雪降る夜はあなたに会いたい【本編・番外編完結】

文字の大きさ
122 / 196
第二部

欲しいのは、ただ一人の愛おしい人【side:創介】 13

しおりを挟む


 社を出てから直接、成城にある叔母の自宅に向かった。理人から話を聞いた日からずっと、叔母に会わなければと思っていた。その口を黙らせるために――。

「創介がうちにわざわざ来てくれるなんて、珍しいこともあるのね」

叔母が、そう言いながらも笑顔で出迎えた。

 子どものいない叔母が甥である俺を可愛がっていたのは知っていた。そして、榊の家から出て嫁いでいったからこそ、丸菱に思いがあるのも知っている。でも、俺のいないところで雪野に連絡を取るなんてことをするとは思っていなかった。
 そもそも、叔母と雪野が顔を合わせたのは一、二回程度。自分の親族に必要以上に雪野を会わせていない。心ある対応をするとも思えなかったし、会わせる必要もないと思っていた。

その程度の面識で、直接連絡を取るとは――。

叔母までもが出て来るとは、誤算だった。

「今日、東堂の叔父さんは?」

叔母の夫は、大手メーカーに勤めている。そこそこの役職には就いているということだったが、そんなにも出世欲はないのだといつだか叔母が零していた。

「ああ。海外視察よ。まあ、視察という名の旅行だけど」

叔母のあとに続いて、廊下を歩く。成城にあるこの家は、俺の実家ほど広くはないが、夫婦二人で暮らすには十分な広さだ。淋しささえ感じる。

「もっと早い時間に来てくれればよかったのに。お昼、一緒に食事したかったわ。ああ、でも。夕食は? ここで食べて行きなさいよ――」

俺の方を振り返りながら、叔母が弾んだ声で俺に言う。

「――いや。家で、雪野が待ってるから」

そう告げると、叔母の表情から笑みが消える。

「あら、そう」

扉の奥にある居間に通され、ソファに腰掛ける。数年前に来た時とほとんど変わらないその部屋で、俺はすぐに口を開いた。

「――今日は、別に遊びに来たわけじゃない。叔母さんと話がしたかったからだ」

正面に座る叔母は、先ほどまでの機嫌の良さはどこへ行ったのか、その顔にほとんど表情はない。

「先週、雪野を呼んだんだって?」
「……やっぱり来てくれた理由はそれ? わざわざあなたがいないときに呼んだんだから、黙っておいてってことだったのに。雪野さん、早速あなたに報告したの? 『創介さんには何も言いません』なんて言ってたのに、口ばかりじゃないの――」

恨み節を聞いているのも耐え難くて、その言葉を遮る。

「雪野から聞いたんじゃない。理人だよ。雪野は何一つ自分から話そうとはしなかった」
「……理人?」

叔母が顔をしかめた。

「叔母さんと雪野の会話を聞いたらしい」

雪野が帰って来たと理人に連絡した時に、了解をとっておいた。

『叔母さんに直接話しに行く。その時、おまえから話を聞いたと言っていいか』と理人に聞いたら『別に構わない』と言われた。

どうせ、僕は叔母さんにとってどうでもいい人間だから――と。

「本当に、親子揃ってろくでもないわね。人の話を立ち聞きするなんて――」

理人たちの話題になると、よりその表情を歪ませて行く。

「ろくでもないのは、どっちですか?」

俺は、叔母をじっと睨みつけた。

「俺のいないところで、立場の弱い雪野を呼びつけて一方的に別れを迫る。それはろくでもないことじゃないのか?」
「それじゃあまるで、私が意地悪な人間みたいじゃない。私に対してそんな言い方するなんて、創介、酷いわ。私は、ただ、あなたと雪野さんのことを思って助言しただけよ!」

甥が可愛いのか、丸菱が大切なのか。どちらにしても、その感情の向かう矛先が間違っている。

「創介は知ってるの? 雪野さん、大勢の前で恥をかいたのよ。それは、そのままうちの恥になる。これからトップに立たなきゃいけない創介にとってもマイナスに働くのよ。こんなことはこれからも起こる。雪野さんが奥さんである以上、創介までもが恥ずかしい思いをするのよ。それがいいことだとは思えない。雪野さんだって可哀想だわ。あんな風に晒しものみたいにされて。あなただって、そう思うでしょう?」

自分のしたことを正当化するために、叔母はひたすらに捲し立てる。

「真面目に聞いてちょうだい。雪野さんの噂を聞きつけて、私のところにいくつかいいお話が来てるのよ。三木商事、あなたも知っているでしょう? 商社の業界二番手の会社よ。そこの副社長のお嬢様。私、奥様とお友だちでね。それで、是非にって。一度結婚したとは言え、子供もいないし、短い期間の結婚なら気にしないって言ってくださってるのよ。もう、宮川さんレベルの方を迎えるのは難しいかもしれなけれど、三木商事の次期社長のお嬢様なら恥ずかしいということはないわ。どうかしら」

俺は黙ったまま、冷ややかに叔母を見つめていた。

「……まあ、確かに、あなたのお相手には不足かもしれないわね。だったら、慶心大の教授のお嬢様はどう? あなたの母校だもの。いいと思うわ」

何も答えない俺に、叔母が躍起になって言葉を吐き続ける。

「それでも気に入らないって言うなら、私、他にどなたか良い方がいないか探してみる……」

叔母がようやくその口を閉じた。

「――もう気が済んだ?」
「え……?」
「俺は結婚してるんだぞ? 離婚したわけでもない。どうしてそんな話が出来る?  俺はこの先も離婚するつもりはない」
「創介!」

叔母が叫ぶように俺の名前を呼んだ。

「あなたのお父様が、あんな人と再婚してしまった。だからこそ、創介にはきちんとした家の人と結婚してもらいたかったのよ。父親も息子もだなんて、恥ずかしいったらない。あなたのおばあ様もおじい様も、どれだけ落胆しているのか知ってるの?」

祖母も祖父も、もう以前ほどの気力はない。俺の結婚に対して特に意見はしなかった。それに、叔母だって。最初に雪野を紹介した時、俺に何も言って来なかった。叔母は、納得したのではなかったのだ。俺の強い意思に、一度は仕方なく折れた。そんなところなのだろう。

「創介には絶対に丸菱のトップに立ってもらいたいのよ!」

悲壮感に満ちた表情は、それはそれで叔母の想いなのだろう。でも、そんなもの、俺には一切関係ない。

「お父さんだって。叔母さんのいう”あんな人”と再婚しても、社長になっているだろう? お父さんに出来たことが俺には出来ないとでも?」
「あなたのお父さんの場合は、再婚した時にはもう副社長に就任していた。創介とは違うのよ」
「なら、お父さんより困難なことをやり遂げてみせるだけのことだ」
「そんなに甘くないのよ。あなたのお父様だって、きっと悔しいはず――」

叔母の感情的な言葉に、俺は溜息を吐き、冷めた声を放った。

「お父さんと俺の間では、この議論はとっくに終わってる。二年前にやりあって決着がついてることだ。先週、雪野を榊の家に呼んだ時に、お父さんは何か一言でも言いましたか?」

叔母は、悔しそうに口を綴んだままだ。それもそうだろう。父は、絶対に、雪野に何も言っていないはずなのだから。

「どうしてお父さんが何も言わなかったか、教えてあげようか。お父さんは分かっているからだよ。俺が絶対に雪野と別れるつもりがないってこと。俺と雪野が、どれだけの強い思いで結婚したのかを」

結婚を認めさせたのは簡単じゃなかった。時間も言葉も、尽してのこと。父は全部分かっている。

「雪野のためなら榊の家も捨てる覚悟だと、お父さんは知ってる」

俺は二年前、雪野との結婚に反対する父にそう告げた。

「創介……っ」

叔母が、驚きをそのまま表したように絶句している。

「だから、叔母さんがどれだけ喚いても意味がない」

はっきりと分からせる。俺のこの気持ちが、その辺に転がっているようなものとは全く違う次元のものだということを。

「むしろ、叔母さんが、俺のためにと雪野と俺を引き裂こうとすればするほど、俺は榊の家も丸菱も捨てなければならなくなるな」
「まさか――」
「まさか?  そんなこと、信じられないか?  だったら教えてあげますよ」

自分の心が叔母に対してどんどん冷めていく。それが、表情に表れているのだろう。目の前の叔母の目には怯えが滲んでいた。

「俺の方が雪野に執着しているからだよ」

みんな何かを誤解している。雪野はきっと、俺のためだと思えば、去って行くことが出来るだろう。でも、俺には無理だ。どんな手を使ってでも、雪野を俺に縛りつける。それがどんな卑怯な方法だとしても。

「雪野が身を引いて俺の元から去ろうものなら、俺は力づくでも連れ戻す。地球の果てまでだって探しに行くさ。"政略結婚"じゃないんでね。地位さえあれば代わりがきくような存在じゃないんだ」
「創介、あなた……」
「だから、叔母さんも気を付けてください。雪野に余計なことして雪野がいなくなるようなことでもあれば、俺は自分でも何をするか分からない」

叔母が何か得体の知れないものでも見ているかのように俺を見ていた。

「……それは、私を脅してるの?」
「警告ですよ」

叔母が、息を飲んだのに気付く。

「そういう訳だから、俺と雪野のことをこれからも見守っていてくれ。むしろ、雪野がこの家から離れていかないように、力になってください」

最後に叔母に笑顔を向け、俺は立ち上がった。

「……一つ、聞いていい?」

叔母が俺を見上げる。

「あなた、学生の頃まで、そんな風に誰かに執着することなんてなかったじゃない。一人の人と向き合ってお付き合いしていた気配もなかった。なのに、なぜ……」

そう疑問に思うのも無理はないか――。

「それは、雪野だったから、だな。それまで、女なんて誰だって良かったのに、今の俺は――」

ニヤリと口角を上げて叔母に言った。

「雪野にしか欲情しない」
「な……っ!  なんてはしたないことを!」

叔母が口に手を当てて、顔をしかめる。

「だから、他の女と結婚なんて出来るはずもないでしょう。じゃあ、失礼します」

最後だけは丁寧に頭を下げて、居間を後にしようとした。

「……そんなにまでも雪野さんに執着するのは、雪野さんがあなたの本当の母親になんとなく似ているから?」

背後から聞こえる叔母の声に立ち止まる。

「もしそうなら、雪野さんに勝てる人がいるはずもないわね」

溜息交じりのその言葉に、俺は振り返った。

「俺にとって、理由なんてもうどうでもいいことだ。雪野しか考えられないし、今じゃ、雪野以外の女は皆かかしと同じだ」

確かに、母親の面影を雪野に見た。でもそれは、きっかけに過ぎない。雪野を知れば知るほど、そのすべてが愛おしくて大切なものになった。その存在自体が、雪野を想う理由だ。

「ふっ――」

叔母が、突然俯くと、何を思ったのか笑い出した。

「……本当に、創介には敵わないわね。もう、勝手になさい」

そして、諦めたように呆れるように、叔母が溜息まじりにそう言った。

 早く、雪野の元に帰ろう。あの優しくてはにかむような笑顔を、早く見たい。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。 まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。 あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで…… 夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

極上エリートは溺愛がお好き

藤谷藍
恋愛
(旧題:強引社長とフラチな溺愛関係!? ー密通スキャンダルなんてお断り、ですー) 素顔は物凄く若く見えるベイビーフェイスの杉野紗奈は、メガネをかけて化粧をすると有能秘書に早変わり。いわゆる化粧映えのする顔で会社ではバリバリの仕事人間だが、家ではノンビリドライブが趣味の紗奈。妹の身替りとして出席した飲み会で、取引会社の羽泉に偶然会ってしまい、ドッキリ焦るが、化粧をしてない紗奈に彼は全然気付いてないっ! ホッとする紗奈だが、次に会社で偶然出会った不愛想の塊の彼から、何故か挨拶されて挙句にデートまで・・・ 元彼との経験から強引なイケメンは苦手だった紗奈。でも何故か、羽泉からのグイグイ来るアプローチには嫌悪感がわかないし、「もっと、俺に関心を持て!」と迫られ、そんな彼が可愛く見えてしまい・・・ そして、羽泉は実はトンデモなくOOたっぷりなイケメンで・・・ 過去の恋の痛手から、一目惚れしたことに気付いていない、そんな紗奈のシンデレラストーリーです。

身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~

椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」 私を脅して、別れを決断させた彼の両親。 彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。 私とは住む世界が違った…… 別れを命じられ、私の恋が終わった。 叶わない身分差の恋だったはずが―― ※R-15くらいなので※マークはありません。 ※視点切り替えあり。 ※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜

橘しづき
恋愛
 姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。    私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。    だが当日、姉は結婚式に来なかった。  パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。 「私が……蒼一さんと結婚します」    姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。

4番目の許婚候補

富樫 聖夜
恋愛
愛美は家出をした従姉妹の舞の代わりに結婚することになるかも、と突然告げられた。どうも昔からの約束で従姉妹の中から誰かが嫁に行かないといけないらしい。順番からいえば4番目の許婚候補なので、よもや自分に回ってくることはないと安堵した愛美だったが、偶然にも就職先は例の許婚がいる会社。所属部署も同じになってしまい、何だかいろいろバレないようにヒヤヒヤする日々を送るハメになる。おまけに関わらないように距離を置いて接していたのに例の許婚――佐伯彰人――がどういうわけか愛美に大接近。4番目の許婚候補だってバレた!? それとも――? ラブコメです。――――アルファポリス様より書籍化されました。本編削除済みです。

処理中です...