絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波

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選択は人次第

log-205 荒療治と終わりの予感

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…恋愛雑魚ナメクジ。

 そう呼ばれても仕方がないことぐらい、彼女たちは自覚していた。

【まぁ、私たちのほうが攻めに回れば強いんですけれどね!】
【一時の不意打ちによる敗北なんぞ、そこまで大した問題でもないぜ】

【…なるほど。よーーーくわかったのなの。なら、頼むのなの】
「えっと…吊るされているハクロとルトライトに対して、口説けと?」
【イエスなの】
【【「ムードもへったくれも何もないこの状況で!?」】】


 告白すれば茹で上がり、襲われれば確実に狩られる。

 双方ともに攻めの手が強すぎてどうしようもできない状況に対して、もどかしさを覚えたカトレアの手によって、強制的にジャックたちは一室に押し込められていた。

 うかつに襲ったり逃げることもできないように、特製の蔓でぎっちぎちに縛られたハクロとルトライト…正直言って、この状況が特殊過ぎて告白どころではない気がしなくもない。

【だけど、そのぐらいしないとなの万が一の時が怖いのなの】
【半分ぐらい、私情が入っているようにも見えるが…】

 ルミの言葉に対して、そっと目をそらすカトレア。

 そもそもハクロとルトライトが、耐えきれずに襲おうとした際に、止めようとして気絶させられた恨みが残っていないわけがない。

 私情を挟まないように…とはいかず、色々と入りまじってしまうのは仕方がない事だった。


【だからこの際、徹底的にやってもらうのなの。安心して、ミーの蔓はぎっちぎちに締め上げているから、告白に耐え切れずに爆発しても、問題ないのなの】
【爆発する時点でやばいんですけれども!?】
【鬼!悪魔!!鬼畜花妖精!!】
【オーガが鬼を叫んでも、意味ないと思うのですガ…】

 カトレアの言葉に対して、思わず叫ぶ縛られた二人。

 しかし、いかんせん罵倒を言いなれているわけでもなく、語彙力が足りない。
 
 その程度の言葉で、カトレアに響かせることなんてとてものことが無ければ…

【【---断崖絶壁】】
ミキッ、ギチギチィイイイイイイイイイ!!









【…はっ、うっかりしたのなの。何か今、物凄く不快な言葉が…】
「あの、カトレア…二人とも、気絶したんだけど」

 逆鱗に触れる、竜の尾を踏む…いやまぁ、カトレアの場合は植物でもあり妖精でもあるからどちらでもないのだが、触れてはいけない部分があるのだ。

 それを盛大に踏み抜いた結果が…あの惨状である。

【ううっ…私、色々な意味でお嫁さんになれなくなるところでした…】
【ひどすぎるぜ…オレもヤバかった…】

 ほどかれて解放されたが、しくしくと泣く二人。

 ぽむぽむとジャックが頭をそっとなで、少しは癒されただろうか。

「…ひとまずまた、やり直したほうがいいかな?」
【いえ…このままグダグダしていても、意味がないです。…ええ、せっかくジャックが頑張って、私たちに告白しようと覚悟を決めていますので‥それに応えるべく、私も…!!】

 ぐっとこぶしを握り締め、そう答えるハクロ。

 恋愛雑魚蜘蛛などと呼ばれたくはない…その思いは、しっかりとあるのだから。

【だからこそ、ジャック!!今ここでもう一度私たちへ告白を…!!】
【その心、俺も同じだぜ!!我が君、どうか!!】

 恥辱をぶちまけたのもあって、二人とも心が決まったようだ。

「…なら、そうしようか」

 勢いに任せての気もするが、それでもしっかりとした覚悟が決まったのならば答えないわけにもいかない。

 彼女たちの思いに応えなければ、男が廃る。

 そう考え、ジャックの方も動こうとした…その時だった。





ーーーーーーーーーズゥンッツ!!
「うわっつ!?」
【きゃぁっ!?】
【な、なんだ!?』

 突然、何かが大きく揺れ動くような感覚が生じた。

 地震、いや、違う。

 それとはまた別のものだ。

「いったい、何が起きた?」
【物凄い巨漢が、ぶっ倒れたとかではなさそうですね】

 今の感覚は幻ではなく、外の方に耳を向ければ、同じような感覚を味わった人らしい声が聞こえている。

 単純なものではなく、何かこう、もっと嫌な予感が迫っているようであった…
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