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一難去ってもなぜこうも来るのか

#149 ほのぼのとしつつ、ふと見つけるのデス

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SIDEシアン

 魔法ギルドで依頼を捜している中、ふと僕らはある広告を見つけた。

「ん?なんか面白そうなもの発見」
【どれどれ‥‥親善試合のお知らせですか】
「ふむ、首都ボラーンにて行われる……これはこれは面白そうなものデス」

 僕らが今いるこの国、ボラーン王国はいくつかの国と友好的関係にあるらしい。

 その友好関係を持つ国の中で、どうやら互いの友好を深めるために親善試合……要は互いの力試しでもしてみて、技量の上達などを目的とした中の深め合いをするための、特別な試合が行われるようだ。

 ちょっとした祭りのようなものらしく、どうやら既にこの話題で噂が上がっているらしい。


「とは言え、首都かぁ‥‥‥確か、前に首都の方にある冒険者ギルドでの模擬戦以来か」

 以前訪れた時は、この都市を襲撃したモンスターについての真偽をきちんと示すために、模擬戦をやらされたんだっけか。


「相手の方は…‥‥ヴェールヌイ騎士王国?王国とか帝国は聞くけど、騎士王国ってあまり聞かないな」
「各国のデータは、以前の帝国馬鹿王子の件で少々集める機会があり、騎士王国についてのデータも少しであればありマス。説明いたしましょうカ?」
「ああ、頼む」

―――――――――――――――
『ヴェールヌイ騎士王国』
旧名「アヴァロ法国」。昔は神聖国ゲルマニアと対立していた、異なる宗教国家であった。
だがしかし、腐敗が進んでいたがゆえに人々の心が離れ、騎士たちのクーデターによって政権が倒され、完全な政教分離を成し遂げ、新たな国として立ち上げられた。
国王に対して騎士たちは忠誠を誓い、常に鍛錬を欠かさず、いざというべき時に動けるようにしている。
ただ少々訓練に身が入り過ぎて、訓練用の木刀や鎧、盾を使い潰すことが多く、どのようにすれば万全に訓練が出来つつ、消費を抑えられるか課題になっている。
―――――――――――――――

「‥‥‥何というか、脳筋国?」
「いえ、それとは違うようデス。真面目であるがゆえに、身の入りようがすごいだけのようですネ」
【というか、ちょっと言いにくい国名ですね。えっと、ヴ、ヴェールニュ、あうっ】

 かぷっと舌を噛み、抑えるハクロ。

 そこまで言いにくいのかなと思いつつ、ハクロを撫でながら慰めるのであった。

 日付的にももう少し先のようだが、余裕はあるし、たまにはこういうのを見てみようかな?


‥‥‥ついでに言うのであれば、今のハクロが噛んだ姿ははちょっと可愛かった。

「ワゼ、後で早口言葉遊びとか、使えそうなものがないか探してくれる?」
「了解デス」


―――――――――――――――――――――――――――
SIDEヴェールヌイ騎士王国:王城


「はぁっ!!」
「ぜやぁぁ!!」

 キィン、ガァンっと金属が打ち付け合う音が聞こえるヴェールヌイ騎士王国の王城内。

 ここで働く騎士たちは各々の鍛錬のために模擬戦を挑み合い、互いの技量を高めていく。

 すべては忠誠を誓うこの国のためにという想いであり、腐敗などは許さない。


‥‥‥残念ながら、それでもこの国にはまだ残っていたり育っていたりする腐敗の芽があるので、完全とまではいかないが、それでも彼らはできる限りの対策を行う。

 例えば貴族。

 長男に家督を継がせるから、残りの次男、三男などの箔をつけるために騎士団に入れようとするが、実力に伴わない者達が入ろうとすることがある。

 なので最初に徹底的に模擬戦をさせ、丁寧に、それでいて二度と馬鹿をやらかせないように心をへし折るのだ。

 相手がぎゃぁすか文句を言って来ようものであれば、反論を証拠付きで事細かく行い、場合によっては相手の不正の証拠をちらつかせ、改めさせる。

 別名『強制矯正騎士団』とまで言われるような騎士団も存在しており、何処かの神聖国にとってはちょっとばかり目のこぶとなっていたりもした。

 また、実はこの国の騎士たちには人間以外として、人と暮らせるようなモンスターでさえも採用していた。
 
 魔法屋や冒険者が登録するような使い魔としてではなく、ここでは一人の騎士として扱うのだ。

 知性があり、共に共存できるのであれば敵対するよりもともに働いてもらう方が楽であり、人にはない強みも生かせるというのもあり、デュラハン、ケンタウロスなどが、騎士として働くいい例であった。

…‥‥まぁ、モンスターな事はモンスターなので、未だに毛嫌いするような輩も出ているのだが、最近とある組織が何かしているらしく、その嫌悪の感情などが薄れているらしいが‥‥‥詳細は不明だったりする。



 そんな中、この国の国王であるボンドルアは今、非常に顔をしかめていた。

「うーむ……どうしたものか」

 見ているのは、この国の騎士団たちの名が連ねられた名簿。

 今度、ボラーン王国との友好として行う親善試合のために、その場で戦う騎士たちと選んでいるのだが、どれも甲乙つけがたく、迷っているのだ。

 全員同じ実力とかそういうわけではないのだが、どの騎士たちも国王にとっては大事なのである。


「陛下、あと3日以内に選抜しなければ、間に合いませんぞ」
「ああ、わかっている。‥‥だが、どれも欲しくてな‥‥‥とは言え、人数制限もある事だし、補欠として誤魔化しても意味は無いからな」

 側近たちがせかすが、ボンドルアは決められない。

「どうせならば、そちらで決めてもらおうか?」
「いえ、騎士たちは国へ忠誠を誓ってますので、トップである陛下に決めてもらうべきかと」
「我々では議論が長丁場になりやすいので、余計決められないと思われます」

 側近たちにこの際任せようと思ったが、あっさりと断られる。

 国王命令として‥‥‥とも考えたが、議論をしあって、結果として間に合わないというのが目に見えてしまい、結局自身で決めなければいけない羽目になる。

「うむ……胃が痛くなってくるなぁ。ここは一つ、身体を動かして‥‥‥そうだな、騎士たちと手合わせするか」

 いくら卓上で名簿とにらめっこしても、結論が出ない。

 ならば、自らそのすべての騎士たちと手合わせをして決めれば良いと国王は結論付けた。


…‥‥国のトップが騎士たちと手合わせをして良いのかというツッコミがありそうだが、ここは騎士王国。

 国王自身もまた、騎士たちに負けないように収める国のために日々の鍛錬を欠かしておらず、実力はある。

 そして騎士たちと剣戟で語り合い、その実力を見て学び、学ばせ、交流を深める。

 ゆえに、この選択方法で選抜を決めた結果、予定よりも早くメンバーを決定づける事が出来たのであった‥‥‥
 
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