29 / 94
第3章 聖なるクリスマスと、白い子
みみ
しおりを挟む
「タカヒロ、パスタまだ残ってるから、三番に運んで」
「はい!」
「ツバキ、六番オーダーお願い」
「はい!」
恵理さんの采配のもと、俺とツバキさんはホール内をかけまわる。
レストランは、いつもの五割増しで大盛況だ。予約の人以外も来店があり、時間によっては待ちや断る事になってしまう。
コース料理の場合、お客さんによって食のペースも違うから、次の料理を頼むタイミングを読むのも難しい。
「ツバキごめん、グラス洗ってもらっていい?」
「はい!」
十分用意してるはずのグラスも、足りなくなる。その間にも料理はあがり、オーダーが入る。遠目から見ると煌びやかな店内も、スタッフにとっては戦場だ。
「ごめん、グラスもらうね」
「はい、有難うございます!」
洗浄できたそばから、そのグラスを使いカクテルを作る。もう一つは赤ワイン。普段はあまり出ないワインも、今日はこれで五本目だ。これからもっと増えるだろう。
「ツバキさん、全部洗わないでもいいからね。キリいいところでー……」
支度をしながら言いかけたところで、言葉が止まる。そうして、ツバキさんの姿を凝視した。耳が。耳が垂れている。まるで、垂れ耳の犬みたいな耳で、白くモフモフしている。
「はい! 有難うございます!」
返事を返され、ハッとする。見ると、耳はいつも通りだ。
「う、うん。よろしく」
俺は平静を装い、その場を去る。頭の中は、さっきのツバキさんの姿が駆け巡っていた。
そうして思った。
やばい。俺、疲れてる。
「はい!」
「ツバキ、六番オーダーお願い」
「はい!」
恵理さんの采配のもと、俺とツバキさんはホール内をかけまわる。
レストランは、いつもの五割増しで大盛況だ。予約の人以外も来店があり、時間によっては待ちや断る事になってしまう。
コース料理の場合、お客さんによって食のペースも違うから、次の料理を頼むタイミングを読むのも難しい。
「ツバキごめん、グラス洗ってもらっていい?」
「はい!」
十分用意してるはずのグラスも、足りなくなる。その間にも料理はあがり、オーダーが入る。遠目から見ると煌びやかな店内も、スタッフにとっては戦場だ。
「ごめん、グラスもらうね」
「はい、有難うございます!」
洗浄できたそばから、そのグラスを使いカクテルを作る。もう一つは赤ワイン。普段はあまり出ないワインも、今日はこれで五本目だ。これからもっと増えるだろう。
「ツバキさん、全部洗わないでもいいからね。キリいいところでー……」
支度をしながら言いかけたところで、言葉が止まる。そうして、ツバキさんの姿を凝視した。耳が。耳が垂れている。まるで、垂れ耳の犬みたいな耳で、白くモフモフしている。
「はい! 有難うございます!」
返事を返され、ハッとする。見ると、耳はいつも通りだ。
「う、うん。よろしく」
俺は平静を装い、その場を去る。頭の中は、さっきのツバキさんの姿が駆け巡っていた。
そうして思った。
やばい。俺、疲れてる。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
13
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる