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冬休みが終わって3学期が始まった。

「冬休み中の思い出を書きましょう。」

特別活動の時間、担任の先生がそう言って僕らに1枚の白紙を配った。

絵にしても文章にしてもいいから、自由に思い出を表現するということらしい。

「俺は初詣行ったこと書く!」

「クリスマスプレゼントでS○itchもらったこと書く!」

「お前それ自慢だろ!いいもん俺はお年玉いっぱいもらったこと書くから。」


クラスメイトたちはそれぞれ、冬休みの思い出を語り合いながら楽しそうに活動する。

僕は冬休みを振り返ると、テニスの練習と塾があったこと以外はほとんど菜摘さんの記憶しかない。

菜摘さんとクリスマスにデートしたこと。

その後12月にもう一回遊んだこと。

そして年が明けてから、他のどんな友達よりも真っ先に菜摘さんに会いに行ったこと。

(でも…村上くん以外は僕と菜摘さんのことを知らないから、書けないなぁ…)

僕と菜摘さんの関係を周囲に打ち明けられるわけがないことは、お互いの立場上当然なので仕方がないことだとは思っている。

しかし、常に頭の中を支配し想い出の殆どを共に過ごす相手を他人と共有できないことは、少し悲しい。

だけどクリスマスの日に菜摘さんと初めて繫がった時から……

あのときからそういう行為をする度に、僕たちの関係は決して知られてはいけないのだということをより一層強く考えさせられる。

これは、付き合った当初に抱いていた感覚と似ていた。

これから先も、僕たちが新たな段階に進むたびにこの感覚に襲われるのだろうか。

それは少し窮屈なようで、どこか心地良い。

心地良さを構成するのは自分の優越感か、自己肯定感か、充実感なのか。

それはわからないが、僕はとにかく満たされていた。
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