絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波

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少し広がっていく関係性

log-133 ソウゾウノモノ

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…地脈を奪い返し、その力をもって支配と色欲の悪魔が生み出したゼルモンドラ城は崩壊した。

「それと同時に、後ろに出ていた悪魔が出る門も…砕け散ったようだね」
【何者かはわからなかったのですが、思いっきり巻き添えになってましたね…】

 放出された極太の光線は何もかも飲み込んでいたが、その背後に出ていた悪魔の門もまとめて破壊しつくしたようで、原形をとどめていない城と一緒に、こちらも根元がギリギリ残りつつも、盛大にぶっ壊れていた。

【ふへぇ…地脈のエネルギー、相当いっぱいになったけど、地面の味のほうがひどすぎたなの…後で口直ししたいのなの~…】

 結構無茶をしたのもあってか、疲れ果てた様子のカトレア。

【まぁ、それでもこれで悪魔は無事にやられて…】

 あれだけの攻撃を浴びて、無事ではすむまい。
 もしかするとこの一撃で消し飛んだ可能性はあると思って…油断した。


ガゴッ、ドゴンッツ!!
『グァアアアアォオオオオオオ!!』
「っつ!?」

 がれきの中から音を立て、現れたドロドロとした塊。
 それが真っすぐにとびかかり、ジャックに張り付く。


ベジャン!!
「うわっつ!?」
『よぐもよぐもよぐもごおぢからおぉぉぉぉぉ!!』

 張り付いたのは、先ほどまで我が世の春を謳歌しているかのような時を歩んでいたはずの悪魔。
 しかし今は、その全てが奪いつくされて、相当怒り心頭になっているのだろう。

『みりょうもなにもがもない”!!ごうなればぎざまをごろじで』

『…見苦しいぞ、同胞』
『!?』

このままジャックをその怨念だけでも命を奪えそうなほどの激高の中…聞こえてきたその言葉。

 びくっと震えたかと思うと、引き寄せられるように剥がれた。


『ぐがぁっつ!?』
『やれやれ、タイミングが悪かったのは謝るが…常陽から見ても、そしてその状態から見てもかなり違法な方法を使ったな?』
『ひびぃいいい!?』

「…あ、さっきの門からの人」
【無事だったんですね】
『あとちょっとで、あの門と一緒に消し炭にされかけたが…まぁ、なんとかな』

 そこに立っていたのは、側頭部らへんに角を生やした悪魔の姿。

 今まで出会ってきた悪魔のように人のガワを…いや、それにしては違和感が無いようなまともな人としての容姿を持っているような質感があるだろう。

 完全に無事ではなかったのか、ところどころ焦げているような感じもするが…ぱんぱんっとはたけばすぐに黒ずんだ部分が消え失せ、銀髪に紅の目を持った青年のような姿となった。

『ぎざま、なぜごごに…どうじでごごへめ、』
『おっと、質問は後でゆっくり聞くから…今はここで、潰れて地獄で待ってろ』
『ぎぃ!?』
バジンッツ!!

「…あ」


 何かを口にしようとした、どろどろになっていた色欲の悪魔。
 しかし、そんな言葉に聞く耳を持たなかったのか、銀髪の悪魔がぱちんっと指を鳴らした瞬間、何かに潰されたような姿となってすぐに、消え失せた。

『…ふぅ、とりあえず済まなかったな。我が同胞が迷惑をかけたようでな』
「い、いえ確かにそうですがどうにかなったので…こちらこそ、攻撃の巻き添えにしたようですみません」
『ははは、大丈夫さ。器を無理やりに補ったやつと違って、こっちは頑丈だからな。多少焦がされたが、この程度で消滅しないよ』

 あっさりと謝罪の言葉を言ってきた悪魔に、思わず謝り返すジャックだったが、悪魔のほうは対s多ことはないというように笑う。

 先ほどまでの者とは違い、敵意がほとんどないような…いや、悪魔だからこそ油断できないのだが、それでもどこか今は安全であるというような雰囲気を持っているのだ。

『おっと、せっかくだから名乗りを上げたほうが良いか。我が名は異界と境界をつかさどる…人の発音では、「ゼリアス」で良かったか。この度は、違法な方法で召喚された同胞…先ほど、この世界の七大罪の席に無理やり座っていた大馬鹿野郎の回収が目的で来たが、あそこまで弱らせてくれて感謝をする。まともな状態でもどうにでもなったが、最初から楽に回収できた方が、良いからな』

…目の前の悪魔は、これまでの悪魔とは何か違うらしい。

 話を簡潔に聞くと、どうやらあの色欲の悪魔は違法な方法で召喚されたものでもあるようで、悪魔たちの間では相当な禁忌に指定されているものらしい。

 それ以前にも何体か既に召喚された形跡があり、あちこちその反応を元に探していたようだが…彼、ゼリアスに探られているのを理解しているのか、違法召喚された者たちはうまいこと姿をくらまし、中々とらえられなかったようだ。

『だが、都合よく調子に乗った馬鹿が大きく反応してくれて…それで、ここに出たんだ』
「なるほど、そういうわけが…」
【悪魔のほうも、何かと事情があるんですねぇ】
【…】

 かくかくしかじかと説明を聞き、納得するジャックたち。

 悪魔に違法とかそういう常識があるのかと言うツッコミどころがある気もするが、していてもきりが無いのでここでは放棄しておく。


 だが、その一方で何やらルミが近づいてきた。

【ん?んんぅ…?お主、ゼリアス…どこかで見たような】
『どうしたんだ?デュラハンの人…ん?あれ…こっちもどこかで見たことあるような…』
「あれ?二人は知り合いなの?」
【我の失われた記憶の奥底でどこかで見たような………んん?…?】
『…その呼び方…まさか、‥?』

 二人ともお互いに考えつつ、ぼそっと漏らしたのはルミの生前の関係っぽい名前。
 悪魔のほうも知っているということは…もしかして。

「えっと…もしかしてルミの生前の関け、」


【リア…この聖女様をたぶらかした悪魔がぁぁぁぁぁぁ!!】
『ちょっと待てアルミナぁぁあ!!こっちはあの悪魔のような聖女に狙われた被害者なんだが!?』

ダァァァン!!


「って、えええええ!?いきなり問答無用で大剣を振り下ろした!?しかもさっきの悪魔戦よりも全力で!!」
【何か、浅からぬ因縁がありそうですね】
【一瞬で、ルミ姉さんがパイルダーオンして、氷炎の本気の鎧モードで襲い掛かったぜ…】


【このこのこのぉおお!!悪魔滅っすべし!!慈悲はない!!】
『そう言われても立場上間違ってもないけど、盛大にとばっちりなんだが!?だったらあの聖女に鎖でもつけて抑えてほしかったんだけど!!』
【馬鹿を言え、聖女様にそんな真似できるか!!と言うか一度、聖女様を狙った馬鹿が実施して、見事にモーニングスターとしてしばらく愛用したことがあっただろ!!】
『そういえばそうだ!!しかも悪用で嬉々として拘束に再利用してきたトラウマがぁぁぁ!!』


 ぶぉんぶぉんと怒りながら大剣を振り回すルミ。
 その一方で追いかけられている悪魔ゼリアス。

 二人とも、何やら相当昔の関係者同士らしいが、妙な因縁もあるらしい。
 と言うか、本当にルミが過去に仕えていたらしい聖女って何なの?どんどん聖女のイメージがこう普遍的なものからぶち壊されている気がしなくもないのだが…

「と、とりあえず抑えないと!!ルミ、ストップストーップ!!」
【やめないと、喧嘩両成敗でスライム風呂に入れますヨー!!】
『【それは全力で拒否する!!】』

 あ、仲が悪そうだけど息がぴったり合うじゃん。


 とにもかくにも、どうにかなだめつつ、後始末へと移りだすのであった…

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