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嫌な事は向こうからやってくる

#72 犠牲(主に盗賊)はつきものなのデス

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SIDEグルドル盗賊団

‥‥‥最近、都市アルバスへの道の中に、盗賊たちが出没しなくなってきている。

 その噂話をある酒場で聞いたとある男、グルドルは思いついた。

 盗賊たちが出没しなくなってきているということは、安全性が高まっている場所でもあり、底を通過する商人たちなどは油断しているはずである。

 安全が約束されそうな場所ほど、警戒を緩める人は出て、それはつまり不意打ちに弱い可能性もあるのだ。


 ならば、その不意を突くような形で盗賊を行えば、良い感じに儲けられるのではなかろうかとグルドルは考えた。

 極稀にしか出没しないように潜み、獲物を定め、これぞというものに襲撃をかける。

 情報が漏れないように皆殺しか違法奴隷、もしくは自分たちの欲望のはけ口にしつつ、儲けた金銭で次回への投資とより団員の拡大が出来るように。

 色々と考え、グルドルは準備を終えた。





 そして本日、ようやく待ちに待った盗賊日和という事で、獲物となりそうなものを探し、何やらやや高級そうな馬車を見かけ、襲撃したのであった。

 この初仕事の成果を上げれば、此の先より楽が出来ると考えていたのだが‥‥‥


「よーし!!護衛達を戦闘不能にできたぞ!!」
「ならあとは、馬車の中にいる者たちも引きずりおろして…‥‥」

ブォンブォンブォンブーーーーーーン!!

「「「「「んん?」」」」

 馬車の護衛達を皆倒し、このまま楽勝かと思われたその時、どこからか聞きなれないような音が聞こえた。

 その音の出所を探せば、何か向こうから土煙を上げて走って来た。

 いや、その速度は尋常ではなく、気が付いたときには盗賊たちのすぐそばにいて‥‥‥

「ツーツーツー!!」
「ス―――――――ッ!!」
「フーフフフ!!」

「「「「なんだありゃ?」」」」

 小さな人形というか、メイド服を着た何かが接近し……次の瞬間、彼女達の身体が変形した。

「ツー!!」

 赤髪の子が両腕を何か穴の開いた棒のようなモノを展開し、肩には大筒のようなものが現れた。


チュドドドドドドドドドドドドドド!!
ドッガァァァァアン!!
「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」
「なんだぁ!?」

 突如として放たれた無数の弾丸と砲撃に、盗賊たちの数人が犠牲となり、


「スース!!」

 青髪の子は腕に盾を構えたかともうと、肩から鎖鎌が飛び出し、

ジャラランビッタァァァン!!
「「「ぎええぇぇぇぇぇ!!」」」

 鎖が巻き付き、鎌の刃じゃない側面部分に叩かれ、


「フーフフフ!!」

 緑髪の子が鈍器を取り出して、

ズガッ!!ゴガッ!!ドゴウッ!!
「「「ぐえっぽん!?」」」

 殴打し、盗賊たちを叩き潰した。


 そしてトドメと言わんばかりに、其の3人の子たちの本体というようなメイドが現れ。

「顔面ショットロケットパンチ」

 ドンッ!!という音と共に右手が吹っ飛んで、グルドルの顔面へ直撃させ、潰れたアンパンみたいな状態にし、そこからグルドルの意識は飛んだのであった‥‥‥‥


―――――――――――――――――
SIDEシアン


‥‥‥分かっていたというか、一応加減はできたというか。

 到着し、ものの数分でワゼたちは盗賊たちを全員フルボッコにし、縛り上げていた。

「片付いたか」
「ええ、簡単でしタ」

 ぱんぱんっと、ほこりを払うように手を叩き、ワゼがそう答える。

 盗賊たちがかなりズタボロだが…‥‥襲われていた馬車の護衛らしい者たちの怪我などを見ると同情の余地はない。

 うん、少しばかり欠損したり、剃られていたり、穴だらけになっていたりしてもどうでもいいだろう。


 とりあえずは、周囲で倒れている馬車の護衛と思われる者たちの治療に僕らは取り掛かった。

 残念ながら助けられない者もいたが、重症とは言えまだ生きているのであれば、なんとかなる。

 ワゼとミニワゼシスターズが素早く治療道具を出し、盗賊たちから血液型が合う者がいれば限界まで抜き取って輸血し、切れている部分はハクロの手によって縫合され、それでもどうにもならないような部分であれば、魔法でごまかし、僕らは全員の手当てを終えた。

  
 ひとまずはこれで良いとして、問題なのは盗賊たちである。

 こちらは手当ても特にしておらず、ほぼ生け捕りなのだが、引き渡しに行けば賞金がもらえるとはいえ、連れて行くのも面倒くさい。

 そもそも今は家に帰ろうとしているので、また行くのも二度手間である。


「とりあえず、盗賊を僕らが倒したわけだけど‥‥‥できればそちらが引き渡しに行ってほしいのですが」

 治療をし、なんとか話せる護衛のリーダーらしき人に、僕らは交渉してみた。


「しかし‥‥‥我々の方も手当てしてもらえたとは言え、あの負傷した盗賊たちが再び暴れ出されれば、押さえつける自信はありません」
「そうですか‥‥‥ワゼ、どうにかできない?」
「出来マス。ハクロさんの毒液を使えば行けるかト」
【ああ、私の毒ですか?】

 ワゼのその言葉に、ハクロがポンッと手を打って納得した。

‥‥‥忘れがちだが、一応ハクロは毒も出せる。

 普段使う機会もなく、ハクロ自身もその能力を忘れがちだが、この毒ならば使えるだろう。


 アラクネの毒というのは、主に捕縛目的でつかわれ、調合次第では別の毒にも変化するらしい。
 
 今回は盗賊たちが動けないようにという事で、ある程度毒を薄めて注入し、じっくりと弱らせた。


「‥‥‥これで、引き渡すまでは大丈夫でしょウ」
「あ、ああ‥‥‥しかし、輸送中に命を落といそうな状態だが、大丈夫なのだろうか?」

 心配そうに問われたが、おそらく大丈夫だと思われる。

 しかし、ハクロの毒ってこういう作用だったか?…‥‥やや強力になっているような、それとも気のせいだろうか?


 何にしても、これでこの護衛の人達でも楽に輸送できるはずである。

 数人ほどは引きずる様な状態になるが、これ以上僕らだって面倒を見る義理もない。


 そういう訳で、僕らは盗賊たちを念のためにさらに弱らせつつ、帰路に就くのであった…‥‥


―――――――――――――――――
SIDEとある護衛隊長ムッツ

‥‥‥見慣れぬ大型馬車が去ったあと、護衛隊長ムッツは盗賊たちを馬車につなげていた。


「しかし、あれだけの盗賊をほぼ数分で沈黙させるとは…‥‥できれば護衛を依頼したかったな」
「隊長、それは少々無理というものがありますよ」
「そうですよ。あの盗賊を倒してくれただけでもありがたいですからね」

 護衛隊長の言葉に、包帯を巻かれつつも動けている部下たちがそう答える。

 今回の盗賊たちの襲撃により、彼らはそれなりに腕に自信を持っていたが、見事に砕かれてしまった。

 これでは護衛としては役立たずだと落ち込みたくもなったが、そう言っている場合ではない。

 何にしても、彼らは盗賊たちを連行しつつ、今後このような事が無いように警戒を強めるのであった。


‥‥‥そして、その馬車の中にいる主を守ろうと思っていたが、その主は違う事を考えていた。

 馬車の中から見た、盗賊たちを撃退した者たちの実力を。

「…‥‥もしかしたら」

 ぽつりとそうつぶやき、ある事を考え始めるのであった‥‥‥‥
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