170 / 238
少し広がっていく関係性
log-155 今更ながらの遭遇運
しおりを挟む
…ぽかぽかでモフモフで、その中に包まれての昼寝と言うのは心地いい。
すっきりとした目覚めでググっと体を伸ばしつつ、そろそろピクニックの時間を切り上げるのも悪くはないだろう。
「そろそろ、寮へ戻っても良いけど…えっと、君はどうするの?」
【ふみゅ?んー…群れに、戻るだけだよー】
ぱたぱたと両翼をはばたかせ、セイレーンの彼女はジャックの質問に対してそう答える。
元々あのワタモコドリたちの群れにいたらしく、あの中に戻るようだ。
【あの群れが、貴女の居場所ですか?】
【うん、そうだよ。…気が付いたら、あの群れで過ごしていたよ】
「セイレーンはセイレーンの群れで過ごさないのか?」
【そのはずですが…どうも彼女、はぐれたまま過ごしているようですネ】
基本的に同族のモンスターの群れで過ごしていそうなものなのだが、何かしらの事情でまったくの別種が群れに混ざって過ごす例がないわけでもない。
特に、ワタモコドリの場合はそのふわもこに癒される目的で他のモンスターでさえも引き寄せられてフワフワされている間に、うっかり卵がそのまま置き去りになって、そのまま群れに組み込まれてしまうことも珍しくはないらしい。
そのせいもあってか、過去のワタモコドリの群れの中には、竜種が混ざっていたり、あるいは強風を引き起こすモンスターが混ざって世にも珍しい超高速の群れが出来上がったりと言う例は存在しているようだ。
このセイレーンの彼女もその例にもれず、気が付いたらワタモコドリたちと過ごし…いつしか普通に群れの一員として加わっていたようだ。
【直近の月間ワタモコォ情報誌では、目撃情報が無いので…割と最近、混ざったようですネ】
【何ですか、その情報誌】
【ワタモコドリファンクラブが発刊している情報誌でス。いくつかのグループが名づけられて、今日はどこどこで触れられるかもなど、3~4か月先ぐらいまでのワタモコドリ予報図などが出ているのでス】
人と言うものは、自身の情熱が燃え上がれば燃え上がるほど、そのような物を作るのだろう。
とにもかくにも、ここでお別れならば、それはそれで問題ない。
【ふみゅ…また、来る?】
「うーん、今日はこのワタモコドリの話を聞いて、ピクニックしに来ただけだから…都合が良かったら、また来るかもね」
テスト明けの褒美と言うか、休日の癒し追加と言うべきか、そのためにやってきたピクニック。
そのため、再度来るかと言われれば、そこでまだワタモコドリたちに埋もれている者たち程惹かれては無いのですぐに向かうことはない。
【そっか…ふみゅ、お弁当おいしかったし…抱き心地、良かったしなぁ…】
バタバタと羽ばたきつつホバリングしたまま、セイレーンはジャックたちを見てそう告げる。
【んー、ちょっと迷うような…】
「うぉおおおお!!なぜ我々は、ここへーーー!」
「欲望に負けぬようにしていたはずが、知らずとワタモコドリへーーー!!」
「ん?」
【何ですか?】
何か迷ったようなしぐさを見たとたん、響き渡ってきた声。
何事かと見れば、騎士鎧を身に纏った一団がモフモフにうずもれていた。
【あれは…神聖のゴゴンドラズですネ】
【ああ、確か他国から派遣されて、ファイに負けたという…】
どうやら先日、ファイに敗北したという騎士たち。
無事に立ち直って特訓しているとかいう噂があったが、どうやらその最中にこの群れに引き寄せられたらしい。
「うぐごごごお…やばい、もふが、モフに沈み込まれる…」
「悪魔の誘惑に負けぬぞぉ…いや、悪魔よりもやばい誘惑が…」
「誰か、助けて、もふにしずむぅ‥‥」
絵面的に、モフモフの海に沈み込む騎士たちは、このモフに負けないようにと抗っている様子。
しかし、あまりにもモフモフがモフモフしていることで抗いきれず、助けを求める手を伸ばすが、どこかの溶鉱炉に沈み込む機械と言うべきか…哀れにも見えてくるだろう。
「…ハクロ、糸で引っ張り上げて。僕らが直に行ったら、ミイラ取りがミイラになる」
【わかりましたよ】
しゅるるるっと糸を伸ばし、手早くハクロが騎士たちの手に糸を巻き付け、釣りあげる。
ずりずりと引きずり上げるが、モフモフの反発力も利用してそこまで苦労はせず、すぐに全員安全な場所まで引きずり上げた。
「ふぅ…助かった、礼を言おう…」
「あのままモフの海に沈み込めば、モフに抗いきれずに、モフモフの中にとどまる羽目になるかと…」
息を切らすようだが、肉体的に疲弊したわけではないだろう。
たとえで言うのであれば、「あと5分寝かせて…」とかそういう気分に近い。
「というか、そこのスライムは…ああ、ファイさんでしたか…ギルドでの戦い依頼で、その節はどうもです」
【どうもでス】
既にギルドのほうで知り合っているのもあってか、ファイの姿を見てすぐに確認する騎士たち。
「そうなると…この少年が、貴女の主及び、他のモンスターも…ん?」
「どうしましたか、ドスコイ隊ち…よぉ?」
ジャックたちを見て、ファイの主及びその仲間たちと考えたのだろう。
従魔たちをさっと見る中‥セイレーンを見て、彼らの動きが止まった。
「この気配…まさか、神獣種!?」
「え、まさかそんな…本当か」
「神獣…種?」
【ふみゅ?】
セイレーンに対して、そう口を開くゴゴンドラズ。
何やら確実に、面倒事の予感がよぎるのであった…
すっきりとした目覚めでググっと体を伸ばしつつ、そろそろピクニックの時間を切り上げるのも悪くはないだろう。
「そろそろ、寮へ戻っても良いけど…えっと、君はどうするの?」
【ふみゅ?んー…群れに、戻るだけだよー】
ぱたぱたと両翼をはばたかせ、セイレーンの彼女はジャックの質問に対してそう答える。
元々あのワタモコドリたちの群れにいたらしく、あの中に戻るようだ。
【あの群れが、貴女の居場所ですか?】
【うん、そうだよ。…気が付いたら、あの群れで過ごしていたよ】
「セイレーンはセイレーンの群れで過ごさないのか?」
【そのはずですが…どうも彼女、はぐれたまま過ごしているようですネ】
基本的に同族のモンスターの群れで過ごしていそうなものなのだが、何かしらの事情でまったくの別種が群れに混ざって過ごす例がないわけでもない。
特に、ワタモコドリの場合はそのふわもこに癒される目的で他のモンスターでさえも引き寄せられてフワフワされている間に、うっかり卵がそのまま置き去りになって、そのまま群れに組み込まれてしまうことも珍しくはないらしい。
そのせいもあってか、過去のワタモコドリの群れの中には、竜種が混ざっていたり、あるいは強風を引き起こすモンスターが混ざって世にも珍しい超高速の群れが出来上がったりと言う例は存在しているようだ。
このセイレーンの彼女もその例にもれず、気が付いたらワタモコドリたちと過ごし…いつしか普通に群れの一員として加わっていたようだ。
【直近の月間ワタモコォ情報誌では、目撃情報が無いので…割と最近、混ざったようですネ】
【何ですか、その情報誌】
【ワタモコドリファンクラブが発刊している情報誌でス。いくつかのグループが名づけられて、今日はどこどこで触れられるかもなど、3~4か月先ぐらいまでのワタモコドリ予報図などが出ているのでス】
人と言うものは、自身の情熱が燃え上がれば燃え上がるほど、そのような物を作るのだろう。
とにもかくにも、ここでお別れならば、それはそれで問題ない。
【ふみゅ…また、来る?】
「うーん、今日はこのワタモコドリの話を聞いて、ピクニックしに来ただけだから…都合が良かったら、また来るかもね」
テスト明けの褒美と言うか、休日の癒し追加と言うべきか、そのためにやってきたピクニック。
そのため、再度来るかと言われれば、そこでまだワタモコドリたちに埋もれている者たち程惹かれては無いのですぐに向かうことはない。
【そっか…ふみゅ、お弁当おいしかったし…抱き心地、良かったしなぁ…】
バタバタと羽ばたきつつホバリングしたまま、セイレーンはジャックたちを見てそう告げる。
【んー、ちょっと迷うような…】
「うぉおおおお!!なぜ我々は、ここへーーー!」
「欲望に負けぬようにしていたはずが、知らずとワタモコドリへーーー!!」
「ん?」
【何ですか?】
何か迷ったようなしぐさを見たとたん、響き渡ってきた声。
何事かと見れば、騎士鎧を身に纏った一団がモフモフにうずもれていた。
【あれは…神聖のゴゴンドラズですネ】
【ああ、確か他国から派遣されて、ファイに負けたという…】
どうやら先日、ファイに敗北したという騎士たち。
無事に立ち直って特訓しているとかいう噂があったが、どうやらその最中にこの群れに引き寄せられたらしい。
「うぐごごごお…やばい、もふが、モフに沈み込まれる…」
「悪魔の誘惑に負けぬぞぉ…いや、悪魔よりもやばい誘惑が…」
「誰か、助けて、もふにしずむぅ‥‥」
絵面的に、モフモフの海に沈み込む騎士たちは、このモフに負けないようにと抗っている様子。
しかし、あまりにもモフモフがモフモフしていることで抗いきれず、助けを求める手を伸ばすが、どこかの溶鉱炉に沈み込む機械と言うべきか…哀れにも見えてくるだろう。
「…ハクロ、糸で引っ張り上げて。僕らが直に行ったら、ミイラ取りがミイラになる」
【わかりましたよ】
しゅるるるっと糸を伸ばし、手早くハクロが騎士たちの手に糸を巻き付け、釣りあげる。
ずりずりと引きずり上げるが、モフモフの反発力も利用してそこまで苦労はせず、すぐに全員安全な場所まで引きずり上げた。
「ふぅ…助かった、礼を言おう…」
「あのままモフの海に沈み込めば、モフに抗いきれずに、モフモフの中にとどまる羽目になるかと…」
息を切らすようだが、肉体的に疲弊したわけではないだろう。
たとえで言うのであれば、「あと5分寝かせて…」とかそういう気分に近い。
「というか、そこのスライムは…ああ、ファイさんでしたか…ギルドでの戦い依頼で、その節はどうもです」
【どうもでス】
既にギルドのほうで知り合っているのもあってか、ファイの姿を見てすぐに確認する騎士たち。
「そうなると…この少年が、貴女の主及び、他のモンスターも…ん?」
「どうしましたか、ドスコイ隊ち…よぉ?」
ジャックたちを見て、ファイの主及びその仲間たちと考えたのだろう。
従魔たちをさっと見る中‥セイレーンを見て、彼らの動きが止まった。
「この気配…まさか、神獣種!?」
「え、まさかそんな…本当か」
「神獣…種?」
【ふみゅ?】
セイレーンに対して、そう口を開くゴゴンドラズ。
何やら確実に、面倒事の予感がよぎるのであった…
45
あなたにおすすめの小説
俺の伯爵家大掃除
satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。
弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると…
というお話です。
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
【完結】辺境の魔法使い この世界に翻弄される
秋.水
ファンタジー
記憶を無くした主人公は魔法使い。しかし目立つ事や面倒な事が嫌い。それでも次々増える家族を守るため、必死にトラブルを回避して、目立たないようにあの手この手を使っているうちに、自分がかなりヤバい立場に立たされている事を知ってしまう。しかも異種族ハーレムの主人公なのにDTでEDだったりして大変な生活が続いていく。最後には世界が・・・・。まったり系異種族ハーレムもの?です。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
転生メイドは絆されない ~あの子は私が育てます!~
志波 連
ファンタジー
息子と一緒に事故に遭い、母子で異世界に転生してしまったさおり。
自分には前世の記憶があるのに、息子は全く覚えていなかった。
しかも、愛息子はヘブンズ王国の第二王子に転生しているのに、自分はその王子付きのメイドという格差。
身分差故に、自分の息子に敬語で話し、無理な要求にも笑顔で応える日々。
しかし、そのあまりの傍若無人さにお母ちゃんはブチ切れた!
第二王子に厳しい躾を始めた一介のメイドの噂は王家の人々の耳にも入る。
側近たちは不敬だと騒ぐが、国王と王妃、そして第一王子はその奮闘を見守る。
厳しくも愛情あふれるメイドの姿に、第一王子は恋をする。
後継者争いや、反王家貴族の暗躍などを乗り越え、元親子は国の在り方さえ変えていくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる