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興味もないけど、彼が言った
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「…‥‥ああ、あの国が滅んだのね」
「なんだ、そんなに驚かないのか?」
「ええ、もう意味もないしね」
せっかく彼が持って来てくれたその記事を見ながらも、私は特に何も思う事は無かった。
今はもう、それなりに落ち着いているし、今更考える必要もない。
これが、あの国が選択したことなのだからね…‥‥。
――――――――――――――――――――
「シュロアウス=フィーメール!!貴様の横暴は既に分かっている!!今この時より婚約を破棄し、わたしはこのホービィル=ルチル令嬢と共に歩むと宣言する!!」
‥‥‥卒業式の場での、堂々と宣言してしまった、大馬鹿者の王太子ジャネーノ=ヤンス。
ああ、あの方はいつから、ここまでの愚物に成り下がってしまったのだろうか?
大勢の観衆がいる中で、わざわざ公爵令嬢である私との婚約を破棄すると宣言し、見たこともない令嬢と共に、婚約を宣言するというのはどうなのだろうか。
いや、あえて注意する必要もないようね。この様子だと、彼の情報通り‥‥‥
「‥‥ええ、分かりましたわ。婚約破棄、確かに受けましょう」
そう言い、私は退出しようとする中で、バカの取りまきたちがさっと私の前に立ちふさがった。
「無理だ!シュロアウス令嬢!!」
「貴女には、我々の大事なホービィル様に対してのいじめをしていた嫌疑がかかっているからな!!」
「そうなんですぅ~、その人、いつもいつも嫌がらせしてきて、怖かったんですよ~」
「おぅおぅ、泣くなホービィル。今まさに、君のためにこの悪女に対して罰を下してやるからな」
ちょっと気持ち悪いような媚を売るホービィルの言葉に、愚物殿下はそう口にする。
‥‥‥いくら王太子という立場とは言え、婚約破棄したばかりの公爵令嬢に対して、罰を下すというのはどうなのだろうか。
いや、そもそも何に対しての、罰を下すのか。
「‥‥愚物でん、コホン、ジャネーノ様、何に対しての嫌疑と罰なのかしら?」
「とぼけるな!!今そいつらも言っただろ!!貴様はこの愛しいホービィルに対して、執拗で凶悪ないじめをしていたとな!!」
私の問いかけに対して、自信満々に答える愚物殿下。
ちょっと言いかけたところを聞いていなかったようだけど‥‥‥まぁ、そこは都合の悪い事を聞かないこの方の特性とでも考えるべきでしょう。
「失礼ながらジャネーノ様。私は本日、そのホービィル様に始めて会ったのですが」
「嘘だな!!この愛しい彼女を一度も見たことがないとは、言わせんぞ!!」
いや、本当なんですけれども。
卒業式に出席しているとはいえ…‥‥私、今日まで授業出てなかったんですよ。王太子妃として勉強をさせられていたからね、先ず巡り合うことがないのよね。
いやまぁ、確かにちょくちょく授業に顔を出せる機会もあったけれども、その子に会ったこともないのよ。
友人たちが、たまにいない私にいじめられていると言いまくっている、頭のおかしな娘がいると話をしている程度で、本当に出くわしたのは今日が初めてなのだ。
「何にしてもだ!!貴様が彼女に対して卑劣な行いをしたことは全て証拠に挙がっている!!」
「その証拠は?」
「彼女自らの告白だ!!」
物証、無いんですね。
そのばかばかしい発言に、少々呆れつつも、どうやら彼の取りまきたちも、あのホービィルとやらの話を信じ込んでいるようで、見事に傀儡と化している模様。
この程度、すぐにでも払いのけられなくもないけど‥‥‥
「まずは牢屋へぶち込んでやる!!そしてそこでわたしたちが協議して、貴様にふさわしい罰を与えてやるから、大人しく待っておけ!!」
‥‥‥せっかく、人目につかないに案内してくれるようなので、大人しく従いましょう。
――――――――――――――――――――
「‥‥‥思い返してみれば、何故あの時、すぐにでも罰を出さなかったのかしら?冤罪をかぶせての断罪であれば、すぐに処罰を出すわよね?」
「流石に俺にも、そこは分からん。まとまりがなかったのか、あるいは他者からの要求などもあったのか…‥お前を手に入れようとする輩が、密かに手を貸していた可能性があるからな。俗にいう、マッチポンプとかだろう」
「ふーん‥‥‥まぁ、それでも意味はないですけれどね。どうせ、気が付いている人はいたでしょうし、美味しいところで救いに来るような王子様なんて、ろくでもない事もありますもの」
「身もふたもないというか、夢も希望もないなぁ…‥‥」
私の言葉に、呆れたように彼は肩をすくめる。
でも、間違っていないでしょう?わかっているのに救わずに、その最後のギリギリまで待っているというのは、やられている方にとっては嫌ですからね。
都合よく、助けに来るなんて、虫のいい話過ぎるでしょう。
だからこそ、あの牢屋に囚われた後…‥‥
――――――――――――――――――――
「‥‥‥鍵がなければ出られないって思ったのかしら?看守も付けないのは甘すぎでしょう。まぁ、都合としては良い方です」
そういい、私は壁に向かってパンっと手をならした。
「さて、姿を現してくださいませ、悪魔ゼリアス様」
「誰も見ていないのに格好つけているところ悪いが、俺こっちにいたぞ」
「…‥‥あら」
ちょっとね、こういう感じの格好つけみたいなのをやって見たかったのだけれども‥‥‥少々、会わなかったかしら。
まぁ、良いでしょう。
「冤罪の証拠は既に用意しているわよね」
「ああ、全部集めている。むしろ、相手側のやらかしぶりを記録しまくったものの方が多くてな、仕分けしているが膨大すぎる。人間、何でたまにここまでの馬鹿が出るのかと言いたくなるほどだぞ」
疲れたのか、その場に椅子を出現させ、腰かける悪魔ゼリアス。
この国では見ない様な、白銀の髪色に、赤い目をしており、宙から取り出した書類を読みながら、疲れたようにそう口に出した。
‥‥‥私は、物心ついたときから、あの馬鹿王太子という婚約者がおり、その根の腐れ様を幼心から理解しており、できるだけ破棄をしたかったのに、お父様たちは政略的な意味合いだということで、許してくれなかった。
それで、王城の庭で泣いている時に…‥‥忍び込んでいた彼が、声をかけてくれた。
彼は元々、この国を滅ぼすという目的のために、この地へ訪れた悪魔。
何者かの命令なのかはわからないけれども、何かしらの都合で、この国を滅ぼすことになったそうだ。
とはいえ、武力などで押し切る事もできるそうだが、被害が大きすぎても面倒なことになるらしいし、時間をかけてゆっくりと蝕み、できるだけ平穏に事を済ませようとしていたらしい。
そんなときに、偶然私たちは出会った。
あの王子が愚物であるのならば、それを利用した国を滅ぼすことができるという目的で彼は私に近づき、私はあの愚物から離れることができるのであれば、それで良いという目的で私は彼に近づいた。
利害の一致でもあり、彼としては国が滅ぼせ、私としてはあの愚物から離れられる上に、聞いてくれない者たちへの嫌がらせとして、できるから互いに都合が良かったのだ。
まぁ、流石に一国の公爵令嬢が国を滅ぼすことに手を貸すのもなんだと思うが‥‥‥‥あの子にしてあの親がありという言葉もあって、親たちも相当のクズだったからね。
何にしても、その日から互いの目的のために、私たちは協力し合った。
嫌だった王太子妃教育に必死に取り組みつつ、国の経営に少しずつ私たちは入り込んだ。
彼らは気が付いているだろうか?いつしか、仕事が減っていたことに。
それらは全て、彼も協力して、ほぼ私たちに依存しなければできない状態になっていたことに。
国同士の条約、貿易取引、城内の使用人たちとの契約内容‥‥‥政治、経済をともに支配し、更に孤児院の手助けや公衆衛生の向上なども行い、人脈なども着々と築き上げ、人望もしっかりと集めた。
それらが全て、彼らのものだと思っているようだが、国民たちは全てそれが違う事を知っているだろう。
遊び惚け、何もせず、街へ繰り出して娼館に入り浸る国王。
町中へ繰り出しては、あちこちへトラブルを引き起こし、嫌がられる王太子に、情報だけで聞いていたどこかの令嬢&取りまきたち。
ついでに公爵領の経営も把握し、更に国中のすべての財政なども手中に収めていたことに、何故、誰も気が付かないのかと言えるほどだったのだけれども‥‥‥うん、まぁ、基本馬鹿だったからじゃないかしら?
悪魔ゼリアスは、魔法で少々ごまかして分からないようにしていると言っていたが‥‥それでも限度はあるのに、見事にズブズブと相手が深みに嵌る様子を見て、流石に効きすぎじゃないかと疑っていた。
でもね、ちょっと調べて見たら‥‥‥とっくに、その魔法解けていたのよね。うん、流石の効き目に少しづつ弱めて、最後にはかけない状態にしても、全然変わらなかったらしい。
無駄手間だった上に、それだけ酷いということが分かって、流石の悪魔でも呆れを隠せなかったらしい。
――――――――
「正直、何もしなくても勝手に自滅していたのではないかと思う。お前と契約せずとも、放置しただけでな」
「それ、確かにそう言えてますが…‥‥まぁ、早まっただけですかね」
何にしても、これはもう終わった話。
相手が知らず知らずのうちに、私たちの仕事の解決ぶりに依存しまくったがゆえに、いなくなったその時から、決まっていた話である。
滅亡したのであれば、もう私に縛る物は無い。
これから先、自由に過ごせるのだが…‥‥
「しかし、冒険者として過ごしていくのは良いが…‥‥もう、滅んだ時点で契約は切れた。俺はこの後、滅びた跡地を色々としなければならないが…‥‥そのままでいいのか?」
「ええ、いいの。この生活が、一番私の性に合っているもの」
市井に降り、着実に過ごしていく中で、公爵令嬢としていたのはどれだけ窮屈な事だったのか、よく理解できた。
今はもう、低ランクとは言え着実に実力をつけ、ちょっとした冒険者としても生活が成り立ち、どこの国へ行こうとも問題は特にない。
「でも、できるだけ過ごしやすい国へ、行きたいわね。最後の別れだし、おすすめのところとかがないかしら?」
「ふむ‥‥‥ならば、船に乗って海を越えた先にある、とある国がおすすめだろう。最後の別れとして…いや、また会う機会もあるかもしれないが、せっかくだからこれを持っていけ」
そう言って手渡されたのは、ひとつのチケット。
それは、その国へ行くために必要な料金が既に、支払われているもの。
「注意するべきとすれば、その国を治める者の中に、色々とやばい奴もいるが…‥‥何もせずに過ごしていれば、そう関わる事もないだろうし、大丈夫だろう」
「支払い済みだけど、もう分っていたのかしら?」
「ま、それだけともにいればな‥‥‥‥じゃあな」
そう言い、彼はその場を去って、姿を消した。
あとに残されたのは、一枚の他国行きのチケットだけだ。
「ええ、さようなら、悪魔ゼリアス。もし、また会う機会があれば、その時は語り合いましょう」
‥‥‥残念ながら、彼に対して恋愛感情を抱くことは無かったが、共に仕事をこなし、ちょっとした共感を覚えていた、面白い悪魔。
そもそも、なぜあの国を彼が滅ぼそうとしていたのか、何者かの命令なのか、など細かい部分を聞いて見たかったけれども‥‥‥聞く必要もないだろう。
だって、もう終わった話ですしね。
そう思い、私も続けてその場を去り、最後に聞いた、その過ごしやすい国とやらへ向かうことにした。
あの国は滅亡したけれども、それはもうどうでもいい話しであり、捨てておけばいい。
国が滅んだと言っても、あの王太子とかは生きている可能性もあるが…‥‥依存していた彼らが、普通の生活に戻れるわけもない。
どこかできっとやらかし、噂になる頃合いには、もう国も忘れている。
「それじゃ、向かいましょうか!」
新しい住みかへ向け、私は先を行く。
相手を依存させるだけ依存させまくり、滅ぼした国の女だとしても、それは依存した彼らの問題で、私の責任ではない。
そう思いつつ、悪魔な彼との再会もちょっと夢見つつ、先へ向かうのであった…‥‥
―――――――――――――――――――
‥‥‥後日、案外あっさりと再び彼に会う事を私は知らない。
ついでに、国から逃げ延びていたらしい王太子と取りまき、令嬢にも出くわしたが、そちらは何やら盛大にやらかしたらしく、悲惨な目に遭っていたが…‥‥うん、まぁ自業自得よね。
というか、意外にもしぶとく生きていたことに、ちょっと驚くのであった。依存していても、生きようと思えば、生きれるのね…‥‥
「なんだ、そんなに驚かないのか?」
「ええ、もう意味もないしね」
せっかく彼が持って来てくれたその記事を見ながらも、私は特に何も思う事は無かった。
今はもう、それなりに落ち着いているし、今更考える必要もない。
これが、あの国が選択したことなのだからね…‥‥。
――――――――――――――――――――
「シュロアウス=フィーメール!!貴様の横暴は既に分かっている!!今この時より婚約を破棄し、わたしはこのホービィル=ルチル令嬢と共に歩むと宣言する!!」
‥‥‥卒業式の場での、堂々と宣言してしまった、大馬鹿者の王太子ジャネーノ=ヤンス。
ああ、あの方はいつから、ここまでの愚物に成り下がってしまったのだろうか?
大勢の観衆がいる中で、わざわざ公爵令嬢である私との婚約を破棄すると宣言し、見たこともない令嬢と共に、婚約を宣言するというのはどうなのだろうか。
いや、あえて注意する必要もないようね。この様子だと、彼の情報通り‥‥‥
「‥‥ええ、分かりましたわ。婚約破棄、確かに受けましょう」
そう言い、私は退出しようとする中で、バカの取りまきたちがさっと私の前に立ちふさがった。
「無理だ!シュロアウス令嬢!!」
「貴女には、我々の大事なホービィル様に対してのいじめをしていた嫌疑がかかっているからな!!」
「そうなんですぅ~、その人、いつもいつも嫌がらせしてきて、怖かったんですよ~」
「おぅおぅ、泣くなホービィル。今まさに、君のためにこの悪女に対して罰を下してやるからな」
ちょっと気持ち悪いような媚を売るホービィルの言葉に、愚物殿下はそう口にする。
‥‥‥いくら王太子という立場とは言え、婚約破棄したばかりの公爵令嬢に対して、罰を下すというのはどうなのだろうか。
いや、そもそも何に対しての、罰を下すのか。
「‥‥愚物でん、コホン、ジャネーノ様、何に対しての嫌疑と罰なのかしら?」
「とぼけるな!!今そいつらも言っただろ!!貴様はこの愛しいホービィルに対して、執拗で凶悪ないじめをしていたとな!!」
私の問いかけに対して、自信満々に答える愚物殿下。
ちょっと言いかけたところを聞いていなかったようだけど‥‥‥まぁ、そこは都合の悪い事を聞かないこの方の特性とでも考えるべきでしょう。
「失礼ながらジャネーノ様。私は本日、そのホービィル様に始めて会ったのですが」
「嘘だな!!この愛しい彼女を一度も見たことがないとは、言わせんぞ!!」
いや、本当なんですけれども。
卒業式に出席しているとはいえ…‥‥私、今日まで授業出てなかったんですよ。王太子妃として勉強をさせられていたからね、先ず巡り合うことがないのよね。
いやまぁ、確かにちょくちょく授業に顔を出せる機会もあったけれども、その子に会ったこともないのよ。
友人たちが、たまにいない私にいじめられていると言いまくっている、頭のおかしな娘がいると話をしている程度で、本当に出くわしたのは今日が初めてなのだ。
「何にしてもだ!!貴様が彼女に対して卑劣な行いをしたことは全て証拠に挙がっている!!」
「その証拠は?」
「彼女自らの告白だ!!」
物証、無いんですね。
そのばかばかしい発言に、少々呆れつつも、どうやら彼の取りまきたちも、あのホービィルとやらの話を信じ込んでいるようで、見事に傀儡と化している模様。
この程度、すぐにでも払いのけられなくもないけど‥‥‥
「まずは牢屋へぶち込んでやる!!そしてそこでわたしたちが協議して、貴様にふさわしい罰を与えてやるから、大人しく待っておけ!!」
‥‥‥せっかく、人目につかないに案内してくれるようなので、大人しく従いましょう。
――――――――――――――――――――
「‥‥‥思い返してみれば、何故あの時、すぐにでも罰を出さなかったのかしら?冤罪をかぶせての断罪であれば、すぐに処罰を出すわよね?」
「流石に俺にも、そこは分からん。まとまりがなかったのか、あるいは他者からの要求などもあったのか…‥お前を手に入れようとする輩が、密かに手を貸していた可能性があるからな。俗にいう、マッチポンプとかだろう」
「ふーん‥‥‥まぁ、それでも意味はないですけれどね。どうせ、気が付いている人はいたでしょうし、美味しいところで救いに来るような王子様なんて、ろくでもない事もありますもの」
「身もふたもないというか、夢も希望もないなぁ…‥‥」
私の言葉に、呆れたように彼は肩をすくめる。
でも、間違っていないでしょう?わかっているのに救わずに、その最後のギリギリまで待っているというのは、やられている方にとっては嫌ですからね。
都合よく、助けに来るなんて、虫のいい話過ぎるでしょう。
だからこそ、あの牢屋に囚われた後…‥‥
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「‥‥‥鍵がなければ出られないって思ったのかしら?看守も付けないのは甘すぎでしょう。まぁ、都合としては良い方です」
そういい、私は壁に向かってパンっと手をならした。
「さて、姿を現してくださいませ、悪魔ゼリアス様」
「誰も見ていないのに格好つけているところ悪いが、俺こっちにいたぞ」
「…‥‥あら」
ちょっとね、こういう感じの格好つけみたいなのをやって見たかったのだけれども‥‥‥少々、会わなかったかしら。
まぁ、良いでしょう。
「冤罪の証拠は既に用意しているわよね」
「ああ、全部集めている。むしろ、相手側のやらかしぶりを記録しまくったものの方が多くてな、仕分けしているが膨大すぎる。人間、何でたまにここまでの馬鹿が出るのかと言いたくなるほどだぞ」
疲れたのか、その場に椅子を出現させ、腰かける悪魔ゼリアス。
この国では見ない様な、白銀の髪色に、赤い目をしており、宙から取り出した書類を読みながら、疲れたようにそう口に出した。
‥‥‥私は、物心ついたときから、あの馬鹿王太子という婚約者がおり、その根の腐れ様を幼心から理解しており、できるだけ破棄をしたかったのに、お父様たちは政略的な意味合いだということで、許してくれなかった。
それで、王城の庭で泣いている時に…‥‥忍び込んでいた彼が、声をかけてくれた。
彼は元々、この国を滅ぼすという目的のために、この地へ訪れた悪魔。
何者かの命令なのかはわからないけれども、何かしらの都合で、この国を滅ぼすことになったそうだ。
とはいえ、武力などで押し切る事もできるそうだが、被害が大きすぎても面倒なことになるらしいし、時間をかけてゆっくりと蝕み、できるだけ平穏に事を済ませようとしていたらしい。
そんなときに、偶然私たちは出会った。
あの王子が愚物であるのならば、それを利用した国を滅ぼすことができるという目的で彼は私に近づき、私はあの愚物から離れることができるのであれば、それで良いという目的で私は彼に近づいた。
利害の一致でもあり、彼としては国が滅ぼせ、私としてはあの愚物から離れられる上に、聞いてくれない者たちへの嫌がらせとして、できるから互いに都合が良かったのだ。
まぁ、流石に一国の公爵令嬢が国を滅ぼすことに手を貸すのもなんだと思うが‥‥‥‥あの子にしてあの親がありという言葉もあって、親たちも相当のクズだったからね。
何にしても、その日から互いの目的のために、私たちは協力し合った。
嫌だった王太子妃教育に必死に取り組みつつ、国の経営に少しずつ私たちは入り込んだ。
彼らは気が付いているだろうか?いつしか、仕事が減っていたことに。
それらは全て、彼も協力して、ほぼ私たちに依存しなければできない状態になっていたことに。
国同士の条約、貿易取引、城内の使用人たちとの契約内容‥‥‥政治、経済をともに支配し、更に孤児院の手助けや公衆衛生の向上なども行い、人脈なども着々と築き上げ、人望もしっかりと集めた。
それらが全て、彼らのものだと思っているようだが、国民たちは全てそれが違う事を知っているだろう。
遊び惚け、何もせず、街へ繰り出して娼館に入り浸る国王。
町中へ繰り出しては、あちこちへトラブルを引き起こし、嫌がられる王太子に、情報だけで聞いていたどこかの令嬢&取りまきたち。
ついでに公爵領の経営も把握し、更に国中のすべての財政なども手中に収めていたことに、何故、誰も気が付かないのかと言えるほどだったのだけれども‥‥‥うん、まぁ、基本馬鹿だったからじゃないかしら?
悪魔ゼリアスは、魔法で少々ごまかして分からないようにしていると言っていたが‥‥それでも限度はあるのに、見事にズブズブと相手が深みに嵌る様子を見て、流石に効きすぎじゃないかと疑っていた。
でもね、ちょっと調べて見たら‥‥‥とっくに、その魔法解けていたのよね。うん、流石の効き目に少しづつ弱めて、最後にはかけない状態にしても、全然変わらなかったらしい。
無駄手間だった上に、それだけ酷いということが分かって、流石の悪魔でも呆れを隠せなかったらしい。
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「正直、何もしなくても勝手に自滅していたのではないかと思う。お前と契約せずとも、放置しただけでな」
「それ、確かにそう言えてますが…‥‥まぁ、早まっただけですかね」
何にしても、これはもう終わった話。
相手が知らず知らずのうちに、私たちの仕事の解決ぶりに依存しまくったがゆえに、いなくなったその時から、決まっていた話である。
滅亡したのであれば、もう私に縛る物は無い。
これから先、自由に過ごせるのだが…‥‥
「しかし、冒険者として過ごしていくのは良いが…‥‥もう、滅んだ時点で契約は切れた。俺はこの後、滅びた跡地を色々としなければならないが…‥‥そのままでいいのか?」
「ええ、いいの。この生活が、一番私の性に合っているもの」
市井に降り、着実に過ごしていく中で、公爵令嬢としていたのはどれだけ窮屈な事だったのか、よく理解できた。
今はもう、低ランクとは言え着実に実力をつけ、ちょっとした冒険者としても生活が成り立ち、どこの国へ行こうとも問題は特にない。
「でも、できるだけ過ごしやすい国へ、行きたいわね。最後の別れだし、おすすめのところとかがないかしら?」
「ふむ‥‥‥ならば、船に乗って海を越えた先にある、とある国がおすすめだろう。最後の別れとして…いや、また会う機会もあるかもしれないが、せっかくだからこれを持っていけ」
そう言って手渡されたのは、ひとつのチケット。
それは、その国へ行くために必要な料金が既に、支払われているもの。
「注意するべきとすれば、その国を治める者の中に、色々とやばい奴もいるが…‥‥何もせずに過ごしていれば、そう関わる事もないだろうし、大丈夫だろう」
「支払い済みだけど、もう分っていたのかしら?」
「ま、それだけともにいればな‥‥‥‥じゃあな」
そう言い、彼はその場を去って、姿を消した。
あとに残されたのは、一枚の他国行きのチケットだけだ。
「ええ、さようなら、悪魔ゼリアス。もし、また会う機会があれば、その時は語り合いましょう」
‥‥‥残念ながら、彼に対して恋愛感情を抱くことは無かったが、共に仕事をこなし、ちょっとした共感を覚えていた、面白い悪魔。
そもそも、なぜあの国を彼が滅ぼそうとしていたのか、何者かの命令なのか、など細かい部分を聞いて見たかったけれども‥‥‥聞く必要もないだろう。
だって、もう終わった話ですしね。
そう思い、私も続けてその場を去り、最後に聞いた、その過ごしやすい国とやらへ向かうことにした。
あの国は滅亡したけれども、それはもうどうでもいい話しであり、捨てておけばいい。
国が滅んだと言っても、あの王太子とかは生きている可能性もあるが…‥‥依存していた彼らが、普通の生活に戻れるわけもない。
どこかできっとやらかし、噂になる頃合いには、もう国も忘れている。
「それじゃ、向かいましょうか!」
新しい住みかへ向け、私は先を行く。
相手を依存させるだけ依存させまくり、滅ぼした国の女だとしても、それは依存した彼らの問題で、私の責任ではない。
そう思いつつ、悪魔な彼との再会もちょっと夢見つつ、先へ向かうのであった…‥‥
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‥‥‥後日、案外あっさりと再び彼に会う事を私は知らない。
ついでに、国から逃げ延びていたらしい王太子と取りまき、令嬢にも出くわしたが、そちらは何やら盛大にやらかしたらしく、悲惨な目に遭っていたが…‥‥うん、まぁ自業自得よね。
というか、意外にもしぶとく生きていたことに、ちょっと驚くのであった。依存していても、生きようと思えば、生きれるのね…‥‥
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