絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波

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少し広がっていく関係性

log-162 いつもの私/知らない私

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―――正直に言えば、記憶にないわけではない。

 あの香りをかいで、盛大にやらかしたのは覚えており…正直に言って、自分でやったことなのにドン引きしてしまうほどだ。


【…それで、今は天井裏から降りられないのか?】
【ええ…いや、本当に私何をやって…というか、なんですかあの腹の中真っ黒過ぎる私…確かに番を害されたら私であってもあの位は確かにやってもおかしくはないかもと思いますけれども…ああ、すみませン、ちょっと足りなカったでス、もう少しダケつぶ…】
【戻っているぞ】
【ひぃぃんっ!!】

 天井裏から聞こえてくるハクロの言葉に、ツッコミを入れておくルミ。

 昨晩の騒動はどうにか収め切ったとはいえ、色々とヤバいことがあった。

 特に、カトレアたちが凶暴化しかけたことよりも…あの香りで変化したハクロが、一番危うかったのだ。



(…まったく、旅をしていた時はそのようなそぶりを見せなかったとはいえ…何なのだ、あれは)

 元人間でもあるからこそ、あのハクロの異常さは感じ取れてしまう。

 並のモンスターではない厄災種であるとはいえ、それを抜きにしてもおかしいものがあった。


 以前から色々と思うところはあったが…悪魔にも、「格が落ちている」と言われていたりする分、彼女には何かあるのかもしれない。

 自覚はないらしいが…まだ効果が抜けきっていないせいか、その部分がこぼれだすようで、ジャックを怖がらせたくないからこそ収まるまで引っ込んでいるのだ。


【はぁ…本当にこういうのやらかした人たちが憎いですね…私としてはジャックから離れたくないのに、あと少しとはいえ離れさせるとは…ぐぬぬぬ】
【まぁ、その分地獄を見たようだがな…】

 何をどうしたら、ああいう風に人を変えてしまえるのだろうか。

 正直言って、自身の主であるジャックがあの様子を見なくて本当に良かったと、心の底から思わされてしまうほど、悲惨な光景になっていたのだ。

 後始末するのに一番苦労したというべきか、かつての同僚に押し付けたから良いが…












「いや、本当によかった。魔界のゴミの日が今日で…」

…その押し付けられた元同僚こと、悪魔ゼリアスもとい教師リアは、有休を取得して帝都から離れ、先日まではワタモコドリたちであふれていた森の中で扉を開いていた。

 放り込んでいるものは、押し付けられたゴミ人間だったもの

 そのあたりに遺棄をするわけにもいかず、かといってまだ息があるコレをとどめを刺して埋めるのも、やらかした所業を思えば微妙なところであり…その折衷案として、悪魔の住まう世界へゴミとして出すことであった。

 中々の畜生な行為だとは思うが、ゴミがやらかしたのは相当ヤバいことだ。

 単純に厄災種であろうともなかろうとも、ジャックの従魔であった彼女たちの力を考えると、凶暴になって暴れた時の被害を考えるとシャレにならないのだ。

 個人的な私情としては、後始末に相当苦労させられたというのもあるので…これで落としどころとしてはありだろう。

 どれほど、あの後の後片付けに苦労したのだと言いたい。
 あちこち修理させられるわ、目撃者をくまなく全員捕縛して記憶を弄りまくる必要があったわ、そのうえでさらにこのゴミの掃除を押し付けられるわ…何かと疲れたのだ。

「しかし、この混合狂香だったか…悪魔も少々関わっているのも不味いな」

 違法薬物として存在する、モンスターを凶暴化させる薬。

 悪魔の手で魔界の植物も混ぜ込まれており、今回の分以外のものも量産されている可能性は否定できない。


「今後も狙われる可能性もあるだろうし…対策は取っておくべきか」

 悪魔としては、人間同士が何を使おうが大したことではない。
 
 しかし、それで受ける損害を考慮するのであれば、少ないほうが良い。

 それに…眠れる獅子を起こすというか、蛇の尾を踏むというべきか、逆鱗を引きちぎるような真似をする馬鹿が出てきたときが、一番恐ろしいモノ。

 それゆえに、一応は手助けをしておくことを考えておくのであった…




「…まぁ、結果としてこの世界での人が滅びる道を歩むのもありだが…いなくなったらそれはそれで、悪魔も成り立たないからな…」

…何事も、相手がいる方が都合が良いのである。
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