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2章 光が輝き、空へ上がり始め

2-6 鬼武者、蜘蛛、宝箱…何だろう、このバランス

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―――魔導炉、出力20%。

「雷刀、抜刀」

 すっと腰に差している二刀の内、小刀の方が抜かれ、目の前の豚の魔物『ピッグビーズ』に向け、刀先が向けられる。

 そのままぐっと構えた次の瞬間、雷が魔物たちの頭上に落ちた。

ドンガラガッシャン!!
【【【ピッギャァァァァァスゥ!?】】】

「‥‥‥刀、抜く動作全然いらないじゃん!?」
【すごいけど、どうなっているの?】
【グラグラァ?】

 ぶすぶすと煙が上がりつつも、ちょうどいい焼き上がりに仕上がったのか周囲一帯に豚の焼けた香りが広がりつつ、僕等は目の前の光景にツッコミをいれていた。

「簡単なことでござる、主殿。拙者の刀、内部の動力と繋がっていて、そこからエネルギーを極小の放電に変え、上空に素早く打ち上げたのでござる。後は、上空の雲に入ることで軽く増幅してもらい、そのまま狙った場所へ落ちるように誘導したという訳でござるな」
「いや、説明されても意味が分からないんだけど。エディア」
「そうでござるか?むぅ、説明が今一つうまくないのが拙者の欠点でござるな」

 むむぅっと唸るように考えこみ、そう口にする女武者型ゴーレム‥エディアと名付けた彼女は、説明がうまくいかなかったことを残念に思っているようだ。

 わかっていた型番号の中にあったDディーMエムの文字から考えて、ちょこっともじってエディアと名付けた後に起動した彼女の性能を確認していたのだが、どうやっているのかわからない攻撃が多い事だけがはっきりとわかった。




 ゴーレムを入手し、確認のためにギルドから依頼を受けて周辺の魔物狩りを行っていたのだが‥まだまだ、わからないことが多いゆえに連携に移りにくいところがある。

 けれども、それでもこの面子で足りなかった強力な一撃が出せるようなのもあって、パーティ全体のバランスとしては良い感じに整ったようではあった。

 雷撃を落し打ち付け、糸で封じ込め、魔法で遠距離攻撃、後は普通に拳や斧で攻撃‥‥‥うん、バリエーションが増えたな。

 しいて言うのであれば、まだエディアの性能に関して未知数なところもあり、しばらくは前衛のほうで刀を振るってもらうことに集中する必要がありそうかなという事ぐらいだろうか。物理が少々濃くなるが、それでも決定打が一つ増えたのは良いことかもしれない。

「とは言え、拙者の一日の稼働限界は8時間でござるからな?今は出力20%でそれでござるが、100%のフル稼働だと30分まで縮まるのは注意が必要でござる」
「かなり差があるんだな」

 目覚めた後に、どういう性能を持っていて、運用方法で注意点があるのかなどのも説明してくれたが、エディアは稼働時間に制限があるタイプのゴーレムでもあったらしい。

 けれども、その分瞬間に出る力は非常に高くなっており、戦闘面に力を割り振ったゴーレムともいえるようだ。

 ついでになぜか、刀を振るった後は、相手が料理可能な素材のモンスターであれば、全てが料理になってしまうとしまうという機能が付いていたが‥‥‥うん、それは気にする必要は特にないと思いたい。料理する手間が省けるから喜ぶべきか、それとも素材採取メインの時に全部料理になったら失敗になりかけない危険性に気を付けるべきか、ちょっとわからないからね。


 とにもかくにも、こうやって仲間に加わってくれたことで、僕等は全体的にバランスが良くなったと言えるだろう。

「でも疑問なのは、大太刀の方は抜かないのか?」
「…‥‥抜かないのではなく、抜けないのでござるよ、コレ。最大出力の時のみに抜けるようにしているのでござるよ」

 なんでもエディア曰く、制限がかかっているそうだ。

 まぁ、小太刀だけでも雷で相手をこんがりと焼いたりできるので、相当強い性能を持っているが、これファ最大出力になればどれほどのものなのか、想像し尽くすことはできないけれども、かなり強力な二は目に見えている。
 とは言え、そんな最大出力に頼るようなことはないとは思う。強すぎる力に頼り過ぎると腕が腐りやすくなるから、手に入れた時はしっかりとひきしめろと爺ちゃんも言っていたことがあったっけ。実感があるような感じだったけど、何かで体験したのだろうか。

 そんな祖父のありがたい忠告をしっかりと心に刻みつつ、新しい仲間の加入に歓迎をするのであった…‥‥

「ところで、雷とかだとその金属の鎧に思いっきり落ちそうなのに、大丈夫なの?」
「これ、金属製ではないでござるよ。それっぽい見た目の加工をしているだけの、木製でござる」
「【え!?木製なの!?】」

‥‥‥まさかの木製の鎧であった。でも一応、金属にも負けないぐらいの強度もあるらしいし、軽さもあるらしい。

 ついでにハクロの糸も仕込めばより強化できるだろうが‥‥‥この面子、今度は火の方面に大丈夫なのか不安になったかもしれない。
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