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第1章 たぬきさんとパンケーキ
田貫さんご夫婦
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目の前にいるタヌキは、これまた普通のタヌキの姿をしていた。タカヒロは動物園でしかタヌキを見たことがなかったので、その姿だけでも感動を覚える。
はじめは前回のように、軽く観光についての案内が入る。界渡りの扉をくぐるのも、五時間以内。
聞きながら、ふと疑問に思う。ヤイさんはどうしてるんだろう。この前は、皆と一緒に帰らなかったが。
人間が海外に行く時ビザによって滞在可能時間が変わるように、妖怪によって滞在時間が変わるんだろうか。
「では、お姿を変えて頂いてよろしいですか」
「はい」
田貫さんはそう答えると、二足で立ち上がる。そうしてどこから出してきたのか、葉っぱを頭の上にそれぞれ乗せた。
その状態から宙返りをすると、現れたのは少しぽっちゃり気味の中年夫婦だった。服は旦那さんは茶色いダウンに灰色のズボン、奥さんはクリーム色のジャケットに黒のロングスカートを着ている。
「さすがですね、とても素敵です」
「いや何、私も君みたいにイケメンになれたらいいんだが」
「こればっかりは難しいわねぇ」
妖怪たちは楽しそうに化け談義を始める。俺はその中に入れずぽかんと見物していると、旦那さんと目が合った。
「おや、君は新人かい? 人間に化けるのがかなり上手いな。まったく違和感がない。なんの妖怪かな?」
俺が戸惑っていると、ヤイさんが「彼は人間ですよ」と言ってくれた。
「お客様から以前より旅の記念に何か欲しいと言われてまして。思い出を描く絵師を雇う事にしたんです。彼の絵は素晴らしいですよ」
「まぁ~絵を描いてくださるの? 素敵、大妖怪になった気分ね」
「はい。ただ今お試し期間中ですので、ぜひお願いします」
ヤイさんはそこで俺に目配せをする。慌ててそれに答えた。
「タカヒロです。本日はよろしくお願い致します」
「よろしくね。あらぁ~よく見たら可愛い顔してるわね」
「これこれ辞めなさい。すまないね、人間と話すのなんて久しぶりだから」
「お話しされた事あるんですね」
俺が思わずそう言うと、「すごい昔にね」と寂しそうな声が返ってきた。
「昔は人と妖は、一緒に暮らしていたんだよ。だが人は妖怪を忘れていき、妖怪も人に会う事を恐れるようになった。大妖怪様が作ってくださった今の世界も心地良いがね。やはりこうして、人間の世界に触れたくなる時がある」
俺はそれに黙ってうなずく。
思ってた以上に、歴史は複雑なようだ。
「では、行きましょう。お腹は空いてますか?」
ヤイさんの言葉に、田貫さんたちは表情を一気に明るくする。「もちろん!」「今回の旅のメインですもん!」と返ってきた。
「では、行きましょう」
そう言って歩き始める。
「今日は歩きなんですか」
「いや。ここから一駅先まで電車で行くよ。これも旅の楽しみ方のひとつさ」
「なるほど。ちなみに目的地は?」
俺がそう言うと、ヤイさんは雑誌を開いて渡してくれた。そこには、クリームと果物がたっぷりのったパンケーキが載っていた。
「パンケーキ?」
ヤイさんはそれに、にっこり笑って頷いた。
はじめは前回のように、軽く観光についての案内が入る。界渡りの扉をくぐるのも、五時間以内。
聞きながら、ふと疑問に思う。ヤイさんはどうしてるんだろう。この前は、皆と一緒に帰らなかったが。
人間が海外に行く時ビザによって滞在可能時間が変わるように、妖怪によって滞在時間が変わるんだろうか。
「では、お姿を変えて頂いてよろしいですか」
「はい」
田貫さんはそう答えると、二足で立ち上がる。そうしてどこから出してきたのか、葉っぱを頭の上にそれぞれ乗せた。
その状態から宙返りをすると、現れたのは少しぽっちゃり気味の中年夫婦だった。服は旦那さんは茶色いダウンに灰色のズボン、奥さんはクリーム色のジャケットに黒のロングスカートを着ている。
「さすがですね、とても素敵です」
「いや何、私も君みたいにイケメンになれたらいいんだが」
「こればっかりは難しいわねぇ」
妖怪たちは楽しそうに化け談義を始める。俺はその中に入れずぽかんと見物していると、旦那さんと目が合った。
「おや、君は新人かい? 人間に化けるのがかなり上手いな。まったく違和感がない。なんの妖怪かな?」
俺が戸惑っていると、ヤイさんが「彼は人間ですよ」と言ってくれた。
「お客様から以前より旅の記念に何か欲しいと言われてまして。思い出を描く絵師を雇う事にしたんです。彼の絵は素晴らしいですよ」
「まぁ~絵を描いてくださるの? 素敵、大妖怪になった気分ね」
「はい。ただ今お試し期間中ですので、ぜひお願いします」
ヤイさんはそこで俺に目配せをする。慌ててそれに答えた。
「タカヒロです。本日はよろしくお願い致します」
「よろしくね。あらぁ~よく見たら可愛い顔してるわね」
「これこれ辞めなさい。すまないね、人間と話すのなんて久しぶりだから」
「お話しされた事あるんですね」
俺が思わずそう言うと、「すごい昔にね」と寂しそうな声が返ってきた。
「昔は人と妖は、一緒に暮らしていたんだよ。だが人は妖怪を忘れていき、妖怪も人に会う事を恐れるようになった。大妖怪様が作ってくださった今の世界も心地良いがね。やはりこうして、人間の世界に触れたくなる時がある」
俺はそれに黙ってうなずく。
思ってた以上に、歴史は複雑なようだ。
「では、行きましょう。お腹は空いてますか?」
ヤイさんの言葉に、田貫さんたちは表情を一気に明るくする。「もちろん!」「今回の旅のメインですもん!」と返ってきた。
「では、行きましょう」
そう言って歩き始める。
「今日は歩きなんですか」
「いや。ここから一駅先まで電車で行くよ。これも旅の楽しみ方のひとつさ」
「なるほど。ちなみに目的地は?」
俺がそう言うと、ヤイさんは雑誌を開いて渡してくれた。そこには、クリームと果物がたっぷりのったパンケーキが載っていた。
「パンケーキ?」
ヤイさんはそれに、にっこり笑って頷いた。
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