただの変哲でもない紙コップモドキなんだけどね‥‥‥糸が特別すぎるだけで、無かったら多分ほぼ機能しないだろう。




 何にしても、各自順調に進んでいるらしく、時折相手側の妨害らしい行動も出てくるのだが無事に対処できている。

 一発即死といえるようなトラップも備え付けられていたりするが、先行する人形たちで分かっていたりして、そこから素早く対策を取って無効化できるからね。相手がどの様な手段を取ってきても、被害を極力抑えている。

 問題とすれば、思った以上に相手の数がいないことぐらいか?待ち伏せしている研究員らしい人たちや、その他の出されてきた怪物たちの情報も出てきたが、やけに少ない印象がある。突入が事前にバレて既に逃亡済みってことは‥‥‥いや、ないな。まだ何か、隠しているものがあると予感させられる。全滅させるために毒ガスとかそう言うのもありそうなので防毒マスクの類もすぐに装着できるようにしているとはいえ、もっとヤヴァイ手段を取ってきてもおかしくはない。


 そう思いつつも、情報を探っていたその時だった。


「キュル?23番目の人形の方で、隠し部屋見つけたかも。反響音、しているよ」
「隠し部屋?大きさとかは?」
「んー‥‥‥多分、そこそこ広い」

 どうやら人の目では探れないものも探るようにしていた人形の方で、発見があったらしい。

 その場所の方に、おそらくこの施設に関与しているものが隠れていそうだ。


「とはいえ、自爆装置とかあったら不味いし、退却できるようにして人形を先行してくれ」」
「わかったよ、いくつかの兵士たち退却、直ぐ逃走用意!」


 指示を仰いで兵士たちは下がり、隠し部屋へ人形たちが突入する。

 あいにくながら中の様子はハクロの視界便りでこちらが見ることはできないが、それでもある程度の景色を糸を使って再現してくれる。ジオラマの糸バージョン…‥‥これ、もうちょっと動かせたりしたら舞台とかでもつかえるかも。

「でも、内部の様子は本当にこんな感じなのか?」
「うん、透明な容器の中に、肉塊、浮いている。蠢いていて、ぶくぶくあぶくと共に、出来上がっている感じがちょっと、気持ち悪い」

 イメージ的には悪の実験室というべきか、やっちゃいけない研究を踏み込んでいるような気色らしく、糸で再現されただけのものでもその不気味さがうかがえる。

 そのまま奥へ進んでいったところで、ふとハクロが糸の動きを止めた。

「どうしたの、ハクロ」
「キュル‥‥‥なんか聞こえてくる?変な音、いや、声?」

 そう言いながらどういうものか伝えるために、糸電話をその場所と繋げた。


『----イ、----ア――――イ』
「‥‥‥何だ、これ?」
「なんか、アルスの寝言で、前に言っていたのと似ているの」
「いや、こんな寝言を言う訳もないんだけど…‥‥」

 聞いてみるのだが、どうも変な呪文を唱えているようにしか聞こえてこない。

 繋げて見ると、いあいあ‥ふんぬぐるぃ‥‥‥いや、ちょっと待てよ?なんかこう、何処かで知っているような気がする。

 前世の方でこんなことを言うやつがいたような、いなかったような…‥‥ん?

「確か、こういう言葉って、クトゥルフ神話とかの話で出てきたような‥‥‥」
『ア―――‥‥‥クトゥルフ!!誰だ、我らが神をたたえる場所でその名を漏らしたのは!!』
「「!?」」

 どうやら糸電話越しに声が通じてしまったようで、突然そう叫ぶ声が響いて来た。

 バタバタと駆け寄るような音が聞こえ、ハクロが慌てて糸を動かして人形の位置を変え、見つからない場所へ隠す。

『…‥‥気のせいか、いや、そうではあるまい。ついに我らが信仰によって、もう間もなく繋がろうとしているからこそ、誰かの声がつながったのかもしれない』
【…‥‥そうではない。誰かが、侵入しているだけだ】
『教祖様!?』

 っと、糸電話越しの声ではあったが、人ではないような声が響いて来た。

 なんというか、この声の感じは…‥‥モンスターが声を発する時に近い印象がある。けれども、それとは何か違うような印象もまた、はっきりと伝わらせてきた。

【すでに、奥深く、ここまではいられたようだ…‥‥だが、聞いている者よ、聞くがいい。我々の悲願はもう間もなく達成される時が来ているのだ】

 教祖と呼ばれた人物は、僕らの侵入に気が付いているのか、まるで語り掛けるようにそう口にしてくる。

 ただものではないようだが、達成される時が来ているという言葉に、嫌な予感を抱く。


【制圧し、奥深くまで来て、我々に勝ったと思うか?否。我々は勝敗などは気にすることもなく、ただ我らが神のために行動し続けていた】

【そしてついに、その準備は整った。生憎、贄は十分はいらなかったが、それでも我らの祈りは通じたのか、申しわけないほどの量で事足りたようだ】

【さぁ、さぁ、そちらは我らを敵とみなしているようだが、我々はすでに気にしない。共に、狂気と混沌に満ち溢れた世界の始まりを、祝福しようではないか!!】

 何かを待ちわびていたようで、心から喜ぶようにそう叫ぶ教祖。

 その姿は見えないのだが、歓喜に溢れているような様子がうかがえると同時に、それが始まる。


――――――ズゥウウウウン!!
「「!?」」

 突然地面が、いや、空間そのものが揺れるかのような、重い音が響き始める。

 何かが蠢くような音共に、世界が揺れ動き…‥‥‥そして、その時が来てしまうのであった。
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