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第3章 聖なるクリスマスと、白い子
見ちゃったんですよね
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コンビニで温かい抹茶ラテを買って、公園のベンチに座った。二人の間には、少し広めのスペースがある。俺は飲みつつ、隣に座るツバキさんを横目見た。今の彼女の姿に、白いモフモフはない。私服の彼女は今、初めて出会った時のジャージ姿とは違い、キャラメル色のコートに黒のひらひらのロングスカートを身につけている。
今日はクリスマスイブ。もし遠目から俺たちを見た人がいたら、良い雰囲気の二人に見えるかもしれない。俺も何も見てない中彼女に誘われていたら、変な期待をしてしまっていただろう。でも、現実はたぶん違う。
何故こんな風に誘われたのか。それはやはり、先程の自分の発言のせいだろう。考えれば考えるほど、失態だった。
見間違いならただの変人だが、しかし彼女は俺を誘った。変人なら、わざわざ誘いはしない気がする。むしろ距離を置くはずだ。それに俺は、白い耳の姿は何度も見た。
となると、やはり彼女は。
「ごめんなさい」
ツバキさんの謝罪に、俺は彼女の方を向いた。ツバキさんは、コップを見ながら続けた。
「私が誘ったのに、飲み物奢っていただいてしまって」
「いや、全然! 俺が飲みたかっただけだから」
俺はそう言って笑うが、彼女は小さく頭を下げただけだ。また気まずい沈黙がおちる。
次に口を開いたのも、ツバキさんの方だった。
「さっき、言われてましたよね。しっぽって。見ちゃったんですよね」
どう答えるのが正解なのか。分からないが、頷いた。ツバキさんは「そうですよね」と言って、黙り込んだ。長い間黙ってるので、たまらず声をかける。
「あの。ツバキさん」
「こんなはずじゃなかったんだけどな」
「え?」
「普通の女の子として、会うはずだったのに」
ツバキさんはそう言うと、コップをベンチに置いて立ち上がった。そうして今自分が座っている場所の、真正面に立つ。
俺は、体中から変な汗が出ているように感じた。寒いはずなのに、体中が緊張で熱い。
ツバキさんは目を閉じると、光に包まれた。俺は眩しくて、目をふせる。光が徐々に落ち着くにつれ、わずかに目を開いた。
そこにいたのは、一匹の白い犬だった。ただし、大きさはライオンくらい大きい。瞳は金色に輝き、口には刃が見える。暗い夜闇の中で、その体は光って見えた。
「ツバキさん。やっぱり君は……」
「はい。あやかしです」
そう言った声は少しくぐもっていたが、間違いなくツバキさんの声だった。
今日はクリスマスイブ。もし遠目から俺たちを見た人がいたら、良い雰囲気の二人に見えるかもしれない。俺も何も見てない中彼女に誘われていたら、変な期待をしてしまっていただろう。でも、現実はたぶん違う。
何故こんな風に誘われたのか。それはやはり、先程の自分の発言のせいだろう。考えれば考えるほど、失態だった。
見間違いならただの変人だが、しかし彼女は俺を誘った。変人なら、わざわざ誘いはしない気がする。むしろ距離を置くはずだ。それに俺は、白い耳の姿は何度も見た。
となると、やはり彼女は。
「ごめんなさい」
ツバキさんの謝罪に、俺は彼女の方を向いた。ツバキさんは、コップを見ながら続けた。
「私が誘ったのに、飲み物奢っていただいてしまって」
「いや、全然! 俺が飲みたかっただけだから」
俺はそう言って笑うが、彼女は小さく頭を下げただけだ。また気まずい沈黙がおちる。
次に口を開いたのも、ツバキさんの方だった。
「さっき、言われてましたよね。しっぽって。見ちゃったんですよね」
どう答えるのが正解なのか。分からないが、頷いた。ツバキさんは「そうですよね」と言って、黙り込んだ。長い間黙ってるので、たまらず声をかける。
「あの。ツバキさん」
「こんなはずじゃなかったんだけどな」
「え?」
「普通の女の子として、会うはずだったのに」
ツバキさんはそう言うと、コップをベンチに置いて立ち上がった。そうして今自分が座っている場所の、真正面に立つ。
俺は、体中から変な汗が出ているように感じた。寒いはずなのに、体中が緊張で熱い。
ツバキさんは目を閉じると、光に包まれた。俺は眩しくて、目をふせる。光が徐々に落ち着くにつれ、わずかに目を開いた。
そこにいたのは、一匹の白い犬だった。ただし、大きさはライオンくらい大きい。瞳は金色に輝き、口には刃が見える。暗い夜闇の中で、その体は光って見えた。
「ツバキさん。やっぱり君は……」
「はい。あやかしです」
そう言った声は少しくぐもっていたが、間違いなくツバキさんの声だった。
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