あやかし観光専属絵師

紺青くじら

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第3章 聖なるクリスマスと、白い子

みみ

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「タカヒロ、パスタまだ残ってるから、三番に運んで」
「はい!」
「ツバキ、六番オーダーお願い」
「はい!」

 恵理さんの采配のもと、俺とツバキさんはホール内をかけまわる。
 レストランは、いつもの五割増しで大盛況だ。予約の人以外も来店があり、時間によっては待ちや断る事になってしまう。
 コース料理の場合、お客さんによって食のペースも違うから、次の料理を頼むタイミングを読むのも難しい。
 
「ツバキごめん、グラス洗ってもらっていい?」
「はい!」

 十分用意してるはずのグラスも、足りなくなる。その間にも料理はあがり、オーダーが入る。遠目から見ると煌びやかな店内も、スタッフにとっては戦場だ。

「ごめん、グラスもらうね」
「はい、有難うございます!」

 洗浄できたそばから、そのグラスを使いカクテルを作る。もう一つは赤ワイン。普段はあまり出ないワインも、今日はこれで五本目だ。これからもっと増えるだろう。

「ツバキさん、全部洗わないでもいいからね。キリいいところでー……」

 支度をしながら言いかけたところで、言葉が止まる。そうして、ツバキさんの姿を凝視した。耳が。耳が垂れている。まるで、垂れ耳の犬みたいな耳で、白くモフモフしている。

「はい! 有難うございます!」

 返事を返され、ハッとする。見ると、耳はいつも通りだ。

「う、うん。よろしく」

 俺は平静を装い、その場を去る。頭の中は、さっきのツバキさんの姿が駆け巡っていた。

 そうして思った。
 やばい。俺、疲れてる。
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