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貴族問題で章

祝!!200話達成記念閑話 その2 スアーン恋愛事情

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SIDEスアーン


‥‥‥人生、山あり谷あり難所ありと、様々な言われ方があるだろう。

 そして今、スアーンはその谷に当たるような、深い絶望に襲われていた。


「‥‥‥え?ちょっと待って。頼むからもう一回行ってくれないか?」
「えっとね、そのね、私…‥‥別に好きな人が出来てしまったのよ」
「俺っちよりも?」
「ええ」

 そうはっきりと宣言され、スアーンは唖然としたのであった。




 ある日の放課後、スアーンは最近できていた彼女に呼び出され、学園の校舎裏にてその内容を聞いていたのだが‥‥‥出てきたのが別れ話だったのである。

 彼女は以前、スアーンが階段から落ちてきた彼女に腰を痛めてまで助け出し、互いに好きになって付き合っていたのだが‥‥‥所詮はその場限りの吊り橋効果だったのか、それともスアーン自身に魅力がなさすぎるだけなのか。


「あのドキドキはね、幻想だったのかもしれないと思い始めたの。そして、ここ最近気になる人が他にできて‥‥‥実は、あなたに内緒でその人と付き合っていたのよね」
「ふわっ!?そ、その相手って…‥」
「この学園とは違う、魔導書グリモワール持ちでもなく、貴族家のとある子息の方よ。まぁ、当主の座を継ぐつもりはなく、将来は騎士に入団するそうなのだけれども、そのワイルドでぐいぐいきて、それでいてヘタレなところを好きなってしまったのよ。だからね、ごめんなさい」


 そう言い残し、彼女はその場を去ってしまった。

 後に残ったスアーンはあっけに取られ、去っていく彼女の背中を見るしかできないのであった…‥‥









「‥‥というわけなんだよぢぐじょぉぉぉゔ!!せっかくいいところまで行っていたと思っていたのに、まさか破局するなんて思えなかったんだよぉぉぉぉぉ!!」
「うわぁ、それはそれで酷いような…‥‥同情するよ」

 寮へ戻り、スアーンは友人たちに号泣しながら話していた。

 ルースと違って、スアーンはそれなりに同性の友人が多いのである。

 友人たちはスアーンの破局話を聞きつつ、同情してうんうんとうなずいていた。


「結局のところ、その場のノリで付き合っていた感じが、時間が経って冷めたという事なのかな」
「そうじゃねぇか?勢いに乗って付き合ってみたら、思った以上につまらない相手だと思われたんだろうな」
「というか、その相手のヘタレって部分が気になるんだが…‥‥それがどう良いのか、その相手の女の趣味にツッコミを入れたいのは俺だけだろうか?」
「あ、でもそんな人と付き合っていたスアーンも、相手からしてみればその趣味の中にいたのかも」

「お前ら全然慰める気がないようなんだけど!?」

 友人たちの心をえぐるような話に、スアーンは思わずそう叫ぶ。

「だってさ、お前に彼女ができたこと自体、一生に一度あるかないかの奇跡じゃん」
「そうそう、俺達は彼女なし組の悲しい人生だったのに…‥‥先に恋人ができたことが、割とマジで恨めしかったからな」
「ま、結局破局したから文句はないけどな!!」

 友人たちのふざけているような、それでいて心無い言葉にスアーンは傷ついた。


「ぐっ・・・ぢぐじょぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 本気で涙を滝のように流し、悲しむスアーン。

 号泣し、腕を地面にたたきつけ、その悲しみたるや人生の中で比較になるものなどなし!!







‥‥‥三日三晩号泣し続け、そしてスアーンは立ち直り、悟った。

 無くなった彼女であれば、またつくればいい。

 今度こそ、本当に愛せるようなひとを探し、そして別れることがないように愛を注ぎたいと。



 だが、どうやって新しい彼女を作ればいいのかスアーンは分からない。

 そもそも、あの付き合っていた彼女との出会いのきっかけは偶然の産物によるものであり、そうそう起きるような事ではないのだ。

 考えに考え、スアーンが出した結論は‥‥‥‥




「…‥‥どうか俺っちに、女の子にモテモテになる方法を授けてくれ!!」
「ちょっと待て、何でその話題を俺に振るんだ?」

 友人であるルースに対して、その日スアーンは全身全霊の土下座で頼み込んだのであった。





 かくかくしかじかと事情を説明すると、ルースは呆れたような顔になった。

「なるほどね‥‥‥彼女に振られて、立ち直ったから新しくつくりたいけど、どうすれば出会いの場ができるのかが分からないってか」
「そういうことだ!!だからこそ、普段から女の子との遭遇率が高いお前に頼み込んだのだ!!」
「少し誤解があるけどさ、別に俺は普通だぞ?そんなにモテているのか?」
「どの口が言うんだよこの野郎!!」

 ルースのその言葉に対して、頼み込んで低姿勢だったはずのスアーンはついキレて叫んだ。

 
 ルース自身には自覚がないだろうけど、その周囲に集まっている子は誰もがルースに対して好意を持って居る者が多いことぐらい、学内でも常識であった。

 公爵家の令嬢、帝国の王女、国滅ぼしのモンスター、妖精姫…‥‥数え上げるだけでも、どう考えても誰もがレベルが高く、見え見えな恋心なのにほぼ感じていないルースに対して周囲がもどかしく思えているほどである。


 いかにどれだけ恵まれているのか小一時間……いや、数時間かけて説教したいところであるが、ここはぐっとこらえるしかない。

「とにもかくにもだ!!ちょっとは女の子に好意を持たれるような方法を教えてくれぇぇぇ!!」
「そんなことを言われてもな…‥‥あ、そうだ」

 困ったような顔をしたルースであったが、何かを思いついたようだ。


「なぁ、スアーン。だったら積極的にアピールするのはどうだ?」
「え?」
「話を聞くと、その彼女はお前から魅力を感じなくなったから別れたんだよな?だったらさ、その魅力を周囲に積極的に示せばいいと思うだよ。要は濃い印象を残し、継続的に与えれば‥‥‥」
「なるほど!!早速やって来るぜぇぇぇぇ!!」
「あ、ちょっと待て、しつこいと逆効果に」



 ルースの注意を無視して、スアーンはその場を走り去る。

 受けたアドバイスの、印象を残すという方歩であるならば色々なものがある。

 それらすべてを試し、スアーン自身がいかにどのような魅力を持って居るのか外部へアピールすればどうにかなるだろうと彼は考え、実行しまくった。


 何度も繰り返して話したり、人の目のを引くような行動を起こしたり、とにかく積極的に異性と触れ合うような機会にも参加し、自身の印象を付けていこうとスアーンは努力した。

 それこそ、血反吐が吐き出るほどの辛い辛い努力をしつつ、己が新たな彼女を作るために必死になり続けた結果…‥‥





「‥‥‥で、勉学の方をおーろーそかにしてどーするのよ。成績下降しーて、補習を決定づーけるわね」

 努力をし過ぎて勉学をおろそかにして、成績が下降してしまったスアーン。

 学園長室に呼び出され、毎日の足りない勉学の補習を受ける羽目になったのであった。


‥‥‥なお、結局のところしつこすぎる男としてマイナス面での印象を強めてしまい、ますます彼女ができる道が狭くなったのは言うまでもない。

「おい、スアーン。お前の印象は強まったから、結果的に良かったんじゃないか?」
「良くねぇよ!!なんか女の子たちが離れるようになったんだけど!!」

 ルースに対して叫ぶスアーンであったが、自業自得なのであった。


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