絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波

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少し広がっていく関係性

log-122 良いも悪いも使う人次第

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…穏やかに過ごせているのならば、この帝国内の留学生活も悪くはないだろう。
 むしろ、自己研鑽がしやすい環境だからこそ、より一層将来のためになることを考えての行動がしやすく、充実した日々を送りやすい。

「そう考えると、留学を選択して正解だったかもなぁ…ふわぁ…それにしても、この寮室も中々広いのも慣れたけど、本当に昔、何がここにいたのやら…」
【大型の従魔と共にしていた生徒の部屋、という点は王国のものと同じですけれども、規模が違いますね…これ、かなり大型ですよ】
【その分、皆のプライベートスペースも確保しやすいから問題ないのなの】

 今日も授業を終え、日が暮れて月明かりが差し込み始める中、就寝準備を行いつつジャックがつぶやいた言葉に、答えるハクロとカトレア。

【だが、このサイズのものを連れた生徒も見てみたくもあったな…十数年前と言う、ちょっと出会うには惜しい年月だが】
【あたしがギルドで仕入れた情報だト、メガトンパンサーという大きなヒョウのモンスターだったらしイ。頭に小判を乗せたやつで、黄金を落としまくるとかいう変わった攻撃方法だったとカ】
【それ、ヒョウ?何かもっと違う何かじゃないか?】

 ルミたちも着替えつつ、ファイが自身のスライムボディでその姿の一部を表現するが、見た目的には巨大な猫のような…それはそれでモフモフの夢があるような気がしなくもない。

 ただ、残念ながら卒業済みのために見ることはできないようで、今はもうその生徒は遠く離れた孤島で暮らしているらしい。巨大モフの島…それはそれで夢のある生活に思えるだろう。



 とにもかくにも、ゆっくりと今は寝る準備を進めて寝るほうが良いだろう。

「明日は特別な授業があるらしいからなぁ…何でも、帝都の奥の方にある帝国の要である城に社会見学ができるとか」
【安全面はどうなのかと思うけど、見学用に開放されているエリアだけに向かうらしいですね】
【城か…王国のものとはまた違う作りらしいが、楽しみだな】

 普通の授業も良いが、せっかく帝国にいるからこそ、その地でしか得られないものを目で見て学び、しっかりと自身の糧にするのも損はない。


 形式的には工場を見学する授業に近いものだが、場所は白と言うこともあって、帝国の騎士団や魔導士たちの働きを見たりするらしい。



 なお、その社会見学には皇女様…様付けはやめてほしいといっていたが、ミラージュも参加するようだが、皇女の彼女が自身の実家ともいえる場所を見に行って意味があるのかという疑問もあった。
 なので聞いてみたところ、他人行儀な城の者たちを見るのは新鮮味はあるとのことだ。

【さて、なら早く寝てさっさと明日の体力を備えて置こうぜ!我が君】
「ああ、言われなくてもその通りだよ」

 就寝準備をすっかり終え、皆寝間着姿に切り替わる。
 ハクロなど一部睡眠を特に必要としない者もいるが、それでも休息を取るのは大事なこと。

 なので、こうやって皆で寝られるときは穏やかに…

ぎゅぅう…
「…あの、ルトライト、ハクロ。二人とも寝る場所があるのに、何で毎回挟み撃ちにする形で寝るのかな…」
【これが一番、安心できますからね】
【それは同意するぜ。オレたちにとって我が君がいる方が安心感半端ないからな】

【…安心云々以前に、お主らベッドの上だと馬鹿みたいに寝相が悪いだろ】
【毎朝、マスター巻き添えにしている時点で、安全とかけ離れまくっていると思うヨ】
【次やらかしたら、しっかりみっちり縛るなの】
【【それはやめて!!】】











…深夜、ハクロとルトライトがジャックが寝息を立てているうえで、カトレアの木の根でぎちぎちに吊り下げられているその頃。



 帝国の学園の側にある一軒家にて、寮から抜け出した生徒たちがその場所であるものを受け取っていた。

「…それで、これが例のものだと」
『--ああ、そうさ。ただ、うまく使えるかどうかは、その人次第』

 全身を隠すようなローブ姿で表情は見えないが、どこか笑っているような声が聞こえる。

 乗せられているような気がしなくもないが…それでも、これがあれば行けると思えるのだろう。


 怪しい取引となりつつも、彼らはこれが最善の手だと考えるのであった…
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