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僕はそれから、菜摘さんに優しく教えられながら導かれながら、これまで知らなかった世界を見た。

菜摘さんが僕よりもずっとずっと大人だったということを、今更ながら改めて実感した。

菜摘さんの暖かくて柔らかい肌に触れる度、僕の気持ちは昂っていた。

人の身体とは不思議なものだと思った。

大好きな人が一部に触れるだけで、まるで全身が触れられた場所みたいになってしまうからだ。

肉体の一部をああして触るだけで、もしくは肉体同士が繋がり合うことで、あんなに何もできなくなるくらい感じてしまうなんて、知らなかった。

これは、人間の本来持つ身体の器官が発する生理的な現象なのか。
それとも僕たちの関係性や互いへの気持ちが大きく関係しているのか。

僕には経験が少ないからそれは分からないけど、恐らく後者なのではないかな、と思った。

というか、そうであって欲しい。

僕の身体が菜摘さんじゃない誰かに触れられるだけでも、あんなになってしまうなんて思いたくなかった。

そこで僕は初めて、菜摘さんに対して常に一途で潔白でありたいと強く願っていることに気がつく。

気持ちだけではなく、身体をもってしても菜摘さんに一途でありたい……
そんな願望を、自分の中に認めた。
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