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少し広がっていく関係性
log-152 食欲には勝てぬモノ
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…ピクニックと一緒に、モフモフも堪能しよう。
そう考えていたこともあったが今、そのモフモフに囚われていた。
【んんぅ…良いね、この子、ほやぁって感じで良い…】
「あの、重い…めっちゃだらんっとよしかからないで…」
【と言うか、誰ですか?】
皆でゆったりとした時間を過ごしていた中、現れたモンスターの少女。
ワタモコドリに負けず劣らずのフワフワとした翼が腕であり、その足は鳥のような物。
白い髪色に白い肌、ハクロをもうちょっとこう緩くした感じの子が、ジャックを翼で包みつつだらぁっともたれかかっていた。
主に後頭部にずしっとしたものを感じ取るが、それはそれ、これはこれ。
【両翼の人型モンスター…ハーピーかセイレーン…ちょっと足を見せてくださイ】
【んぅ?良いよぉ…】
種族の判別のためにファイが問いかけると、あっさりと見せてくれた少女。
【ふむ、対になっているような…いえ、可変しますねネ。この特徴であれば、『セイレーン』のほうでしょウ】
「ハーピーとか言っていたのも聞こえたけど…どう違うの?」
―――
『ハーピー』
通称人面快音波鳥。
きぃきぃと耳を貫くような高い音波を常に放ち、老婆もしくは普通の女性のような容姿をもつ、両翼と鳥の足を有するモンスター。
極端に見た目が分かれているのは、前者は弱っているような姿を見せて油断させる狡猾さを持ち、後者は主に人間の肉狙いのために進化したともされている。
見た目が思いっきり違うためにこれまでは成長した姿か別の種族かと言われていたが、研究の結果どちらも実は同じ存在だということが判明し、学会を騒がせた経歴もある。
『セイレーン』
美しい女性の姿を持ちつつ、両翼鳥足もしくは耳がひれで下半身が魚の人魚のような姿をしたものに分かれたモンスター。
前者は大空を舞い、後者は海を行くのだが、こちらもハーピー同様に見た目が全く異なるのに同じ存在と言うややこしさを有している。
ただし、こちらの場合は歌声に魅了の効果を持っており、罠に誘い込んだりするのに扱われる。
歌声自体は美しいため、全身をがっしりとマストに括り付けて鑑賞を命がけで行うマニアも後を絶たない問題がある。
―――
【似てはいますが、足の形が違いますからネ。こちらの特徴であれば、セイレーンのほうで良いのでしょうガ…】
【ふゎ…んん-、この子良い…】
【思いっきり、主殿に魅了されているような感じになっているのだが】
「魅了なんて使えないんだけど」
べたぁとくっつき、ゆるゆるに過ごすセイレーン。
その姿からは敵意がないが、何なのだろうかこの子は。
【魅了…?違う、この子、なんかキラキラ‥‥あっちこっちのドロドロと違う、おいしそうな感じも…】
「ひぇっ」
【思いっきり危険そうなの!?】
【駄目です、ジャックは食べないでくださーい!!】
【ああっ…美味しそうなの、確かにそうだけど…その子、食べる気はない…んんにゅぅ…】
ぐいっとハクロがジャックを引っ張り、引き剥がした途端に、顔文字で「(´・ω・`)」ともいうような表情になるセイレーン。
一瞬だけ危険性を感じた気がしなくもないが、何か違うようだ。
【セイレーンは確かに人のような容姿をしていますが…目で見るものは、実は違うらしいでス】
「というと?」
【んー…なんと例えたらいいのか…いえ、これあたしのようなスライムの目もまぁ色々あるというか、モンスターが人というか生き物を何で見ているのか色々違っているのがあって…難しいですネ】
【…要は、人間の視覚とは違う観点から見るものを切り替えられるということで良いか?】
【ああ、それが良いのかもしれないですネ。ルミ、元人間ならば多分、感覚的にわかっているのでしょウ】
【そうだ。元人間だからという点で見れば、この違いは実感しやすいものだ】
例えを出そうとして悩んだファイに対して、ルミが代わりに答える。
曰く、どうやらモンスター側が目で見て捉えるものは、人間と違うものに切り替えることができるらしい。
【普通の獣等と同じように見ることもできるが、いざとなれば視界を切り替えられる。闇夜でも襲いやすかったり、自身の求める獲物を探したり…そうだな、例えば、我のようなアンデッド系の場合は、生きているその力そのものを目にすることができるといえるだろう】
「要は、人魂みたいなものを見ることができるってこと?」
【そのとおりだな。とはいえ、他の皆の切り替えする視覚がどういうものかはわからないが…】
この辺りはモンスターの種族での違いもあるだろうが、人には見えないもので捉えることができるものがある。
つまりこのセイレーンの少女も、何かを捉えており、ジャックには何かキラキラしたものがあるからこそ、目を引かれて引き寄せられたようだ。
【あとはこの、おいしそうなお弁当…じゅる…これも、欲しいかも…駄目?】
「キラキラよりも、本当はこっちがメインじゃないのか」
【…んにゅ】
お弁当を見て目を輝かせつつ、問いかけると速攻で目をそらした。
わかりやすすぎるというか、何なのだろうか、このセイレーン。
とにもかくにも、人を喰らう気はなさそうなので、こっちの弁当のほうでお腹を満たしてもらったほうがより安全かなと思ったので、分けることにしたのであった。
【もぐっ…んんぅ…おいしぃ!こっちもキラキラ、あっちもキラキラ!】
「キラキラに惹かれるって…カラスっぽいような。いやでも、メッチャ真っ白で正反対だな」
…そういえば今気が付いたが、この子、翼で器用に箸をもって食べているけど、どうやっているのそれ?
翼の先にかぎ爪とかあったりは…しないのか。
そう考えていたこともあったが今、そのモフモフに囚われていた。
【んんぅ…良いね、この子、ほやぁって感じで良い…】
「あの、重い…めっちゃだらんっとよしかからないで…」
【と言うか、誰ですか?】
皆でゆったりとした時間を過ごしていた中、現れたモンスターの少女。
ワタモコドリに負けず劣らずのフワフワとした翼が腕であり、その足は鳥のような物。
白い髪色に白い肌、ハクロをもうちょっとこう緩くした感じの子が、ジャックを翼で包みつつだらぁっともたれかかっていた。
主に後頭部にずしっとしたものを感じ取るが、それはそれ、これはこれ。
【両翼の人型モンスター…ハーピーかセイレーン…ちょっと足を見せてくださイ】
【んぅ?良いよぉ…】
種族の判別のためにファイが問いかけると、あっさりと見せてくれた少女。
【ふむ、対になっているような…いえ、可変しますねネ。この特徴であれば、『セイレーン』のほうでしょウ】
「ハーピーとか言っていたのも聞こえたけど…どう違うの?」
―――
『ハーピー』
通称人面快音波鳥。
きぃきぃと耳を貫くような高い音波を常に放ち、老婆もしくは普通の女性のような容姿をもつ、両翼と鳥の足を有するモンスター。
極端に見た目が分かれているのは、前者は弱っているような姿を見せて油断させる狡猾さを持ち、後者は主に人間の肉狙いのために進化したともされている。
見た目が思いっきり違うためにこれまでは成長した姿か別の種族かと言われていたが、研究の結果どちらも実は同じ存在だということが判明し、学会を騒がせた経歴もある。
『セイレーン』
美しい女性の姿を持ちつつ、両翼鳥足もしくは耳がひれで下半身が魚の人魚のような姿をしたものに分かれたモンスター。
前者は大空を舞い、後者は海を行くのだが、こちらもハーピー同様に見た目が全く異なるのに同じ存在と言うややこしさを有している。
ただし、こちらの場合は歌声に魅了の効果を持っており、罠に誘い込んだりするのに扱われる。
歌声自体は美しいため、全身をがっしりとマストに括り付けて鑑賞を命がけで行うマニアも後を絶たない問題がある。
―――
【似てはいますが、足の形が違いますからネ。こちらの特徴であれば、セイレーンのほうで良いのでしょうガ…】
【ふゎ…んん-、この子良い…】
【思いっきり、主殿に魅了されているような感じになっているのだが】
「魅了なんて使えないんだけど」
べたぁとくっつき、ゆるゆるに過ごすセイレーン。
その姿からは敵意がないが、何なのだろうかこの子は。
【魅了…?違う、この子、なんかキラキラ‥‥あっちこっちのドロドロと違う、おいしそうな感じも…】
「ひぇっ」
【思いっきり危険そうなの!?】
【駄目です、ジャックは食べないでくださーい!!】
【ああっ…美味しそうなの、確かにそうだけど…その子、食べる気はない…んんにゅぅ…】
ぐいっとハクロがジャックを引っ張り、引き剥がした途端に、顔文字で「(´・ω・`)」ともいうような表情になるセイレーン。
一瞬だけ危険性を感じた気がしなくもないが、何か違うようだ。
【セイレーンは確かに人のような容姿をしていますが…目で見るものは、実は違うらしいでス】
「というと?」
【んー…なんと例えたらいいのか…いえ、これあたしのようなスライムの目もまぁ色々あるというか、モンスターが人というか生き物を何で見ているのか色々違っているのがあって…難しいですネ】
【…要は、人間の視覚とは違う観点から見るものを切り替えられるということで良いか?】
【ああ、それが良いのかもしれないですネ。ルミ、元人間ならば多分、感覚的にわかっているのでしょウ】
【そうだ。元人間だからという点で見れば、この違いは実感しやすいものだ】
例えを出そうとして悩んだファイに対して、ルミが代わりに答える。
曰く、どうやらモンスター側が目で見て捉えるものは、人間と違うものに切り替えることができるらしい。
【普通の獣等と同じように見ることもできるが、いざとなれば視界を切り替えられる。闇夜でも襲いやすかったり、自身の求める獲物を探したり…そうだな、例えば、我のようなアンデッド系の場合は、生きているその力そのものを目にすることができるといえるだろう】
「要は、人魂みたいなものを見ることができるってこと?」
【そのとおりだな。とはいえ、他の皆の切り替えする視覚がどういうものかはわからないが…】
この辺りはモンスターの種族での違いもあるだろうが、人には見えないもので捉えることができるものがある。
つまりこのセイレーンの少女も、何かを捉えており、ジャックには何かキラキラしたものがあるからこそ、目を引かれて引き寄せられたようだ。
【あとはこの、おいしそうなお弁当…じゅる…これも、欲しいかも…駄目?】
「キラキラよりも、本当はこっちがメインじゃないのか」
【…んにゅ】
お弁当を見て目を輝かせつつ、問いかけると速攻で目をそらした。
わかりやすすぎるというか、何なのだろうか、このセイレーン。
とにもかくにも、人を喰らう気はなさそうなので、こっちの弁当のほうでお腹を満たしてもらったほうがより安全かなと思ったので、分けることにしたのであった。
【もぐっ…んんぅ…おいしぃ!こっちもキラキラ、あっちもキラキラ!】
「キラキラに惹かれるって…カラスっぽいような。いやでも、メッチャ真っ白で正反対だな」
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