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訪れる学園生活
log-045 その居場所はどこにある
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―――周囲に霧が立ち込め、視界が悪くなってきたのは、王都から少し離れた平原。
周辺には霧の原因になるようなものはなく、むしろこの辺りは普段はさんさんと太陽が良い具合に注ぎ込み、風通しの良いピクニックの場所として知られているはずの穏やかな場所のはずだった。
「しかし…こうも状況が変わるとは…やはり、デュラハンが原因か」
「アンデッド系は、夜分遅くが活動時間だという印象があるのですが」
その霧に包まれた平原を進むのは、グラビティ王国の王都から派遣された騎士団の一つ、ヘビニスト部隊。
分厚い鎧や大盾、大剣に大斧と言った重量感あふれるものを身に纏っており、本来であれば守りのほうに適した者たちである。
そんな彼らがここに派遣されてきたのは…王都に迫りつつあるという、アンデッドの一種、デュラハンに対してのことだ。
「いや、夜間活動は確かにゾンビやゴーストと言った類が行うが…奴らは単純に、太陽の明るい日差しが苦手な弱いものが多いからだ。それに対して、デュラハンやスケールメイルと言った、鎧を着こなしていたりある程度の強さを持った者のアンデッドに関しては、耐性があるらしく、昼間での活動は報告されているらしい」
騎士の一人が行った質問に対して、ヘビニスト部隊の隊長がそう答える。
騎士として働く以上、モンスターから王都を守るための実力も必要であり、求められる知識御ある程度揃えておくのも大事だからだろう。
かつて、あのシルフィの手によって、三日三晩のモンスターに関する教育のたまものであり、昔はやんちゃしていたようだが、いまではしっかりと騎士としての精神を身につけているのである。
なお、そのトラウマのせいで、街中で美人を射かけた時に、思わず恐怖を抱いてしまうため、今もなお独身と言う噂もあるが…それはそれで関係ない話。
「そんなことよりも、今は警戒をしておけ。デュラハンとなればある程度高名な騎士が後悔の成れの果てになったともされる、執念の怪物だ。ある程度の理性は見込めるからこそ、無駄に争う必要も生じない時があるらしいが…死の宣告など、警戒をするところはあるからな」
「アンデッド特攻として、聖魔法を扱える人を連れてこられれば…」
「通常のものならば、それでよかったが…どうもそれに対しての耐性があるものもいるらしくてな。時点で、重量級の攻撃と鉄壁の守りで、相手が出来そうな我が部隊が選ばれたらしい」
できれば恐ろしいものは相手にしたくはないが、それでも彼らは騎士である。
都市に危険が迫るのだとすれば、前に出て留めなくては意味がない。
「っと…どうやら、やっこさんの姿が見えてきたな…」
ふと前の方を見れば、霧の影から姿を現したものがいた。
黒い鎧に全身が包まれており、頭が首の上にはない。
いや、首元から青白い焔が浮かび上がっており、同じ炎が脇に抱え込むような形でフルフェイスヘルメットをかぶっている頭の下から出ている様子がうかがえる。
どうやら目当ての相手…この霧の発生源となったデュラハンのようだ。
デュラハンは普段、こういう霧を発生させることもできるらしく、身を隠して移動するために扱っているとされているだろう。
「さて…まずは普通に交渉で切ればいいが…」
モンスターの中で、デュラハンに関しては元が高名な騎士がなっていたという話があるだけに、実は話が通じる事例もある。
よっぽど凶悪すぎなければ、それだけで戦闘が回避できていいのだが…どうやら相手は、そうやすやすとことを進ませてくれないらしい。
見れば、頭を抱えている腕とは反対の手で、背中から大剣を手に取り、構え始めた。
「…交渉の余地は、最初から無しか。好戦的なだけか、あるいは…いや、考えるよりも、今は戦うことへ集中しよう。お前ら、死の宣告だけは確実に警戒しろ!!」
デュラハンが扱うという、死の宣告。
生き残れる確率はそれなりにあるが、命を落とす可能性があるのならば、警戒しておくに越したことはない。
そして、その舞台はデュラハンと交戦し…その強さを、身をもって味わうことになった。
ガシャァァン!!
「ぐっ…つ、強い…何て、奴だ…」
数分後、そこに立っていたのはデュラハンと、折れた剣を支えにかろうじて立っている部隊長のみ。
他の面々は既に敗れたようで、倒れ伏していた。
だが、命を奪われたわけではなく…圧倒的な実力差で、気を失わされただけのようだ。
いったい何が目的なのか、剣を交えても見えてこないデュラハン。
こちらの命をいつでも奪うことができるはずだが、何か別のものがありそうだ。
そのまま部隊長の横を通り、先へ進むデュラハン。
王都の方角なのでどうにか阻止しようとしても、既に足は限界を迎えている。
だが、それでも情報だけはどうにか得たい。
「お、おい…お前、一体何が目的で…王都に…!!」
【…】
部隊長の問いかけに答える気も無いのか、歩みを止めないようだったが…ふと、気が変わったのか、風に乗ってその声が届けられる。
【…主を、求めて。我が魂が、震える相手を…感じて…】
「…!!」
高名な騎士ということであれば、生前は何者かに仕えていたのだろう。
既に命亡き身になっている以上、その主が今もいる可能性はない。
ならば、この回答は何なのか。
いや、既に回答をしていると言って良いのだろうか。
「…まさか、お前は…仕えるべき相手を求めて…感じて向かっている…だけか」
部隊長の言葉に返ってくるものはなく、そのまま霧が晴れてデュラハンの姿はその場から失せる。
しかし、このやり取りだけでも十分得られたものはあり、確実に伝えなければいけない。
「…ぐっ…う伝えにいけ、ミニマチョポッポ…」
【ポッポー!!】
いざという時のための、伝達手段を騎士団は持っている。
その中には、超小型のマチョポッポを飼育し、素早い伝達を行う手段として有している者もおり、この部隊長もその一人。
聞くことができたその目的をすぐに王都へ届けるために飛ばし、彼もまた他の者たちと同様に、その場に倒れて意識を失うのであった…
周辺には霧の原因になるようなものはなく、むしろこの辺りは普段はさんさんと太陽が良い具合に注ぎ込み、風通しの良いピクニックの場所として知られているはずの穏やかな場所のはずだった。
「しかし…こうも状況が変わるとは…やはり、デュラハンが原因か」
「アンデッド系は、夜分遅くが活動時間だという印象があるのですが」
その霧に包まれた平原を進むのは、グラビティ王国の王都から派遣された騎士団の一つ、ヘビニスト部隊。
分厚い鎧や大盾、大剣に大斧と言った重量感あふれるものを身に纏っており、本来であれば守りのほうに適した者たちである。
そんな彼らがここに派遣されてきたのは…王都に迫りつつあるという、アンデッドの一種、デュラハンに対してのことだ。
「いや、夜間活動は確かにゾンビやゴーストと言った類が行うが…奴らは単純に、太陽の明るい日差しが苦手な弱いものが多いからだ。それに対して、デュラハンやスケールメイルと言った、鎧を着こなしていたりある程度の強さを持った者のアンデッドに関しては、耐性があるらしく、昼間での活動は報告されているらしい」
騎士の一人が行った質問に対して、ヘビニスト部隊の隊長がそう答える。
騎士として働く以上、モンスターから王都を守るための実力も必要であり、求められる知識御ある程度揃えておくのも大事だからだろう。
かつて、あのシルフィの手によって、三日三晩のモンスターに関する教育のたまものであり、昔はやんちゃしていたようだが、いまではしっかりと騎士としての精神を身につけているのである。
なお、そのトラウマのせいで、街中で美人を射かけた時に、思わず恐怖を抱いてしまうため、今もなお独身と言う噂もあるが…それはそれで関係ない話。
「そんなことよりも、今は警戒をしておけ。デュラハンとなればある程度高名な騎士が後悔の成れの果てになったともされる、執念の怪物だ。ある程度の理性は見込めるからこそ、無駄に争う必要も生じない時があるらしいが…死の宣告など、警戒をするところはあるからな」
「アンデッド特攻として、聖魔法を扱える人を連れてこられれば…」
「通常のものならば、それでよかったが…どうもそれに対しての耐性があるものもいるらしくてな。時点で、重量級の攻撃と鉄壁の守りで、相手が出来そうな我が部隊が選ばれたらしい」
できれば恐ろしいものは相手にしたくはないが、それでも彼らは騎士である。
都市に危険が迫るのだとすれば、前に出て留めなくては意味がない。
「っと…どうやら、やっこさんの姿が見えてきたな…」
ふと前の方を見れば、霧の影から姿を現したものがいた。
黒い鎧に全身が包まれており、頭が首の上にはない。
いや、首元から青白い焔が浮かび上がっており、同じ炎が脇に抱え込むような形でフルフェイスヘルメットをかぶっている頭の下から出ている様子がうかがえる。
どうやら目当ての相手…この霧の発生源となったデュラハンのようだ。
デュラハンは普段、こういう霧を発生させることもできるらしく、身を隠して移動するために扱っているとされているだろう。
「さて…まずは普通に交渉で切ればいいが…」
モンスターの中で、デュラハンに関しては元が高名な騎士がなっていたという話があるだけに、実は話が通じる事例もある。
よっぽど凶悪すぎなければ、それだけで戦闘が回避できていいのだが…どうやら相手は、そうやすやすとことを進ませてくれないらしい。
見れば、頭を抱えている腕とは反対の手で、背中から大剣を手に取り、構え始めた。
「…交渉の余地は、最初から無しか。好戦的なだけか、あるいは…いや、考えるよりも、今は戦うことへ集中しよう。お前ら、死の宣告だけは確実に警戒しろ!!」
デュラハンが扱うという、死の宣告。
生き残れる確率はそれなりにあるが、命を落とす可能性があるのならば、警戒しておくに越したことはない。
そして、その舞台はデュラハンと交戦し…その強さを、身をもって味わうことになった。
ガシャァァン!!
「ぐっ…つ、強い…何て、奴だ…」
数分後、そこに立っていたのはデュラハンと、折れた剣を支えにかろうじて立っている部隊長のみ。
他の面々は既に敗れたようで、倒れ伏していた。
だが、命を奪われたわけではなく…圧倒的な実力差で、気を失わされただけのようだ。
いったい何が目的なのか、剣を交えても見えてこないデュラハン。
こちらの命をいつでも奪うことができるはずだが、何か別のものがありそうだ。
そのまま部隊長の横を通り、先へ進むデュラハン。
王都の方角なのでどうにか阻止しようとしても、既に足は限界を迎えている。
だが、それでも情報だけはどうにか得たい。
「お、おい…お前、一体何が目的で…王都に…!!」
【…】
部隊長の問いかけに答える気も無いのか、歩みを止めないようだったが…ふと、気が変わったのか、風に乗ってその声が届けられる。
【…主を、求めて。我が魂が、震える相手を…感じて…】
「…!!」
高名な騎士ということであれば、生前は何者かに仕えていたのだろう。
既に命亡き身になっている以上、その主が今もいる可能性はない。
ならば、この回答は何なのか。
いや、既に回答をしていると言って良いのだろうか。
「…まさか、お前は…仕えるべき相手を求めて…感じて向かっている…だけか」
部隊長の言葉に返ってくるものはなく、そのまま霧が晴れてデュラハンの姿はその場から失せる。
しかし、このやり取りだけでも十分得られたものはあり、確実に伝えなければいけない。
「…ぐっ…う伝えにいけ、ミニマチョポッポ…」
【ポッポー!!】
いざという時のための、伝達手段を騎士団は持っている。
その中には、超小型のマチョポッポを飼育し、素早い伝達を行う手段として有している者もおり、この部隊長もその一人。
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