絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波

文字の大きさ
94 / 238
移り変わる季節と、変わる環境

log-閑話  その家容易く近寄らせぬ

しおりを挟む
―――グラビティ王国のある一角。

 そこに一つの邸が鎮座していたが、同時にある噂も流れていた。

 曰く、元々は別の貴族が保有していた邸だが、つい先日その主が変わったとのこと。

 どこの家が買い取ったのかと思いきや、どうやらとある少年が主になったらそうだが、人ならざる者たちも一緒に入ったそうだ。



「話を聞く限り、他国には見ぬ美妃のような、見麗しい女性たちがいるらしい」
「だが、どこかがひとならざるものたちでもあるようだ」
「しかし、見て見たくはあるよな…」

 人は未知のものがあれば気になるもの。
 そこを目指したくなるのは当たり前のことだが、それでも多少は知っている人たちがいれば無理に覗くことはしないだろう。







【…と言うわけで、引っ越してから一週間の間に、捕えた人は衛兵へ引き渡したのなの】
【単純に見るならばともかく、見た目だけなら女ゆえか盗みに入ろうとしたものもいたようだが…】
【ただいま脱毛レーザー実験体として良い感じに役立っているヨ】
【落ち着いてきたのは良いですけれども、もうちょっとこう防犯設備を整えたいですね】

 その日の晩、ハクロ達はお互いにこの邸に引っ越してからのことを報告しあっていた。

 なお、ジャックに関しては既に眠っている深夜だったので、この場にはいない。

【うーむ、我らの迫力不足だろうか?すでにモンスターが住まう邸としては周知されているとは思うのだが】
【その可能性は大いにありえますね…いうのもなんですが、私たちって怖い要素皆無です】
【いや、普通に生首が転がってきたり、上からいきなり大きな蜘蛛が来たらビビるとは思うのなの】

 ルミとハクロの言葉に対して、実感溢れる言葉を込めるカトレア。
 わかっていても急に来られるものに関しては、驚かされるのはよくあることである。

【んー…いっそ、番犬でも飼ってみるというのはどうかナ?冒険者たちの拠点も、よく留守にするから狙われることがあって、その対策に使っているという話があるヨ】
【へえ、そんなことがあるんですか】
【ついでに人気も出て、番犬品評会も行われているらしイ。先日第2309回品評会で優勝したのはマッスルウルフ(変異種)のマシュキュンだったとのことダ。絵姿は…これだナ】
【…いや、これ番犬か?なんだこの、筋肉ゴリゴリのゴリダルマ犬…ほぅ、入ってきた盗人を華麗にマッチョの道へ引きずり込むか…】
【凄い犬なの】
【思いっきり、モンスターですが…ええ、いえ、でも番犬と言う名目で考えれば、普通の犬種よりも強力なものですかね】

 防犯対策は色々とあるが、こういう番犬なども悪くは無いのかもしれない。

【でも、犬は苦手ですね…覚えてますか、ルミ、あの三日間の山火事…】
【おおぅ…嫌なものを、思い出させるな。そういえば、そんな恐怖の体験が…】
【二人とも何をしたのなの?】
【明らかに、何かしでかしているよネ?山火事の言葉から、火事でも引き起こしたノ?】
【いえ、グレートインフェルノウルフと言うのが出現しまして】
【一体や二体ではなく、なん十体もの燃え盛る犬のモンスターでな…相性的に、きつかったな…】

 番犬も悪くはなかったが、犬に対して少し苦手意識がある者がいる模様。
 そのため、残念ながらその案は不採用となり、しばらくはギンギラギンピという銀に輝く草で触れるとガチめのやばい毒草を壁際に生やしたり、ブービートラップをいくつか仕掛けるなどの簡易的な対策を行い、地道にやらかす人を減らす方向に決めるのであった…


【綺麗ですね、このギンギラギンピ】
【でも、生で触るのは危険なの。この繊毛、毒の棘なの】
【うかつに触ると激痛の毒を与えてくるほかに、重症化すると銀のまだら模様が浮き出てきますヨ】
【ひぇっ!?さらっととんでもないものを出さないでくださいよ!!】
【主殿が迂闊に触ることが無いように対策もしておく必要があるな…】
しおりを挟む
感想 488

あなたにおすすめの小説

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

転生メイドは絆されない ~あの子は私が育てます!~

志波 連
ファンタジー
息子と一緒に事故に遭い、母子で異世界に転生してしまったさおり。 自分には前世の記憶があるのに、息子は全く覚えていなかった。 しかも、愛息子はヘブンズ王国の第二王子に転生しているのに、自分はその王子付きのメイドという格差。 身分差故に、自分の息子に敬語で話し、無理な要求にも笑顔で応える日々。 しかし、そのあまりの傍若無人さにお母ちゃんはブチ切れた! 第二王子に厳しい躾を始めた一介のメイドの噂は王家の人々の耳にも入る。 側近たちは不敬だと騒ぐが、国王と王妃、そして第一王子はその奮闘を見守る。 厳しくも愛情あふれるメイドの姿に、第一王子は恋をする。 後継者争いや、反王家貴族の暗躍などを乗り越え、元親子は国の在り方さえ変えていくのだった。

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

僕だけレベル1~レベルが上がらず無能扱いされた僕はパーティーを追放された。実は神様の不手際だったらしく、お詫びに最強スキルをもらいました~

いとうヒンジ
ファンタジー
 ある日、イチカ・シリルはパーティーを追放された。  理由は、彼のレベルがいつまでたっても「1」のままだったから。  パーティーメンバーで幼馴染でもあるキリスとエレナは、ここぞとばかりにイチカを罵倒し、邪魔者扱いする。  友人だと思っていた幼馴染たちに無能扱いされたイチカは、失意のまま家路についた。  その夜、彼は「カミサマ」を名乗る少女と出会い、自分のレベルが上がらないのはカミサマの所為だったと知る。  カミサマは、自身の不手際のお詫びとしてイチカに最強のスキルを与え、これからは好きに生きるようにと助言した。  キリスたちは力を得たイチカに仲間に戻ってほしいと懇願する。だが、自分の気持ちに従うと決めたイチカは彼らを見捨てて歩き出した。  最強のスキルを手に入れたイチカ・シリルの新しい冒険者人生が、今幕を開ける。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

処理中です...