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そーいちろーと青い鳥
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「ピアノはどうしたの?」
ネネちゃんがおれをじっと見て訊く。世界一大好きな、真剣そのものの瞳。こんな話を唐突に始めたおれを、彼女はどう思ったんだろう。
「ピアノはね、しばらくそのまま倉庫にあったよ。だけど父さんがそこに行く頻度は減ってった。で、それから何年か経って、ある日父さんがおれに訊いたんだ。音楽は好きかって」
好き、と即答した。おれは母さんのピアノの音色を覚えてた。それは記憶のものすごく深いところに眠ってて、おれのポジティブな感情を引き出してくれる魔法だった。
「好きって答えたら、何かやってみたい楽器はあるかって訊かれて。特に深く考えないでギターかなって答えた。そしたらギターを買ってもらえた。小学生にはふつう買わないような値段のやつ」
「もしかして、ピアノを売ったの?」
「そう。正解!」
おれは天才ではなかったけど、一応母さんの音楽的な才能を引き継いでた。おれはギターに夢中になって、気がついたら今みたいな感じになってた。
「そーいちろーはギタリストなんだよ」
ネネちゃんが説明する。母娘闘争寸前だったことはとりあえず忘れてくれたらしい。
「プロなの?」
「いやまぁ......兼業ですけど」
「すっごくカッコいいんだよ。ライブだと別人なの」
何だって!?
びっくりしてネネちゃんを見た。そんなことを言われたのははじめてだし、そんなことを思っててくれたなんて知らなかった。
「じゃあ、あなたもロクデナシね」
ネネちゃん母がさらりと言う。ネネちゃんは不穏な表情でフォークを手に取って握る。待て待て待て!
「まぁ、否定はできませんね。でもネネちゃんのことは絶対に大切にしますよ」
「絶対なんてどうして言えるの。根拠もないのに軽々しく言わないでいただきたいわね」
「ママ、あんたさぁ......」
「おれが決めたからです」
フォークを握ったネネちゃんの手に触れる。早まるな。ジョンレノンを見習え。ピースだピース。
「おれがそう決めたからです。おれは、自分の言ったことにだけは責任を持つんです」
ネネちゃんがおれをじっと見て訊く。世界一大好きな、真剣そのものの瞳。こんな話を唐突に始めたおれを、彼女はどう思ったんだろう。
「ピアノはね、しばらくそのまま倉庫にあったよ。だけど父さんがそこに行く頻度は減ってった。で、それから何年か経って、ある日父さんがおれに訊いたんだ。音楽は好きかって」
好き、と即答した。おれは母さんのピアノの音色を覚えてた。それは記憶のものすごく深いところに眠ってて、おれのポジティブな感情を引き出してくれる魔法だった。
「好きって答えたら、何かやってみたい楽器はあるかって訊かれて。特に深く考えないでギターかなって答えた。そしたらギターを買ってもらえた。小学生にはふつう買わないような値段のやつ」
「もしかして、ピアノを売ったの?」
「そう。正解!」
おれは天才ではなかったけど、一応母さんの音楽的な才能を引き継いでた。おれはギターに夢中になって、気がついたら今みたいな感じになってた。
「そーいちろーはギタリストなんだよ」
ネネちゃんが説明する。母娘闘争寸前だったことはとりあえず忘れてくれたらしい。
「プロなの?」
「いやまぁ......兼業ですけど」
「すっごくカッコいいんだよ。ライブだと別人なの」
何だって!?
びっくりしてネネちゃんを見た。そんなことを言われたのははじめてだし、そんなことを思っててくれたなんて知らなかった。
「じゃあ、あなたもロクデナシね」
ネネちゃん母がさらりと言う。ネネちゃんは不穏な表情でフォークを手に取って握る。待て待て待て!
「まぁ、否定はできませんね。でもネネちゃんのことは絶対に大切にしますよ」
「絶対なんてどうして言えるの。根拠もないのに軽々しく言わないでいただきたいわね」
「ママ、あんたさぁ......」
「おれが決めたからです」
フォークを握ったネネちゃんの手に触れる。早まるな。ジョンレノンを見習え。ピースだピース。
「おれがそう決めたからです。おれは、自分の言ったことにだけは責任を持つんです」
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